※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

全国にエステティックサロンを展開している、株式会社スリムビューティハウス。東洋美容の知恵に最新のエステティック技術を取り入れた「オリエンタルエステ」を開発し、40年以上にわたって提供し続けている。

エステティックが日本で流行してから約50年が経過し、業界は成熟期を迎えている。その中でも同社が異彩を放っているのは、継続的な研究活動や独自のコンテストなどによる確かな実証と、顧客の信頼ゆえだろう。

一方で、急激な店舗拡大により生じた弊害もあった。そこからの起死回生のアイデア、会社としての新たな取り組みなどについて西坂氏に話を聞いた。

時代に先駆け取り入れた東洋美容とエステの融合

――エステティックサロンの経営を志したきっかけを教えてください。

西坂才子:
私は幼い頃から、「自分の人生に責任を持ち、好きなことをやって自由に生きたい」と強く思い、自立して経済力をつけることを目標としていました。

「生涯働き続けるために、何か手に職を付けよう」と思って調べたとき、「アメリカで流行したエステティックというサービスがこれから日本に来る」という情報をキャッチしました。女性を美しくする仕事へのやりがいを感じ、エステティシャンを目指したのです。

――どのようにして創業に至ったのですか?

西坂才子:
「まずは身体の中のことを勉強しよう」と思い、大学卒業後に鍼灸の学校に入りました。当時のエステティックは化粧品の塗布やトリートメントなど、身体の外側からのアプローチが主流でしたが、私は身体の中から健康になる東洋医学について学んでいくうちに、「東洋の知恵はエステティックにも活かせるのではないか」と感じたのです。

そこで当時としてはおそらく初の試みであろう「オリエンタルエステ」というコンセプトのエステティックサロンを、東京三鷹の商店街にオープンしました。

急成長から学んだ教育の大切さ

――オープン後の反響はいかがでしたか?

西坂才子:
特にメインでやっていたのは痩身エステですが、当時は腰痛や高血圧など体の不調の悩みを抱えた方が多くいらっしゃいました。弊社で施術や食事療法を提供したところ、「健康になって人生が楽しくなった」という話が口コミで広がり、多くの方に来店していただくことができたのです。

そこで手狭になった店舗を吉祥寺の駅前に移し、1987年には株式会社スリムビューティハウスを設立しました。宣伝にも力を入れ、最大で160店ほどまでに拡大したのです。売り上げは200億円に達し、社員は2000名を超える勢いでした。

――急成長にあたって、苦労されたことはありましたか?

西坂才子:
あまりにも急激に事業規模が膨らみ過ぎてしまったため、スタッフの教育が追い付かず、不採算の店舗が増えてしまいました。

エステティックというのはマンツーマンのサービスです。多くのお客様にご利用いただきたいという思いで店舗を増やしましたが、店舗のスタッフ一人ひとりを大切に育てていくことでお客様が満足のいくサービスを提供できるのだと、この経験を通して学びました。

その後、統廃合を繰り返し、現在は約60店舗を運営しています。ベテランスタッフが増えてエステティシャンたちに力がつき、競争力も高まっている今が発展のチャンスだと捉えています。

――現在、スタッフへの教育体制はどのように敷かれていますか?

西坂才子:
「スリムビューティハウスアカデミー」という学校を設立し、エステティシャンの育成をしています。資格取得だけではなく、技術はもとより、お客様へのアドバイス法や一流の接客マナーなど、どこのサロンに就職しても困らない力を身に付けることができます。

また、東南アジア最大の美容学校クララインターナショナルと業務提携を行い、海外就職直結の留学コースの選択も可能となりました。

美しさだけでなく、健康で幸福な未来「ウェルビーイング」を目指す

――今後の注力テーマを教えてください。

西坂才子:
今後の会社の指針として、痩せてキレイになるだけではなく、健康で幸福な生活を手に入れる「ビューティ&ウェルネス」という健康産業に向けたテーマを掲げました。

これまでは20代の方の美容を中心としてきましたが、30代以上の方に向けたボディメンテナンスを提供するべく、アンチエイジング用のサプリメントや化粧品の開発に力を入れています。今後はクリニックとも業務提携を進め、多様化するニーズに対応できるサービスを提供できるよう工夫していきます。

――新規の客層を開拓するにあたって、貴社の強みや信頼性をどのようにアピールしていますか?

西坂才子:
サービスの信頼性を高めるために、これまで数多くの研究を重ねて学会で発表してきました。その裏付けがあるからこそ、エステティシャンは自信を持ってサービスを提供でき、お客様の信用にもつながっています。

また、弊社が長年積み重ねた技術とノウハウの集大成として、年に1度「スリムクイーンコンテスト」を開催しています。応募の中から選ばれた複数の女性に4か月にわたってサロンに通っていただき、どれだけ美しく、健康的にスリムになれたかを競うことで、お客様に目に見えるような結果を示しています。

他業種とのコラボレーションで更なるブランド力の向上へ

――ライセンス事業にも着手されているとお聞きしました。

西坂才子:
2021年からライセンス事業として、大手シューズメーカーのABC-MARTとコラボレーションし、弊社監修のもと履きやすさとスタイルアップを同時に叶えるシューズを共同開発しています。

「足元から美しくなろう」をテーマとし、アーチ形状のインソールで足裏(土踏まずなど)を正しい位置に戻して骨盤の角度を理想的な位置に導くことから、履くだけで美脚につながる画期的な商品です。その他、テレビの通販番組における美容機器の監修を行っています。

――最後に、今後取り組んでいきたいことはありますか?

西坂才子:
弊社はフォーブスウーマンアワードを2年連続受賞したことからも、従業員の働きやすさや、業務のやりがいに関しては、一定の評価を頂いております。

加えて、去年から大きなテーマとして、スタッフの給料アップに取り組んでいます。労働集約型であるサービス業は給料が上がりにくい傾向にありますが、人への投資を積極的に行っていきます。

エステティシャンに精度の高い教育を提供し技術レベルとコミュニケーション能力を上げて、価値の高いサービスを適正な金額でお客様に提供した上で、その利益を人に投資していきます。そうすることでお客様へのサービスや商品開発もさらに質が高まり、より良い循環をつくり出すことができるでしょう。

編集後記

健康美を追求し、これまで数多くの研究発表を重ねてきたスリムビューティハウス。

その研究結果は海外からの注目も高く、アメリカのTIME誌やEntrepreneur誌(企業経営者向けマガジン)からも取材を受けているという。

「海外に向けて日本の素晴らしいサービスを広げていけたらという思いはあります。チャンスは自分から積極的につかまえに行かなくてはいけませんね」と目を輝かせた西坂氏。彼女たちの進化はここからさらに飛躍の時を迎える。

西坂才子(にしざか・さいこ)/青山学院大学卒業。鍼灸治療院を開設後、1987年株式会社スリムビューティハウスを設立。東洋医学をベースとした独自の健康美容法を開発し、世界各国の学会で発表を重ねている。日本のウェルネスサービスとして海外から注目を集め、米国TIME誌をはじめとする雑誌にも紹介された。また、女性が働きやすい体制を確立した功績が評価され、Forbes JAPAN WOMEN AWARDにおいて2年連続受賞を果たした。