
紙おむつの販売事業を基盤としながら、医療・介護・障がい福祉、さらには保険外サービスへと領域を広げるクリエーティブカミヤ株式会社。同社を率いるのは、大手製紙メーカーで29年間勤務した後、事業を承継した代表取締役社長の中原英喜氏だ。東南アジアでの営業活動を通じて学んだ「寄り添う心」を原点に、入社から7年で売上を3倍にまで成長させた。その大胆な組織変革の軌跡と、5年後の売上100億円達成を見据える成長戦略、そして地域社会の「最後の砦」となることを目指す未来像に迫る。
海外で芽生えた「寄り添う心」経営の原点
ーーこれまでの歩みと、印象深い出来事について教えてください。
中原英喜:
新卒で入社した大王製紙株式会社では、29年間にわたり営業の最前線に立ち続けました。国内の量販店営業を経て、介護事業部門へ異動。病院や施設に対し、大人用紙おむつの提案を行っていました。
特に印象深いのは、15年ほど前の東南アジアでの海外営業の経験です。当時、現地の経済水準は現在ほど高くありませんでした。しかし、多くの方々が子どものためにと、品質に優れた日本製を選んでくださいました。「生活を切り詰めてでも良いものを与えたい」。こうした家族を思う深い愛情に、強く心を打たれました。
ーーその経験は、現在の経営にどのようにつながっていますか。
中原英喜:
「困りごとがある人に寄り添う」という姿勢の原点です。大切な人を思う気持ちに応えたい、助けになりたい。その思いは、国を問わず共通していると感じます。東南アジアで触れた真摯な思いが、現在の事業の根底にあります。
事業承継を決意し実行した組織の大改革

ーー貴社へ入社することになった経緯を教えてください。
中原英喜:
創業社長と出会ったのは、20年ほど前のことです。私が首都圏の部長を務めていたころに、「後継者として会社に来てくれないか」と最初の打診がありました。すぐには決断できず、その後は大阪へ転勤や海外営業を経験。大王製紙にて、さらなる研鑽を積む道を選びました。最初の打診から入社までは5〜6年を要しました。50歳という節目を迎え、残りの社会人人生を考えたとき、「サラリーマンで終わるのではなく経営に挑戦してみたい」という思いが強くなり、入社に至りました。
ーー入社当時はどのような点に課題を感じていましたか。
中原英喜:
入社当時、売上は現在の3分の1ほどでした。事業の中心は紙おむつの販売でしたが、当時は特定メーカーへの依存度が高く、事業構造が偏っている点に課題を感じました。将来的なリスクを考え、扱う商品の幅を広げ、販売チャネルを多角化する必要があると考えたのです。現在も売上の中心は販売で変わりはありませんが、仕入先や販売先、取扱商品もかなり増えました。
また、販売以外の事業の柱を育てるため、介護関連事業の多様化も推進しました。変革にあたり、まずは社員との対話を重視し、1年間、毎週朝8時前に各拠点を訪問。責任者や担当者と直接ミーティングを重ね、会社の向かうべき方向性を伝え続けました。顔を合わせて直接話すことで、私の考えを理解してもらい、社員の不安払拭に努めています。
全世代の課題を解決する地域のハブ機能構築
ーー現在の事業内容について改めてお聞かせください。
中原英喜:
介護用品や日用品の販売、福祉用具のレンタルといった事業を基盤に、訪問看護・介護、ケアプランを作成する居宅介護支援、調剤薬局などを展開しています。さらにここ数年で、障がい福祉の領域にも事業を広げました。障がいのある方の働く場所を提供する就労継続支援や、障がいのある子どもを支援する児童発達支援・放課後等デイサービスなども運営しています。
ーー幅広い領域へ事業を広げる背景には、どのような思いがあるのでしょうか。
中原英喜:
人生のあらゆるステージで発生する困りごとに対応し、地域になくてはならない中心的な存在を目指しています。支援が必要な方は、高齢者に限りません。人は生まれてから亡くなるまでの長いスパンにおいて、さまざまな課題に直面します。だからこそ私たちは、その全てのライフステージに寄り添える体制を整えるべきだと考えています。
その実現のために重視しているのが、「点」ではなく「面」での支援です。当社には看護師や介護職、薬剤師、ケアマネージャーなど、多岐にわたる専門職が在籍しています。しかし、単なる分業で終わらせてはいけません。たとえば、福祉用具のレンタルを利用されているお客様が、将来的に看護や服薬管理を必要とされるケースは多々あります。その際、「ここは自分の担当範囲外だ」と線を引いて「点」で終わらせるのではなく、職種を超えて連携し、利用者の生活全体を包括的かつ有機的な「面」として支える姿勢が不可欠です。
もちろん、全てのサービスを自社のみで完結させることは不可能です。そこで重要になるのが、専門性を持つパートナー企業との柔軟な連携です。老人ホームへの入居支援や葬儀の相談など、社外とも協力することで「カミヤに相談すれば解決する」と言っていただける地域のハブ機能を担い、住民の方々の安心を支えていきたいですね。
5年で売上高100億円へ 全員が経営者視点を持つ組織
ーーこれから先、どのような未来を見据えているのでしょうか。
中原英喜:
創業30周年を機に、5年で売上高100億円という目標を宣言しました。現在の60億円から飛躍するには、M&Aや新規事業による非連続な成長が不可欠です。規模の拡大は、社会のより多くの困りごとに応える体制を築くための挑戦でもあります。この実現に向け、社員には既存の枠組みに囚われない発想を期待しています。部門の垣根を越え、弊社全体の最適解を経営者視点で追求できる組織が理想です。
ーーどのような人材に仲間になってほしいとお考えですか。
中原英喜:
私たちの事業は、看護師、介護士、ケアマネージャー、リハビリ職、薬剤師、児童発達支援管理責任者といった専門職がいなければ成り立ちません。そうした専門スキルを持つ方々に選んでもらえる会社になることが不可欠です。弊社には多様な専門職が在籍しているため、職種の垣根を越えて連携し、お客様のためにより手厚いサービスを提供できる環境があります。自分の専門性を活かしながら、新たな事業提案などにも挑戦できる。そうした環境に魅力を感じてくれる方と、ぜひ一緒に働きたいです。
次世代へつなぐ永続的な企業経営への展望
ーー地域社会において、どのような存在でありたいとお考えでしょうか。
中原英喜:
弊社が事業を展開している各地域で、「何か困ったことがあったら、まずカミヤに相談しよう」と思っていただける存在になることが目標です。あらゆる困りごとに対して、私たちが「最後の砦」となり、きちんと手助けができる。事業規模の拡大を通じ、より多くの方を手助けできる体制を築いていきます。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
中原英喜:
私自身の原点が海外での仕事だったこともあり、その先には海外での事業展開も考えています。海外には日本とはまた違った、あるいは日本以上に深刻な困りごとが海外にはたくさんあります。今年度にはミャンマーから特定技能ヘルパーを2名受け入れる予定で、そうした接点を足がかりに、将来的には日本で培ったノウハウや「困りごとがある人に寄り添う」という考え方を、海外で展開していきたいです。日本の人口が減少していく中で、会社が永続していくためにも、海外という視点は不可欠だと考えています。
編集後記
東南アジアで目の当たりにした親子の愛情。それが中原氏の経営の原点だ。「人に寄り添う」という思いは、事業承継後の組織変革を推し進める原動力となり、紙おむつの販売会社を人生のあらゆる困りごとに応えるライフサイクルサポート企業へと進化させた。5年で売上100億円という目標は、単なる数字ではない。より多くの人を支え、地域社会の「最後の砦」となるための、いわば覚悟の表明である。地域に深く根を下ろしながら、その視線は世界へ。同社の挑戦は、これからの日本企業が進むべき道の一つを示している。

中原英喜/1966年5月、愛媛県新居浜市生まれ。南山大学卒業後、大王製紙株式会社に入社。29年間にわたり国内および海外営業の最前線でキャリアを積む。2018年にクリエーティブカミヤ株式会社へ入社。2025年8月、同社代表取締役社長に就任。現在はグループ会社4社の代表取締役も兼任している。