人と組織に対する深い洞察と専門知識を有する経営コンサルティングファーム、株式会社MIMIGURI。
人と組織の可能性を最大限に活かした新しい多角化経営モデル「Creative Cultivation Model(CCM)」を基盤とし、人材育成から経営構想に立脚した組織変革・組織開発・組織デザイン・事業開発・経営戦略まで、組織の創造性を育むための総合的なコンサルティング事業に取り組んでいる。
同社は2社のコンサルティング企業が合併し、2021年に設立された。代表取締役Co-CEOのミナベトモミ氏に、合併までの経緯や、基盤となる経営モデルCCMについて話を聞いた。
実践を繰り返し、叩き上げで培われたコンサルティング能力
ーー現在のコンサルティング事業をはじめたきっかけを教えてください。
ミナベトモミ:
大学を卒業し、家電メーカーにてプロダクトマネージメントを数年経験した後、事業開発のコンサルタント会社を起業しました。
主に中小企業の社長やオーナー向けにコンサルティングをしていたのですが、当時の顧客企業の多くは素晴らしい事業を展開しているにも関わらず、経営企画/HR/Ops等のコーポレートオペレーションが整備されていないことがほとんどでした。企業側も組織整備のニーズがあり、事業開発のコンサルと合わせて組織整備にも対応したのが、この事業を始めたきっかけでした。
ーーその後、どのようにしてMIMIGURIを立ち上げたのですか?
ミナベトモミ:
2010年代にはスタートアップ企業の増加がピークに達し、サイバーエージェントやディー・エヌ・エーなどのメガベンチャーが台頭してきました。そこで、若くして起業する方に向けた組織づくりの援助や、メガベンチャーの組織変革、SMB企業のブランド支援をするべく、DONGURIという会社を立ち上げたのです。
その後、主に大企業向けのコンサルティングをおこなっていたミミクリデザイン(Mimicry Design)という会社と出会いました。彼らの持つファシリテーションの実践知と理論的基盤を、DONGURIが手掛けてきた組織デザインやコンサルティングファームなどの実践的な業務と掛け合わせ、2021年に合併してできたのがMIMIGURIです。
ターニングポイントとなった組織論の重要性への気付き
ーー貴社の掲げる、新しい多角化経営モデル「Creative Cultivation Model(CCM)」を考案したきっかけは何ですか?
ミナベトモミ:
Creative Cultivation Modelは「組織創造性モデル」の意味で、いわば企業の「創造性の土壌」を耕すための見取り図です。
多くの企業は創業時の優秀なメンバーによって凄まじい事業成長を遂げ、市場に大きなインパクトを与えるものの、社員が500〜1000人を超えるあたりから企業の持続的可能性(稼ぐ力の継続と、それを裏支えする各種無形資本に立脚する組織づくりのモデル化)に陰りが見えてきます。
スター的な存在である創業者の力だけではなく、組織として全員の力を用いながら推進していくには、会社のインターフェースをがらりと変える必要があります。しかし、これまで独創的な文化をつくり上げてきた企業が先行事例のない状態で組織の再編をすることに、経営者の皆さんは葛藤していました。
経営層の方々の挑戦と葛藤を見ているうちに、「素晴らしい事業を展開しているスターのような方々が頭を抱えることのないよう、新時代の組織づくりの体系化を図りたい」と思うようになったことが、Creative Cultivation Model(CCM)を考案するに至ったきっかけの1つでした。
ーー組織づくりのコンサルティングをおこなう際、実際にどのようなアプローチをするのでしょうか?
ミナベトモミ:
企業規模が1000人単位になってくると、働く人間の価値観も多様化し、創業当初の少人数ではできていた阿吽の呼吸での意思決定が難しくなります。
なぜかというと、個々人が長い時間をかけて形成してきた成功原則の前提がそれぞれ異なっており、意思決定の基準が合わないためです。前提をすり合わせる作業はとても難しく、時間がかかるのですが、そのまま放置してしまうと会社の重要な方向性を決める経営会議でも意思疎通が取れず、会社として統制が効かなくなってきます。
そこで我々のアプローチとしては、まず経営層との対話に重点を置き、それぞれの持つ戦略の裏側にある成功原則の前提の言語化をすることから始めます。それを経営リーダーやミドルマネージャー層にも権限委譲を行い、数年にわたって併走していきます。
並走する中で、我々はお客様とともに経営戦略を考え、ともに資料や言葉を作り上げるアプローチが特徴です。
ーー貴社の強みは何でしょうか?
ミナベトモミ:
コンサルティング企業としての強みは、単に書類を提示し経営構想とその変革プランを提示するのではなく、実際にハンズオンでファシリテーションを組織全体に対しておこなっていることがまず1つ挙げられます。
2つ目は文科省認定の研究機関(※1)であることです。コンサルティングで得た実践的な知見を社内の研究開発部門で体系化し、他社とも共有できるよう取り組んでいます。
最後に、人材組織開発に強いということです。高齢化が著しい先進国においては、使い捨て資源のような人材のマネジメントではなく、一人ひとりのポテンシャルを引き出していくスタイルに変えていかなければなりません。弊社の事業は経営層のみならず現場のミドル層にも寄り添いながら、個や組織に活力を創ることを可能にしています。
(※1)2022月2月をもって文部科学省より科学研究費補助金取扱規定(昭和40年3月30日文部省告示第110号)第2条第4項に規定する「研究機関」として正式に認定。
何でも話せる“コミュニティ感覚”の組織づくり
ーー他社の組織づくりを主力事業とされていますが、貴社自身はどのような組織づくりを意識されていますか?
ミナベトモミ:
企業コンサルタントは、組織変革という重要なタイミングに介入することが多く、喜怒哀楽でいうところの“怒”や“哀”などの感情を抱えた方たちに対して、仲間として寄り添う必要があります。コミットとして併走することを前提するからこそ、「負の感情」もときに転移しやすい環境のため、コンサルタントは精神的に参ってしまう事もありうるでしょう。
そのため弊社の組織づくりとしては、個人の葛藤をオープンに出しあい、互いを人間として関心を寄せ合う環境を意識的につくるように心がけています。自分の悩みはもちろん、家族や子育てのことも相談し合えるような、会社というよりもひとつのコミュニティといった感覚を大切にした組織を目指しています。
またコンサルティングとは、組織資産である「知」を販売するビジネスとも言えます。ただ単に「研究知」を販売するということではなく、我々自身が日々組織内で絶え間ないタフな議論/対話を行い続けていることで、「共同体の智慧」を育んでいることこそが、我々のコアコンピタンスともいえます。
編集後記
MIMIGURIで活躍する人の特徴を聞くと、「論理性が必要になる仕事ですが、人間が好きで愛嬌があり周りに好かれるタイプの人が多いですね」と教えてくれたミナベ氏。
高度なコンサルティング技術を要するため中途採用をメインとしていたが、今後は会社に新たな風を吹かせるべく、新卒採用も強化して事業の多角化を進めていく。
「学び続ける組織」として成長を続け、誰も想像していない未来をつくり上げていくことだろう。
ミナベトモミ(みなべ・ともみ)/早稲田大学卒業後、家電メーカー勤務を経て2012年株式会社DONGURI創業、その後株式会社ミミクリデザインと合併し2021年株式会社MIMIGURI設立。現在は、MIMIGURIが提唱するCCM(Creative Cultivation Model)の理論開発を基盤に、大企業からメガベンチャーまでさまざまな企業における多角化経営・組織変革の専門家組織として、コンサルティングサービスと学習プラットフォームを展開している。
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