※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

2018年1月に創業し、海事産業向けプラットフォームを運用しているアイディア株式会社。AI・IoTのプロフェッショナルが集い、開発することになった「海事産業のDXを推進するシステム」とは。

同社の代表取締役社長兼CEOである下川部氏に、設立の経緯や具体的な取り組みについて話をうかがった。

企業の発足と主力プラットフォームについて

ーー貴社を設立された経緯をお聞かせください。

下川部知洋:
海事産業は、特殊な業界であるにもかかわらず、統一されたシステムが存在せず、データの有効活用ができていないという現状があり、DX によって解決できる課題が多く点在していました。業務のデジタル化、具体的にはデータを有効に活用するプラットフォームを提供することで、安全対策をはじめ、さまざまな業務の効率化が可能となり、海事産業の発展に大きく貢献できると考えました。

また、このプラットフォームの存在は、データの有効活用だけでなく、業務をシステム化していない企業にとっても導入障壁を下げるという大きなメリットともなり得ます。そこで、「海事産業の業務をシステム化したい」「現場の働きやすさを向上したい」という思いから、専門的な会社の設立に向けてスタートしました。

2018年1月にアイディア株式会社を設立し、最初の1年半はシステム開発に費やしました。2019年7月3日に行われた東京海上様のイベントで、海事産業向けプラットフォーム「Aisea(アイシア)」のリリースを発表したという流れです。

ーー「Aisea」について、詳しく教えていただけますか。

下川部知洋:
プラットフォーム運用の重要性に気付いた私たちは、Aiseaをベースにお客様とのコラボレーションや新機能の追加を実現していきました。なり手が少ない一方で貨物の量は増えている海運業界で、業務の効率化を図るシステムは、弊社最大の強みとなっています。

これは一部の機能でしかありませんが、Aiseaは基本的な操船サポート機能のほか、周囲の船の位置をリアルタイムで把握し、ドライブレコーダーのように陸上の事務方と共有する機能を備えています。船がAIS(船舶自動識別装置)で発信している位置情報を受信し、画面に表示する事が可能です。

海上安全の課題と業界を支えるプロダクト

ーー業界に問題意識を抱いていたのでしょうか?

下川部知洋:
漁船やプレジャーボートなどの小型船は、AISの搭載義務がない上に、機器も大変高価なので搭載自体が難しいのです。加えて海事産業はDXが遅れており、人手不足も深刻化しています。そのため事故が起きやすく、国交省によると年間100名ほどが事故で亡くなっています。これらを通して、DX化を積極的に進めて業界を変えていかなければと考えるようになりました。

DX化をすすめるためにはプラットフォームでデータを集約し、そのプラットフォーム上で一緒に開発してもらえる仲間づくりがとても重要です。結果として、現在はAiseaを含む5つのプロダクトが進行中です。海運会社向けシステム「Aisea PRO」、マリコン(海洋土木業者)向けの「Aisea Constr.」、船員労務管理システム「Aisea Crew」、船の自立航行など新サービスを他社と共同開発した「Aisea Partners」があり、すべて同じプラットフォームで動いています。

ーー現在の注力テーマもお聞かせください。

下川部知洋:
弊社には「社会インフラに貢献できるシステムをつくりたい」と考えるエンジニアが多く在籍しています。お客様のご要望に応え続けるためにも、実力のある技術者を積極的に迎えていきたいと思います。

プラットフォームのデザイン性も弊社の大きな特徴です。海事産業はアナログ的な業務がまだ根強いため、直感的に操作できるシステムによってITへの抵抗感をなくす必要があります。機能美を含めたプラットフォームのブラッシュアップは今後も優先事項です。

海の世界における認知度向上のための戦略

ーー今後の展望をお話しいただけますか。

下川部知洋:
弊社の認知度やサービスの浸透度をより高めていき、お困りごとがあれば「アイディアに相談してみよう」と業界内で名前が挙がるような領域を目指しています。

海の世界も陸の世界と同様に人手不足の問題があり、労務状況の改善については後れをとっていました。閉鎖的に見えるこの業界に、人材が定着するのは難しい状況です。「可能な限りシステム化していきましょう」と提案していく必要があります。

海事産業に特化したサービスではありますが、弊社の技術力は陸の世界にも転用できることがわかってきました。

今後の可能性を広げるという意味でも、チームブランディングを本格的に稼働させ、積極的に自社の存在、サービス、技術力をアピールしていきたいと思います。それにより、多くのお客様の業務効率を図れるとうれしいですね。

編集後記

大手造船会社をはじめ、多様な企業と企画に取り組んでいると語った下川部社長。アイディア株式会社が携わった事業が「日本初」や「世界標準」といった実績を生み出し、海事産業の枠を越えた活況を見せる未来に期待したい。

下川部知洋(しもかわべ・ともひろ)/2018年にアイディア株式会社を創業。ITエンジニアとしての専門性と港湾事業の経営者としての知見を活かし、DXで海事産業の発展に貢献する。高い技術力を背景に、海事産業向けプラットフォーム「Aisea」(アイシア)の開発・サービス化に成功。官庁や大手企業とのプロジェクトを数多くプロデュースし、プロダクト開発から調査研究・コンサルティングまでを一貫して提供するアイディア社の舵取りを担当する。