アラクサラネットワークス株式会社は、日立製作所とNECの合弁会社として、2004年10月に設立された企業だ。
同社は、インターネットを構成する通信機器の大型ルーターや、複数の端末に効率的にデータを転送する企業向けのLANスイッチなどの開発・製造・販売を行っている。
ネットワーク機器を開発する国内のベンダーとして、高品質の製品とサービスを提供する同社の村中社長の思いを聞いた。
日本の高品質基準を満たす、最長10年のサポートを提供
ーー貴社の事業内容について説明していただけますか。
村中孝行:
弊社は社会の基幹インフラであるネットワークを支える製品の設計や開発、運用、保守サポートを行っている会社です。
インターネットを通じて運ばれるデータは、さまざまなルーターを経由し、それぞれの端末に送られます。弊社の製品もその一部として、インターネット通信を支えています。
弊社の企業理念は、快適で安心して使えるネットワークを世界の人々に提供し、豊かな情報通信社会の実現に貢献することです。この思いのもと、製品開発やお客様へのサポートを行っています。
ーー他社との差別化ポイントを教えていただけますか。
村中孝行:
たとえば、通話がわずかな時間でもつながらないと苦情が発生するなど、日本のお客様は高いサービス品質を求める傾向にあります。弊社の強みは、こうした高い基準を満たす、高品質の製品やサービスを提供している点です。
他社の製品は、5年ほどで正常に作動しなくなるケースもあり、保守のサポート期間も耐用年数に合わせて多くは5〜6年程度となっています。機器が故障すると保守期間外の場合は交換費用が発生しますし、自社の業務やサービスの中断も発生し、コストがかさんでしまいます。弊社の場合は、製品の品質が高いために壊れにくく、最長で10年間のサポートを行っており、お客様に安心して長くお使いいただけることが他社との大きな差別化になっています。
ーーその他に貴社のサービスの特筆すべきポイントはありますか。
村中孝行:
ネットワーク障害が起こったときに、瞬時に復旧し、再発防止に向けて原因を突きとめる解析性の高さも特長です。
多数の装置で構成されている通信ネットワークは、どこで問題が起きているのか特定するのが困難なことがあります。そこで弊社では、製品の稼働状況の膨大なログデータを記録し、解析を行うことで、原因の特定を行っています。
他社の場合は、このような詳細データをもたないために原因の特定に至らないケースもあり、運用面での品質に関しても弊社は自信を持っています。
機器の詳細なログを取るためには、そのためのソフトウェアの開発も必要で、その分コストはかかります。ただ、正確な分析を行うことは、今後の品質維持にも活かせるため、十分な投資を行っています。
ーー貴社の今後の目標をお聞かせください。
村中孝行:
会社としてのさらなる成長を目指すには、国内での販売だけでは厳しいと思っています。そのため、まずは弊社の親会社である米Fortinet Inc.と連携し、海外へ販路を拡大していきたいと考えています。
Fortinet Inc.の主力製品は、セキュリティ対策用に開発されたファイアウォールです。これに弊社が持つネットワークの知識や経験、高品質な製品をかけ合わせ、海外での販売を展開したいと思っています。
国内についても製品やサービスの強化を行いながら、海外も視野に事業を拡大していこうと考えています。
20年のモノづくり経験が支える高品質な製品開発の秘訣とは?
ーー2024年の1月に代表取締役社長に就任されていますが、これまでどのような業務を経験されてきましたか。
村中孝行:
会社が設立された当初から在籍しているため、勤務年数が今年でちょうど20年となります。その大半は製品開発に携わってきましたので、これまで弊社が販売してきたほとんどの製品に関わっていることになります。
ーー開発において特に苦労された製品はございますか。
村中孝行:
モジュール(機器の一部を構成するひとまとまりの機能を持った部品)をいくつも搭載できる、大型のシャーシ型LANスイッチの開発は大変でしたね。
シャーシ型LANスイッチにはLSI(※)という集積回路が入っていますが、他社では海外製のLSIを使って製造しています。対して、弊社では自社独自機能を入れたLSI開発や設計、製造を手がけて、シャーシ型LANスイッチに搭載しています。
エンジニアが手作りしているからこそ、LSIの特性も理解しているので、他社と比べて高い品質を提供できていると思いますね。
※LSI(大規模集積回路):半導体基板の上に多数の電子部品や配線を搭載した、チップ状の電子部品
ーー若手に向けて伝えたいメッセージはありますか。
村中孝行:
弊社は本気でものづくりに挑んでいる企業であり、自分たちが携わった製品を世の中に広めるためのキャリアパスは開かれています。
これまで開発畑にいた私が社長に就任したことでわかるように、製品の安心安全に対して真面目に取り組んできた人がきちんと評価される土壌があります。
また、ものづくりをベースに販売や保守まで一貫して提供している弊社では、開発担当だけにトップへの道が開かれるということはありません。コツコツ頑張ってきた人が上のポジションに就ける環境があるので、後輩たちも私の後に続いてほしいと思っています。
陰で日本のインフラを支える仕事に誇りを持ってもらいたい
ーー貴社が求める人材についてお聞かせください。
村中孝行:
高品質な製品やサービスを提供して人々の生活を守り、ネットワークインフラを支えるという弊社の理念に共感してくれる方を求めています。
弊社の製品はスマホなどとは違い、一般の方が直接目にする機会は少ないと思います。そのため地味なイメージがあるかもしれませんが、スマホでネットを見る際も弊社のルーターが使われているわけです。
生活になくてはならないインフラをこのような形で支えていることに、プライドを感じられる方がいいですね。それに加え、海外での販売や事業展開に挑戦していただける方も求めています。
ーーこの記事を読まれている方々にメッセージをお願いします。
村中孝行:
弊社は日本の大手メーカーのDNAを受け継ぐ外資系企業です。ただ、他の外資系企業と異なるのは、自社で開発から保守まで一貫して行い、国内に製造拠点を持っている点です。
他のITシステム関連の外資系企業が、海外でつくられた機器を販売しているケースが多いのに対し、自社で世界トップクラスの製品をつくっていることは弊社の大きな強みといえるでしょう。
海外の企業とタッグを組みながらも、自分たちの事業を持っているという点が、弊社ならではの特色だと思っています。高機能・高品質な製品とサービスを提供する仕事に関わり、世界を舞台に活躍したいという方をお待ちしています。
編集後記
安定的なネットワーク環境を提供できるよう、20年にわたり開発に携わってきた実績が認められ、代表取締役社長に就任した村中社長。
インタビュー中も、開発者として製品と保守サポートの品質の高さに誇りを持っていることが伝わってきた。
私たちが不自由なくインターネットを使えるのは、ネットワークインフラを支えるアラクサラネットワークスのような存在があってこそだということを忘れないでいたい。
村中孝行(むらなか・たかゆき)/東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻。大学院卒業後の1999年に株式会社日立製作所に入社。その後、アラクサラネットワークス株式会社に移籍。開発本部第一開発部長、執行役員開発本部長などを経て、2024年1月代表取締役社長兼CEOに就任。