※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

コロナ禍によって、人々は以前よりもオンラインを活用した生活様式にシフトした。ショッピングだけでなく、趣味やスキル習得や学びにおいてもオンラインを活用する機会は増えたといえるだろう。

ストリートアカデミー株式会社では、2012年の創業当時からYouTubeなどの動画学習とは一線を画した、講師から直接学ぶことができるパーソナルな学びを展開。

同年立ち上げた学びのプラットフォーム「ストアカ」は、2024年には累積受講者数140万人、登録講師5万人を突破。コロナ禍においては、対面授業だけでなく、オンライン授業にも裾野を広げ、個人が提案する多種多様なカリキュラムで学びの場をアップデートしながら提供している。

同社の代表取締役CEO藤本崇氏に、ユーザーとの関係性も含めた今後の展望をうかがった。

日本人はもっと自分の心に正直に生きていい

ーーアメリカにいた期間が長かったとうかがっていますが、どのようなことを経験したのでしょうか。

藤本崇:
私は、12歳から24歳までアメリカに住んでいました。常に新しい学びを求め、料理学校へ行ったり、映画監督の養成所に通ったり、転職も通じてさまざまな分野や職種に挑戦してきました。ゼロから関係性を構築することも含めて、新しいことや人との出会いが私の原動力ですね。

アメリカでは、自分のやりたいことを優先する文化が浸透しており、何度でも挑戦し直すことができます。雇用法も個人の選択の自由を支えており、失敗を恐れずに自分の道を追求する人が多い傾向です。給与交渉も積極的で、キャリアの方向転換も珍しくありません。たとえば、弁護士になったあとに料理人に転向するなど、多様なキャリアパスでも比較的一般的に許容されています。

一方で、日本では、変化や新しい挑戦に対して慎重すぎることが多く、キャリアチェンジを決断する際には、周囲の意見や反応を非常に気にする傾向にあると思います。創業当時、このような文化では、本心のままに、正直に生きることが難しいのでは、と感じました。この文化的な違いは、私かストアカを立ち上げようと思った際の、非常に重要な要素の1つとなっています。

これら全ての経験が教育サービス「ストアカ」の設立に大きく影響を与えています。ストアカを通して自身の特技や趣味を活かした講師になるという選択肢を提供したり、興味があることを気軽に学び始める機会を提供しています。

ユーザーにカスタマイズした講座が強み。5万人の講師が活躍する教育の場とは

ーー貴社の事業について教えてください。

藤本崇:
ストリートアカデミーでは、CtoCのプラットフォーム「ストアカ」の運営と法人向けの研修事業「オフィスク」を手掛けています。とくに、スキルシェアサービス「ストアカ」では、「誰もが先生になれる」というコンセプトを掲げており、動画やテキストなどコンテンツのみでの販売は許可せず、あくまで講師が直接教える対人でのレッスンやワークショップを重視しています。

公式ユーザーガイドラインでは、原則実名での講師登録をお願いしており、匿名での活動は許可していません。この方法によって、信用を担保しています。

また、新型コロナウイルスの影響で、ストアカも対面のみの講座からオンライン講座へと急速にシフトしました。ユーザーからの強い要望に応える形で進められ、これはコロナ禍を乗り切るための大きな転換点でした。

ーープラットフォームとして、とくにニーズの高い分野などはありますか?

藤本崇:
現在さまざまなジャンルで5万人の講師が活躍しているなかで、とくにビューティー関連の講座の需要が増えています。ビューティー関連においてはメイクのレッスンやアドバイスが非常に人気が高いです。一般的なメイクのハウツーは動画やサイトなどで紹介されていますが、ストアカでは自分に合ったメイク方法や個別アドバイスなど、パーソナルなお悩みに答える講座が人気です。

たとえば、「私に合うメイクはどうしたらいいですか?」というような個別の質問に対して、専門的な知識をもつだけではなく、自分と美的センスやコミュニケーションスタイルの相性が良い講師に教わりたいというニーズがあります。

こうしたニーズに応えるために、学びたい人が講師を自由に選べ、1回から気軽に教わることができるシステムを提供し、ある意味パーソナライズされた学びを提供しています。講師はただ知識や経験を提供するだけでなく、受講者一人ひとりに寄り添った指導とコミュニケーションを価値として提供することができます。

目標は講師数10万人!講師とユーザーがともに歩む学びの場をつくる

ーー規模や目標など、今後の展望はありますか?

藤本崇:
ストアカでは現在、約5万5千人の講師を抱えていますが、今後5年以内に10万人まで増やすという大きな目標を掲げています。コロナ禍を乗り越えたばかりのタイミングで、新たな講師の獲得とプロモーションに力を入れることが大切だと感じていますね。

これまでは、広告や営業活動に頼らず、ユーザーからの純粋な口コミや紹介など、自然な形でのネットワークを通じて講師を獲得してきました。講師にとっては、ストアカで実名で行う教える活動に対して貯まるレビューが、個人としてのブランディングを行っていく際の資産となるようです。

講師が著書を出版する際には、ストアカのレビューが出版社の編集者の目に止まるきっかけとなったことも少なくありません。実際に、私たち運営側に、これまで300名以上の講師ユーザーから「ストアカで教え続けたら著書を出版できました」というお声をいただきました。

しかし、新たなステージに進むためには、積極的な攻めの営業活動で加速していくことも必要と感じています。とくにSNSを活用したデジタルマーケティングやブランディング戦略を強化することで、より多くの講師やこれから講師として翔ける可能性のある潜在層にもアプローチしたいですね。

また、社内としては今後もリモートワークや副業を推奨し、柔軟で多様な働き方をサポートしていきます。全国どこからでも弊社のビジネスに人々が参加できる環境を整え、ストアカの活用も含めて、教育の機会をより広く提供することを目指しています。

ーー具体的にアプローチしたい年齢層などの目標はありますか?

藤本崇:
コロナ後からは、オンラインで習い事をやるなら対人が好きだという主に中高年の利用者が急速に増えてきているのですが、私たちとしては、若い方々にも興味を持ってもらえるようなタッチポイント(顧客に変化・影響を及ぼす接点)を増やしていく必要があると思っています。

現状でもすでに20代から70代まで、多様な層に支持されており、それぞれのニーズに合わせたサービスが提供できているため、今後はYouTubeなどの動画共有サービスや、InstagramなどのSNSからも多くの情報を発信し、連携を深めていきたいと思っています。

最終的には受講者と講師が一緒に歩むような、一方的な学びではなく双方向のコミュニケーションを重視した学びの場を提供することが目標です。

編集後記

12歳から24歳までをアメリカで過ごした藤本代表。新しいことを学び続ける姿勢からストリートアカデミーを創設し、多くの人々に対して学びの場を提供し続けている。今後も受講者と講師の新しい学びをサポートし続ける藤本代表を応援したい。

藤本崇/1976年生まれ。コーネル大学を卒業。ユニバーサルスタジオで乗り物の設計、フェデックスでオペレーション企画、カーライル・グループでPE投資に従事した後、スタンフォード大学にて経営学修士(MBA)を取得。「まなびの選択肢を増やし、自由に生きる人を増やす」をミッションに、2012年にストリートアカデミー株式会社を設立し、代表取締役CEOに就任。