
日本市場でIT人材サービスに携わり、2026年に設立22年を迎えるスキルハウス・スタッフィング・ソリューションズ株式会社。「IT化遅れ」といわれる日本において、IT人材の需要は今後ますます高まることが確実であり、同社は成長産業の牽引役として求職者からも熱い視線を集めている。2026年4月にはMBOによる独立を果たし、独自の戦略でさらなる飛躍を目指す新体制へと移行した。IT最先端のアメリカ出身である代表取締役社長、マーク・スミス氏に、会社の立ち上げの背景や独立による変化、今後の事業戦略、そして次世代を担う転職者への思いについて話を聞いた。
独自のアイデアや戦略から起業を決意
ーーまずは、社長のビジネススキルの原点となっている経験を教えてください。
マーク・スミス:
18歳のころ、大学に通いながらセールスの仕事を始めました。ステーキを販売する仕事でしたが、完全歩合制の厳しい環境であったため最初は大変でしたね。そこで「誰と、どのように話すことが最も効率的か」を判断することが不可欠だと気づいたのです。人と話をしてビジネスを成功させるスキルを身につける必要があったため、常にその点を意識していました。セールスの世界は非常に競争が激しいものでしたが、その中で失敗を乗り越え、自己管理する方法を学んできました。
ーー日本で起業を決意した経緯はどのようなものでしたか。
マーク・スミス:
まず、来日したきっかけは、勤めていたニューヨークのIT人材会社から日本支社の立ち上げ担当として派遣されたことでした。当初は1~2年でニューヨークに帰るつもりでしたが、ありがたいことに予想を上回るペースでクライアントが増え、事業は急成長していきました。
しかし、組織が拡大するにつれて「最終決定権がない」という壁にぶつかることになります。日本の市場動向に合わせた新しいアイデアや、さらなる成長に向けた戦略を提案しても、現場を知らないニューヨークの上層部にはなかなか受け入れてもらえませんでした。目の前の数字ばかりが優先され、必要な投資やスピーディーな意思決定ができなかったのです。
「自分にすべての裁量があれば、この市場のポテンシャルをもっと引き出し、より良いサービスを提供できるはずだ」と確信し、自らの戦略で自由にビジネスを展開するために独立し、スキルハウス・スタッフィング・ソリューションズを新たに設立することを決意しました。
ーー貴社の事業内容を教えてください。
マーク・スミス:
スキルハウスの事業内容は、日本市場を中心に活動するIT人材サービス業です。弊社ではIT人材を派遣するだけでなく、総合的な人材サービスをクライアントに提供しています。同業他社では人材派遣のみを手掛ける会社が多いのですが、弊社は派遣従業員とは別に、業務委託という形でクライアント先の仕事を請け負うサービスも行っています。
人材紹介の場合、紹介後のフォローアップと顧客のサポートも行います。「現場を変えたい」という企業の要望や、派遣・紹介される人の将来を見据えたキャリアのトータルサポートをする体制が整っています。
MBOによる独立と事業拡大に向けた3カ年計画

ーーこれまでの会社の歩みの中で、最も大きな変化は何でしたか。
マーク・スミス:
大きな成果といえるのが、2026年4月に無事成功させたMBOによる独立です。私たちは以前、ロンドン証券取引所に上場しているグローバル企業の子会社でした。上場企業の一部である以上、どうしても毎月の数字や目先の成長を常に求められます。そのため、時にはコストを気にして保守的になりすぎたり、必要な人材採用を見送ってしまったりすることもありました。
しかし独立した今、利益を出し成長し続けるのはもちろんですが、株価や株主の目を気にすることなく、成長と戦略により多くの投資をすることができます。独自の戦略と目的地を完全にコントロールできるようになったことは、過去2年半における非常に大きな変化であり成果です。
ーー独立に伴い、今後はどのように事業を展開していくのでしょうか。
マーク・スミス:
短期的な業績目標にとらわれることなく事業成長に投資できるようになったため、今後はさらにスピード感を持って成長できると感じています。私たちには明確な3カ年計画があり、今年、2026年を「実行の年」と位置づけ、新しいテクノロジーやAIの導入によって組織全体の生産性を向上させることで、これまで取りこぼしていた市場の好機を確実につかむことに焦点を当てています。
そして2027年は、「成長」に焦点を当てます。自社の戦略を最前線で実行してくれる優秀な自社スタッフ(人材コンサルタントや営業、マーケティング担当など)を新たに10人から20人規模で採用し、十分な教育投資を行い、市場における好機を最大限に活用できる体制を整えます。
3年目となる2028年は「拡大」に焦点を当てる考えです。具体的には関西などの主要都市や海外への進出、あるいは異なるサービスラインの拡充などを想定しており、最適な投資先は市場の動向を見て判断するつもりです。戦略を練ることには一番時間がかかりますが、どれほど素晴らしいビジョンがあっても人がいなければ成り立ちません。戦略どおりに事業をやり遂げられる人材を確保することが最も大事だと考えています。
時代が求めるIT人材派遣で求職者を惹きつける
ーー人材サービス業界における貴社の強みは何ですか。
マーク・スミス:
最大の強みは、あらゆる業界の外資系企業および日本企業に対して、「IT専門人材の誘致と派遣」のみに特化しているという圧倒的な専門性です。この専門性が高く評価された結果、現在、取引先企業の78%から「最上位の優先ベンダー(ティア1)」に指定されています。これは、クライアントの企業で求人が出た際、私たちが「一番最初に人材を紹介する権利」を持っているという極めて重要なステータスです。
そして、この強固な顧客基盤こそが、求職者を惹きつける最大の理由にもなっています。優先ベンダーである私たちは、求職者に対して「どこよりも早く」、あるいは「独占的に」魅力的なポジションを提供することができます。加えて、私たちがIT業界の専門家であるため、求職者自身も「ここなら自分の業務内容やスキル、求めるキャリアを正確に理解してくれる」と安心感を抱いてくれます。このような好循環が生まれているからこそ、弊社には毎月平均して約300人ものIT候補者が自然と集まってくるのです。
ーー多くのエンジニアからの応募を集めるためにどのような工夫をされていますか。
マーク・スミス:
何か魔法のような集客方法があるわけではありません。現在、人材業界には求人のメッセージが溢れ返っており、私たちが「78%の企業から優先ベンダーとして選ばれている」という事実も、何もしなければ市場の候補者には知られずに終わってしまいます。
だからこそ、「IT業界で仕事を探すならスキルハウス」と認知してもらうべく、ITトレーニング施設や大学との関係構築をはじめ、ITユーザーグループや就職フェアへの参加、ブログを通じた発信、そして戦略的な広告運用など、地道なプロモーション活動の積み重ねを大切にしています。
こうした活動を毎日絶え間なく続けた結果として、毎月約300人もの応募が集まる基盤ができました。さらに嬉しいことに、そのうちの約25%は、口コミや紹介プログラムといったリファラル(紹介)経由が占めるようになっています。
成長を続ける覚悟と今後のIT業界の展望

ーー現在はどのような企業を中心に取引があるのですか。
マーク・スミス:
収益のちょうど50%は日本の大手企業からで、残り半分が『フォーチュン500』(※)に出てくるような名だたる外資系企業からです。現在のクライアントのほとんどは金融やIT専門サービスの分野ですが、同時に私たちは、候補者がどこかにマッチしてオファーをもらえる確率を高めるため、多様な顧客基盤を持っていたいと考えています。戦略的なクライアントを最優先としつつ、中小企業やグローバル企業、言語や給与帯など多様なポートフォリオを持つことで候補者の活用率を高めています。
(※)フォーチュン500:アメリカの経済誌『フォーチュン(Fortune)』が毎年発行している、全米上位500社の総収益(売上高)ランキング。
ーー現在のIT人材市場の動向をどう見ていますか。
マーク・スミス:
現在、日本のIT人材市場は深刻な人手不足に直面しています。具体的には、ITエンジニア1人に対して10件以上の求人がある状態です。特に、企業の経営基盤を支えるシステムを扱う「SAP関連のコンサルタント」のように、ITスキルだけでなくビジネスの仕組みも理解していなければならない高度な専門職では、1人に対して20件もの求人が集まるほど、引く手あまたの状況となっています。
この深刻な人材不足を補うために海外からの人材流入が急増しており、現在、弊社の求職者の約65%は外国籍のエンジニアです。しかし現実には、外資系企業などを含めても、英語だけで業務ができる求人は全体の15〜18%ほどしかありません。大半のクライアント企業はネイティブレベルの日本語を求めています。
だからこそ、今後は国内の大手IT企業などに在籍する日本人エンジニアの層に向けてマーケティングを強力に仕掛け、彼らをより多く呼び込む必要があります。現在「35%」に留まっている日本人エンジニアの比率を高め、今後3年間で外国人エンジニアとのバランスを「50対50」の理想的な形に近づけていく計画です。
フォローアップ力がキャリアの鍵
ーー貴社ではどのようなマインドセットを持つ人材を求めていますか。
マーク・スミス:
求めているのは、「前向きで積極的な姿勢で、成長し続けたい人」です。有名大学卒業かどうかは関係なく、良いマインドセットを持った人を求めています。弊社に限らず、その職種が弁護士、金融系、経済系でも、営業スタッフでも、大事なマインドだと思います。
ーーこれからキャリアを築いていく次の世代へ向けたメッセージをお願いします。
マーク・スミス:
最近、若者を見ていて気づいたことは、ビジネスにおけるコミュニケーションやフォローアップに課題を感じるケースが少なくないということです。せっかく入社しても、周囲と適切にコミュニケーションがとれず、孤立して辞めてしまう人が多いのです。だからこそ、大きな企業でインターンシップを経験したり、自己投資をして専門的なコミュニケーション能力を身につけたりすることが重要だと思います。
また、若い世代でITの仕事を探している方々に対しては、一人ひとりに合った職場を見つけてあげたいですね。私たちが希望のIT企業を紹介し、継続的にサポートすることで、彼らのキャリアアップに大きく貢献できると信じています。
編集後記
人生の早い段階からセールスの現場でビジネススキルを培い、失敗を自らの糧にするポジティブなマインドを持つマーク・スミス社長。MBOによって独自の戦略とビジョンを最優先できる環境を手にした今、同社の視野はさらに大きく広がっている。AIが台頭する時代だからこそ、テクノロジーをビジネスに実装する「人間の要素」の価値を誰よりも信じるマーク氏。企業にも働き手にもより豊かな選択肢と可能性をもたらすスキルハウスの次なる展開から目が離せない。

マーク・スミス/米国フロリダ州出身。MBA取得。30年以上にわたり日本市場で、大手グローバル企業および日本企業に対し、IT人材派遣・人材紹介・アウトソーシングサービスを提供。2004年にスキルハウス・スタッフィング・ソリューションズ株式会社を創業し、代表取締役社長に就任。企業成長と日本のIT人材市場の発展を支えながら、プロフェッショナル人材のキャリア形成と次世代人材の育成に注力している。