日本全国でサービスを急拡大させている荷物預かりサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」。このサービスを運営するecbo株式会社の代表取締役社長である工藤慎一氏は、同サービスに「全世界に『社会インフラ』として展開できるポテンシャルがある」と語る。
工藤社長がecbo cloakを世界に広げる戦略とはどのようなものか。サービスが生まれた経緯や事業展開のビジョンなどを聞いた。
Uber Japanの立ち上げを経験し「新たな価値」を生み出すために創業を決意
ーー工藤社長が会社を創業するまでの経歴と、創業の経緯を教えてください。
工藤慎一:
私は大学生のころから会社の創業を考えていました。これは経営者であった両親や祖父母の影響が大きいのですが、大学在学中に立ち上げとして参加したUber Japanの影響も大きいです。
当時はUberは世界中でライドシェアやタクシーの配車事業に取り組んでおり、ライドシェアに興味があった私は「これは新たな価値を生み出す革新的なサービスだ」と感動したのを今も覚えています。
やがてUber Japanという前衛的な環境は、私の中に「世の中に存在しない新たなサービスを生み出したい」という思いを生じさせました。こうして24歳のときに創業に踏み切り、誕生したのがecboです。
客観的に、そして冷静に自分を見つめることの大切さ
ーー会社を経営するうえで大切にしていることを教えてください。
工藤慎一:
オンとオフの切り替えを大切にしています。これは経営者がときに冷静になり、周囲を広く見渡すために必要なことだと思っています。
私は仕事に対して120%で取り組んでしまい、目の前のことばかりに意識が集中してしまうことがあります。しかし、経営者に求められるのは全体を見渡して将来を見通す役割です。
そこであえてオフ時間を設け、少し力を抜くクセをつけるようにしています。こうすることで視点がフラットに戻り、自分の内省もできるようになります。
実は、私が尊敬するキャラクターは「くまのプーさん」で、彼の「何もしないをする」という言葉が大好きです(笑)彼のこの名言は忙しい現代人にとって本当に大切なことだと、日々気付かされるばかりです。
コインロッカーに代わる選択肢に!利用者・事業者双方にメリットがあるecbo cloakとは
ーー貴社の事業内容について教えてください。
工藤慎一:
荷物を預けたい人と荷物を預かるスペースを持つお店をつなぐ「ecbo cloak(エクボクローク)」というシェアリングサービスが主な事業です。荷物を預ける場所はスマホから予約できるので、荷物を預けたい時間に間違いなく預けることができます。
荷物を預けられる「拠点」は現在全国に1,000箇所以上あり、空港や駅構内、郵便局、カフェなど、さまざまな施設に設置されています。スーツケースやバッグ以外にも楽器やベビーカー、自転車なども預けることができます。
最近は好調に事業を拡大できており、大阪・関西万博の公式荷物預かりおよび配送事業者にも選定されました。また、海外展開も進めており、足がかりとして2023年から台湾でサービスの展開を始めました。
ーー貴社独自の強みは何でしょうか?
工藤慎一:
「荷物預かり」という世界共通のニーズを事業にしていることです。上手く拡大していけば、UberやAirbnbなどと同じように巨大な市場を開拓できるポテンシャルがあります。ecbo cloakで開拓した拠点をベースにして、別事業へ発展させる戦略も描けるでしょう。
ecbo cloak自体の強みは、利用者が荷物を預けるプラスアルファの体験ができることです。たとえばカフェに拠点があれば、荷物を預けるついでにカフェを利用できます。これは事業者からすれば新規顧客の獲得につながるので、利用者と事業者の両方にメリットがあるといえます。
ecbo cloakを出発点に、世界へとつながるビジョンを描く
ーー今後、特に注力したいことを教えてください。
工藤慎一:
事業においては、ecbo cloakで開拓した拠点に物流機能を掛け合わせた新事業に注力していきます。現在は空港と宿泊施設間で荷物の配送ができるサービスと、拠点でAmazonの荷物を受け取れるピックアップサービスの2つを進めています。
2025年の大阪・関西万博ではセイノーHDと連携し、公式の荷物預かりサービスを提供する際に公式預かり所と宿泊施設間で荷物を当日配送するサービスも提供する予定です。物流機能は拠点と相性が良いので、今後も積極的な強化を図る予定です。
組織においては、少人数で大規模なビジネスを回せる環境の構築に注力していきます。ここで大事になるのが、自動化・効率化すべき箇所を判断できるようになる「現場経験」です。いわば事業の「一次ソース」ともいえるこの要素は、人の手を離れる仕事が増えるこれからの時代に特に重要になると考えています。
ーー人材に求める条件と経営の夢についてお聞かせください。
工藤慎一:
人材に求める条件として一番重視しているのは、弊社のサービスに興味があり、そして好きであることです。ecboのサービスを使って、社会課題を解決した未来を見たい方は歓迎です。
経営の夢は、弊社をアジア初のグローバルインフラプラットフォームへと成長させることです。その第一歩として、2030年度内にecbo cloakを世界50カ国へと広げる計画を練っています。そして会社が安定したら、くまのプーさんの「何もしない」を楽しめる穏やかで安定した日々を送れる会社にしたいです。
弊社はとても将来性のある会社だと自負しております。弊社のサービスに共感いただける方、一緒に夢を語れる方は、ぜひ気軽に話を聞きに来てください。
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編集後記
ecbo cloakには荷物預かりというシンプルな事業を切り口として、さまざまな方面へ拡張していける可能性が秘められている。旅行や出張でecboのサービスを使うのが当たり前の未来は、すぐそこまで来ているのかもしれない。
工藤慎一(くどう・しんいち)/1990年生まれ、マカオ出身、日本大学卒。Uber Japan株式会社の立ち上げを経て、2015年ecbo株式会社を設立。2017年より荷物預かりサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」を運営。2019年宅配物受け取りサービス「ecbo pickup(エクボピックアップ)」を発表。