人口減少などによる人手不足や、ここ数年続いた新型コロナウイルスの流行による影響で、フレキシブルな働き方はもはや当たり前の時代になりつつある。
サイバーセキュリティを専門に扱うフーバーブレインは、単なるセキュリティソリューションの提供にとどまらず、働き方改革のサポートまで事業内容を広げる企業だ。しかし、かつては業績が低迷していた時期があったという。
今回はそんなフーバーブレインの事業再生や今後の展望などを代表取締役社長の輿水(こしみず)英行氏にうかがった。
セキュリティを通してフレキシブルな働き方を提供
ーー社長就任までの経緯を教えてください。
輿水英行:
弊社に入社する前、前身である株式会社アークンの創業者と話す機会がありました。経営に対する姿勢や経営陣の状況などについて聞きましたが、このままでは会社の成長が止まってしまうと危惧していました。
そこで、私に会社を立て直してほしいと相談を受けたことがきっかけです。
ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。
輿水英行:
一言でいうと働き方改革を応援するサイバーセキュリティ企業です。情報漏洩対策だけではなく、セキュリティ強化を通じて、よりフレキシブルな働き方を提供しています。
たとえば、コロナ禍で増えたテレワークに伴い、情報のネットワーク形成、データの所在などに関するセキュリティリスクが増えました。そのようなセキュリティリスクを軽減することをサポートしています。
ーー貴社の強みは何でしょうか。
輿水英行:
単純に外部脅威を防ぐだけでなく、内部不正を含めた内側からの情報漏洩の防止、さらに業務可視化による生産性向上までをトータルサポートできる製品を提供できるところです。
セキュリティに関して、お客様がどのような作業をしているのかというところまで踏み込んで、業務を可視化します。それにより、お客様からは「業務の偏りに気付けるようになり、会社全体の効率化が図れている」というお声をいただいています。
得意なことに挑戦し続け、自己の能力を何に活かすのか考える
ーー大学卒業後からはどのような人生を歩まれていたのでしょうか。
輿水英行:
私は大学を卒業後、不動産会社に入社し、人事を担当していました。しかし、将来的に自分が成長していくようなイメージが湧きませんでした。そこで、自分が好きなこと、より自分が得意なことに挑戦していこうと考えました。
私は数学が得意だったので、公認会計士の資格を得るために不動産会社を辞め、勉強に専念することにしました。その後、無事合格することができ、公認会計士になりました。
ーーその後、独立に至ったきっかけは何でしたか。
輿水英行:
会計士として3年ほど勤めた後は、不動産会社での経験を活かして外資系投資会社に入社しました。そこでは不良債権に関する案件に携わりました。当時としては珍しい職務内容でした。
しかし、少しずつ事業再生に投資の質が変化していくなかで、投資ではなく事業そのものへの興味がわき、独立を決意しました。
このように、私は変化と挑戦のなかで生きてきました。逆境があってもつらいと思わず、むしろそれらを楽しんできました。
新しい挑戦で広げるセキュリティ業界の可能性
ーー事業再生する中で心がけたことはありましたか。
輿水英行:
私が社長に就任した当時は、経営陣はどちらかというと縮小均衡を求めて利益を出すという考え方が多数派でした。たとえば、なるべくコストカットをして新しいことには基本的に取り組まないということです。
しかし、私はそのような会社の体質を引き継がず、積極的に新しいことにチャレンジしていくことに決めました。セキュリティだけではなく、働き方改革まで事業内容を広げ、リスクをとりながら挑戦しました。
ーー営業的な側面から会社が成長するために取り組んだことは何でしたか。
輿水英行:
もともと、エンドユーザー企業に直販するということは基本的に考えていませんでした。しかし、直に販売することでお客様との関係や会社のブランディングを強化していこうと思いました。
働き方改革に関する製品も、主にサブスクで直売するということを重視して取り組みました。
優秀なエンジニアを育て、さらなる高みを目指す
ーー5年後、10年後のビジョンをお聞かせください。
輿水英行:
サイバーセキュリティ会社といえばフーバーブレインというように、世間に広く認知していただけるような会社にしたいと考えています。今後も、新商品の開発に注力し、新規取引先の開拓にも力を入れて取り組みたいと考えています。
また、グループ戦略として優秀なエンジニア集団の構築をテーマに、M&Aを積極的に行ってエンジニアを拡充していく予定です。
ーー読者の皆様にメッセージをお願いします。
輿水英行:
弊社はまだ規模が大きい会社ではありません。だからこそ取り組める範囲が広く、そして新たな商品開発ができるという魅力があります。
成長できる機会のある会社ですので、自分に権限を任されて新たなチャレンジをしたいという方にはきっといいポジションがあるはずです。
また、エンジニア集団の構築を実績として出していこうと考えています。投資家の方にはその実績から、会社の成長性を感じていただけると思います。
編集後記
変化を恐れずリスクをとりながら挑戦することで、自らの人生を切り開いてきた輿水社長。フーバーブレインの事業再生をも成功させ、その勢いは増すばかりだ。
働き方改革はどの企業にとっても重要な課題となっている。これから取り組むべき課題も多く、そこにこそ同社の新たな商品開発の可能性も生まれる。新しい挑戦を楽しみながらさらなる飛躍を目指す彼らに、今後も注目していきたい。
輿水英行/1967年、埼玉県生まれ、慶応義塾大学を卒業後、株式会社西洋環境開発に入社。公認会計士資格を取得し、1993年にアーサー・アンダーセン会計事務所に入所。その後、外資系投資会社カーギルジャパンを経て、2011年に独立し、ハンズオン型の経営コンサルティング、海外投資家の日本における経営管理受託業務、事業再生ビジネスに携わる。2018年6月に副社長として株式会社アークン(現・株式会社フーバーブレイン)に入社し、同年10月に同社代表取締役社長に就任。