2020年9月に設立され、医療×テクノロジーの可能性を追求している「株式会社LATRICO」。代表取締役社長兼CEOである濱口友彰氏に、主軸サービス『東京美肌堂』の魅力や今後の展開についてうかがった。
オンライン美肌相談サービス『東京美肌堂』とは
ーーまずは『東京美肌堂』についてご説明いただければと思います。
濱口友彰:
『東京美肌堂』はオンラインでスキンケアに関する診療を提供し、医薬品をご自宅に配送するサービスです。ニキビやシミ・シワなどにお悩みの方は、高価な化粧品を使用してみたり、サプリメントや漢方を飲んだり、いろいろなケアをされていると思います。
医薬品で改善するケースも多いのですが、いざお医者さんにかかるとなると「皮膚科の予約が取れない」「待ち時間が長い」「場所が遠い」といった制約がネックとなりがちです。弊社のサービスであれば、遠隔診療を受けるだけでお薬が定期的に届き、お肌のお悩みを解決していくことができます。
スキンケアは生涯にわたって付き合っていく分野ですので、ユーザーの年代層は20代、30代、40代が各25%程度と幅広く、10代や50代以上の方にもご利用いただいています。
ーー提携クリニックのお医者様についてもお聞かせください。
濱口友彰:
現在勤務中の医師は稼働ベースで100人前後です。必要なスキンケアは個人で異なるので、お客様にご安心いただくためにも医師のコミュニケーション能力は不可欠と考え、接客に関するアドバイスを弊社からも行っています。
おかげさまで、診療後の利用者アンケートでは約95%のお客様から「満足度が高い」というお声をいただいております。
事業立ち上げの経緯――コロナ禍で生まれたアイデア
ーー貴社の事業はどのように始まったのでしょうか。
濱口友彰:
新型コロナ感染拡大の影響で、2020年の4月にオンライン診療の規制が緩和されました。それを機に、親会社であるミダスキャピタルが「新しい付加価値を提案するビジネス」を検討し、アイデアの一つが『東京美肌堂』の元になっています。
事業のビジョンを聞いた私は「このサービスは絶対に世の中に必要とされる」と感じ、「ぜひ僕にやらせてください」と手を挙げたのです。
「ドクターズコスメ」開発による顧客基盤の拡大
ーー現在のユーザー数についてはいかがでしょうか。
濱口友彰:
2023年12月時点で4万人近いお客様にご利用いただき、そのうちの9割が女性のお客様です。美容に関心がある方々が弊社のお客様になりうるのですが、潜在的に1000万人以上いると言われています。そう考えると、ターゲットのわずか0.4%しか弊社の顧客になっていないと言えます。
そもそも「美容に化粧品ではなく医薬品を活用する」ということに対して心理的なハードルがある方もいらっしゃると考えています。
もう少し気軽に関心を持っていただけるようにオウンドメディア『ハダメディア』の運用を始めたほか、オフラインでのお客様へのアプローチも社内で検討しているところです。
ーー商品開発にも精力的に取り組まれているとうかがいました。
濱口友彰:
お肌の悩みに必要なサービス・商品を再構築するため、サプライヤーと協力してドクターズコスメやオリジナルサプリの開発を行っています。
「ドクターズコスメ」と呼ばれるコスメには、「開発段階で医師が関与した製品」と「医療機関専売品」の2つの定義がありますが、当社で開発しているものは、両方を満たすものです。クリニックとの提携によって展開している弊社のサービスとは親和性が高く、診察結果に応じてオリジナルドクターズコスメをお客様にご提供することで、お客様の悩みの解決に、より貢献できるようになると考えています。
「薬の安定調達」という志と今後の経営テーマ
ーー物流やコスト面での課題はありますか。
濱口友彰:
新型コロナ感染拡大の中で、医薬品の調達に苦労した時期がありました。定期的にお薬をお届けすることが第一のサービスですので、提携クリニックの医薬品調達には、弊社も相当力を入れてサポートをしています。
医薬品卸様との関係性強化などを通じて、医薬品の安定調達・コスト削減を進めて、お客様の満足度向上に貢献していきたいと思います。
ーーその他、今後の経営テーマがあればお聞かせください。
濱口友彰:
医療を活用しながら、最終的には「肌の悩みを最も効率的・効果的に解決できるプラットフォーム」になりたいというのが私たちの思いです。
例えば、肌質改善のための生活習慣のアドバイスや、施術が必要な状況に対する美容皮膚科クリニックのご案内などを含む、スキンケアのためのトータルソリューションの開発も進めています。
企業におけるチャレンジ精神を探る
ーー貴社の企業精神や求める人材像をお伝えいただければと思います。
濱口友彰:
スキンケア業界は長い歴史がありながら、トップクラスの化粧品メーカーでも国内シェアが10%程度と推計しています。寡占化が進んでおらず、多数のプレーヤーがしのぎを削っている状況です。つまり、お客様のニーズを充足しきれていない業界ともいえます。そうした従来の「当たり前」を変え、新しいスキンケアの文化を作り出せる会社を目指しています。
とにかく新しいことを実行していく会社なので、スタンダードが存在しない分野への挑戦にも前向きに取り組める方を求めています。多数の部門が相互連携し、お互いを巻き込んでいくためにも、好奇心とチャレンジへの気概は欠かせないでしょう。
編集後記
自宅にいながら肌の悩みを解決していける『東京美肌堂』は、未曾有の事態であるコロナ禍で生まれた画期的なビジネスだ。濱口社長が唱える新しい文化として、美容のスタンダードになりうるであろう株式会社LATRICOの事業から目が離せない。
濱口友彰(はまぐち・ともあき)/1981年三重県生まれ。2004年に東京大学を卒業。三井情報開発(現・三井情報株式会社)を経て、2007年よりボストンコンサルティンググループにて多くの大手企業の成長戦略策定・新規事業展開、組織再構築等を支援。その後、西友、株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)、株式会社千趣会(REVIC投資先)の取締役を経て、2020年10月にLATRICOに参画。2021年10月に代表取締役社長兼CEO就任。