※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

国を挙げてDXが進められるなか、製造業や飲食、ホテルといった「ノンデスクワーカー」たちが働く業界では、いまだに紙の帳票が使われることが多いという。しかし、現場の世界にもDXの波は押し寄せている。そのとき、デスクワーカーたちと同じツールで対応できるのだろうか?

その課題に目を付けたのが株式会社カミナシの代表取締役CEOである、諸岡裕人氏だ。諸岡社長が手がける現場DXプラットフォーム「カミナシ」は、業界を問わず多くの顧客に選ばれている。

なぜ「カミナシ」は業界を越えてノンデスクワーカーたちに選ばれるのか。カミナシの強みや、目指すビジョンなどをうかがった。

自分の思いを事業で実現するために起業を決意

ーー社長の経歴をお聞かせください。

諸岡裕人:
私の父は、航空会社のアウトソーシング業を経営するワールドエンタプライズ株式会社の創業者で、私はその背中を見て育ってきたこともあり、いつかは自分で事業をしたいという思いがありました。現在に至るまで、勉強と修行の連続でした。

大学卒業後まず入社したのは、多くの起業家を輩出していることで有名なリクルートグループに属する「株式会社リクルートスタッフィング」です。ここでは3年間営業として働き、事業を展開するうえでのマインドや現場感などを学びました。

リクルートスタッフィングの退職後は、2012年から父の会社であるワールドエンタプライズに入社。約4年間働いたのち、2016年に弊社を起業しました。もともとワールドエンタプライズを継ぐ予定で入社したのですが、自分の思い描いた事業に取り組みたいという気持ちが強かったので、起業の道を選んだ形です。

ーー貴社の事業内容を教えてください。

諸岡裕人:
主な事業は、現場で働くノンデスクワーカーのための現場DXプラットフォーム「カミナシ」シリーズの開発と提供です。いまだに紙の帳票が使われることが多い現場環境をDXすることで効率化を図り、ノンデスクワーカーの才能を解き放つことを目的としています。

カミナシは現場の課題にとことん向き合ったリアルな情報と、適切なサポートを提供するためのテクノロジーを掛け合わせてつくられています。さまざまな業界に導入可能で、食品製造や機械製造、飲食、ホテル業界などにも導入されています。

とにかく簡単に、長く使い続けられるツールを目指して

ーー貴社独自の強みは何ですか?

諸岡裕人:
カミナシの強みは、とにかく現場の方々に簡単に使っていただける製品であることと、充実したサポート体制です。

主力製品である「カミナシ レポート」はプログラム知識が不要なノーコードツールとして、現場の管理者が自ら業務アプリが作れるようになっています。

そのため、導入時にこれまで使っていた紙の帳票を「カミナシ レポート」に移行するのですが、普段ITツールに慣れていない方が多い中で、単純にプロダクトを売っただけでは活用が進みません。そこで、導入時のサポートを充実させて、専任の担当者が2〜3ヶ月間伴走して活用まで推進していきます。

また、作成された業務アプリも、現場の作業者が入力しやすいように極力スクロールが少ない画面設計にしたり、手袋をしたままで押せるようにボタンの大きさに配慮するなど細部にまで現場感にこだわっています。

ーー今後、目指したいビジョンを教えてください。

諸岡裕人:
現場のさまざまな課題を解決し、ノンデスクワーカーが働きやすく活躍できる世の中をつくることが私たちが目指す最終的なゴールです。

まだまだ現場には非効率な業務がたくさん残っています。私たちはITという武器をノンデスクワーカーの人たちに提供することで、彼らが働きやすい未来にしたいと考えています。それらをプロダクトの構想としてまとめたものを昨年、「まるごと現場DX構想」として発表しました。

現在は、現場の帳票をデジタル化する「カミナシ レポート」を主力サービスとしていますが、この構想に沿って新しいプロダクトも開発していき、現場のさまざまな課題を解決していこうと考えています。

ビジネスを加速させるために必要な人材と思い

ーー人材に求める条件は何ですか?

諸岡裕人:
特に欲しい人材は、弊社のミッション、ビジョン、バリューに共感いただける方です。私たちはまだまだチャレンジをしていくフェーズのスタートアップです。そのため、スピード感やチャレンジ精神を持っている方が必要です。

今後も新しいプロダクトを開発していきますが、そこで大事なのが、スタートアップ初期のような密度の濃いマインドと勢いです。クオリティの高いプロダクトを実現するには、知識や技術だけでは不十分で、そこにスピード感やマインドがあってこそ、解決すべき課題に真摯に寄り添えるものです。

ーーこの記事を読んでいる読者にメッセージをお願いします。

諸岡裕人:
とにかく「人生は思ったより短い」と伝えたいです。私も今年40歳を迎えましたが、正直いつまで社長を続けるかは予想できません。そう考えると、あといくつのプロダクトをつくれるのか。そういう具体的な話になってきます。

人生は今、このときが一番若いのですから、成し遂げたいことがあるならすぐに動くべきです。具体的なビジョンがなければ、まずは自分にできそうなことから始めてみましょう。ビジョンやミッションは後から自然とついてきます。まずは動いてみて、その先の景色を眺めてから次の目的地を考えてもいいと思います。

弊社も今一度、創業期のマインドに立ち返って事業を推進しようとしています。事業を始める楽しさ、成長の喜び、そしてお客様の役に立つということを味わいたい方は、ぜひ弊社で一緒に働いてみませんか。

編集後記

デスクワーカーの「当たり前」とノンデスクワーカーの「当たり前」は違う。この差異を埋めるプラットフォームを用意するには、ノンデスクワーカーの業界を間近で感じ、働く人の実態を俯瞰できねばならない。現場で働く方たちをカミナシが支える姿が「当たり前」になる日は、そう遠くないかもしれない。

諸岡裕人/1984年生まれ。2009年慶応義塾大学経済学部卒業後、リクルートスタッフィングで営業職を担当。2012年家業であるワールドエンタプライズ株式会社に入社し、LCCの予約センターや機内食工場の立ち上げなどに携わる。現場経験のなかで感じた課題を解決するため、2016年に株式会社カミナシを創業し、取締役CEOに就任。