※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

2016年の設立後、社内のナレッジ共有を目的としたクラウドサービス「Qast(キャスト)」をリリースしたany株式会社。2024年1月には、企業のナレッジマネジメントや業務の自動化・効率化をよりサポートするため新たに「Qast AI」を搭載。代表取締役CEOの吉田和史氏に、起業までの道のりやサービスの強みをうかがった。

ネット広告・ゲーム業界から独自のWebメディアを立ち上げ

ーー吉田社長のご経歴を教えてください。

吉田和史:
インターネット広告の配信システムを有するアイモバイル社で、広告媒体向けの営業を2年ほど経験しました。テレアポのみで新規顧客を獲得することに限界を感じ、BtoBマーケティングにも注力したキャリアが現在の事業に活かされています。

当時、営業先にゲームアプリ会社が多く、ものづくりに興味が湧き、2014年にゲームアプリ開発会社グッディアへ転職しました。翌年、同社のM&Aをきっかけにキュレーションメディア(まとめサイト)の事業部長に就任し、休日を利用して知人と一緒に別途サッカーをテーマにしたWebメディアを立ち上げました。

大好きなサッカーをテーマにしたメディアは好調でしたが、「Qast」の事業へ注力するため、anyを法人化した半年後に手放しました。

進化の早いIT業界で発揮した強みとは

ーーそこから「Qast」の事業に転じたきっかけは何でしたか。

吉田和史:
それまで手がけた業務や事業は振り返ってみると生涯をかけて取り組むという決意にまではいたっていなかったと感じます。

新しい事業を立ち上げるにあたり、ボラティリティ(価格変動率)の大きいBtoCではなく、法人営業の経験を活かしてBtoBをやることに決めました。自身が感じた業務課題を100個ほどリストアップした結果、企業のナレッジマネジメントをサポートするサービスとして「Qast」を着想しました。既存のツールを導入しても社内ナレッジを共有しきれていない企業は多く、参入の余地があると思ったのです。

ーーQastのリリース時に苦労したエピソードはありますか?

吉田和史:
リリース当初は顧客層を完全に誤りました。情報拡散を目的とした私のSNSはITベンチャーにはつながりやすかったのですが、商談の段階で止まってしまうことが多かったのです。当時のIT業界はすでに「社内wiki」と呼ばれる情報共有サービスを導入していて、後発のQastに乗り換えてもらえる決め手がありませんでした。

しかし、Qastの特徴のひとつである、社内Q&Aを活用して組織の知見を蓄積できるツールは他にはありません。そのため、オウンドメディア(自社媒体)を通して継続的な情報発信をしていき、その結果、大手企業から発注いただけるケースが出てきました。従業員数が多いほど採算性も高くなりますので、大手企業へのアプローチを増やしたことが成長につながったと思います。

生成AIを活用したサービスのアップデート

ーーリニューアルしたQast AIの特徴を教えてください。

吉田和史:
今までも弊社のナレッジプラットフォームは、キーワード検索のアルゴリズム(課題処理方法)に優位性がありましたが、さらにQast AIではAIがスピーディに自動回答することで、検索から新たなナレッジ機会の創出が可能になりました。PDFなどの資料をAIがナレッジ化する機能も加わり、自動化・効率化が進んで、社内回答者の負担は大幅に解消されます。

Qastの世界観は、ユーザーが楽しくナレッジを投稿しながら社内全体の効率化を盛り上げていくサービスですので、今回のリニューアルを機にさらに親しみのわくデザインにしました。使う社員の方にも世界観を伝えやすくするため、「社内の?が!に変わり、みんなの業務が動き出す」という新コンセプトをロゴでも表現しています。

今後の展開と求める人材像――企業が望む未来の日本

ーー今後の目標と、必要な人材像をお聞かせください。

吉田和史:
将来的に上場を目指していきたいと思っています。そのためにも、組織規模を140人規模まで拡大したいと考えています。事業を拡大していく上で新規獲得の営業はもちろんですが、すでにサービスを使ってくださっているお客さまとのコミュニケーションを弊社はとても重要視していて、そこを司るカスタマーサクセス部門の採用も強化していかなくてはいけません。

弊社ではチームの成果を最大化させようとする意思を「チームウィル」と呼んでいます。従業員と会社のやりたいこと・大事にしたいことが一致していないと、お互いに苦しい思いをするだけです。チームウィルのマインドがある方、この価値観を共有できる方と一緒に歩んでいきたいですね。

ーー吉田社長が理想とする未来についてお話しください。

吉田和史:
会社に属しているのに、社員同士の交流が活発ではなくひとりで仕事をしている人は少なくありません。Qastでの共有や発信が評価され、自己肯定感を得ることで働く人のモチベーションが変化していく実例が実際に出てきています。こういった好循環を生み出すことで、個人の幸福と組織の実利を両立でき、日本の景気向上の一助となるサービスを提供していきたいです。

編集後記

「チームウィル」というマインドを大切にするany株式会社だからこそ、個人の知見を集約して組織のパフォーマンスを上げる「Qast」が軌道に乗ったのだと感じた。今後も多くの企業が「Qast」の世界観と出会い、社内の課題を解決していくだろう。

吉田和史/福岡県出身。大学卒業後、IT業界で法人営業・アプリ開発・ディレクターを経験し、2016年にany株式会社を設立。2018年からナレッジプラットフォーム「Qast(キャスト)」の運営を開始し、2024年にはユーザー数60,000名を突破。「QastAI」も搭載し、世の中へのさらなるナレッジマネジメントの浸透を目指す。