※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

テクノロジーの進化とともに急速に変化する決済業界。キャッシュレス化や、決済手段の多様化によって、取引は円滑になる一方、セキュリティリスクも課題となっている。

ソニーペイメントサービス株式会社は、ECサイトなどで決済インフラを提供する決済代行事業者だ。業界唯一の自社決済ネットワークを強みに、クレジットカードやコード決済サービスの提供に加え、属性データを活用した独自の本人認証サービスである「認証アシストサービス」の提供により、高セキュリティな決済環境を実現している。同社の代表取締役の野村亮輔氏に、同社のサービスと未来へのビジョンをうかがった。

決済は単なる支払いではなくビジネス創出と顧客体験を生む

ーーはじめに、NTTデータ時代のご経験についてお聞かせください。

野村亮輔:
グローバルに活躍したいという思いや、「ITでものづくりをしたい」という気持ちからNTTデータに入社しました。配属当初は決済に特化したいという思いはなかったものの、身近な業務を通じて社会に貢献できる決済領域に自然と関心を持つようになりました。

入社当初はクレジットカード会社のシステム開発を担当しましたが、その後、店頭に設置する決済端末や、決済端末の後ろでカード会社などと接続する決済ネットワークの新規営業のほか、ビジネス企画、M&Aを通じたAPACへの参入、リテール業界のDX戦略の立案などを担当しました。

ーー特にどのような仕事が、その後のキャリアにつながったのでしょうか。

野村亮輔:
決済端末や、決済ネットワークの営業をしていた頃の話ですが、当時は今ほどキャッシュレス決済が普及していない時代でしたので、地方のスーパーマーケットなどに如何に決済サービスを使っていただくかは苦労しました。最初はただ会社の商品を売っていましたが、顧客の反応が芳しくない中、キャッシュレスの推進が如何に価値貢献するかという経営視点で話をしないと響かないということに気づきました。

その後、自らスーパーマーケットのレジ打ち現場にストップウォッチ片手に張り付き、キャッシュレス決済による業務削減効果や消費者への価値貢献効果等含めた経営価値を定量化し顧客幹部に説明し、受注しました。この経験を通じ、自分の見ているものの「本質的な価値」を再定義し、顧客の視点に立って提案を行う力の重要性に気づきました。

スマートフォンなどの登場によって、消費者の参画も前提としたさまざまなデジタルビジネスが台頭するようになった時代においても、決済は重要な役割を持っていると考えます。多様な購買体験の中でも常に必要な商売の「出口」でありますし、個人購買情報等を活用した多様なデジタルマーケティングで消費者を購買に導く活動を含めた商売の「入口」にもなりますので。

決済を軸に、決済を超え、購買体験や、マーケティング活動によいインパクトをもたらしていくことをキャリア開発上重要視するようになり、消費者、小売流通企業、決済事業者、カード会社等から構成される決済におけるバリューチェーン全体のシステム、ネットワーク、ポリティックス、エコノミクスへの理解を転職等も経て深めていこうと考えるようになりました。

そこから、Apple Japanに参画し、Apple Pay事業の統括責任者として、日本独自の決済方法への対応を進める中でiPhoneという消費者接点を入口に、如何にして決済アプリなどを中心に消費者体験を事業者とともに作り上げていくかに奮闘し、Squareでは取締役として多様な決済端末や「iPhoneのタッチ決済」導入を牽引するなどし、大手のみならず中小企業加盟店様のビジネス拡大を如何にキャッシュレスで推進していくかなどのさまざまな施策の企画と実行を行い、決済をビジネスのさまざまな側面と掛け合わせる業務に携わりました。これらの経験を通じて、決済は単なる支払処理ではなく、ビジネス全体や顧客体験に深く関わるものであるという考えを持つことができたと思っています。

パイオニア企業の強みで顧客のビジネスを支える

ーーソニーペイメントサービスの事業内容と強みについて教えてください。

野村亮輔:
弊社はECサイトなどで利用されるクレジットカード決済、コード決済などのインフラを提供する決済代行事業者です。お客様のECサイトとカード会社や各決済事業者の間に立ち、決済処理を担っています。

弊社の最大の強みは、決済代行業界で唯一となる自社決済ネットワークを持っていることです。これにより、カード会社と直接接続し、契約から技術的な処理まで一貫して対応できる立場にあります。そのため、特定のイベント時のピーク処理など、全体のエコシステムとして信頼性の高い対応が可能になります。

また、もう一つのユニークなサービスとして「認証アシストサービス」があります。これは決済時に入力された属性情報(氏名など)を用いて本人認証を行うことができるサービスです。カード会社と直接ネットワークを接続していることにより、リアルタイムの本人確認を実現するもので、特に保険やMVNO(※)などの業界でご好評いただいています。決済を単なる処理ではなく、認証や顧客体験と結びつけることで、新たな価値を提供できると考えています。弊社は30年の実績を持ち、高いセキュリティ体制と高速レスポンスでお客様のビジネスを支えています。

(※)MVNO(Mobile Virtual Network Operator):仮想移動体通信事業者の略で、自社で基地局を持たず、大手通信業者から回線を借りてサービスを提供している事業者を指す。格安SIMと呼ばれる安価なサービスを提供することが特徴。

ーー社長就任後はどのような点に注力されていますか。

野村亮輔:
社長就任にあたり、これまでの戦略をチームと共に見直し、具体的な施策と数値目標を定めて実行に移しました。最初の1年で成果を出すことを目指し、自ら積極的に動き、外部講演やさまざまな人とのネットワーキングを行いつつ、単身でニューヨークで開催されたリテール業界の最新トレンドに関するイベントに参画し、情報発信をするなど、自ら出向き実行し動きました。これにより、社員との信頼感は醸成できたと感じています。

今後は、ソニーグループの一社という位置づけから、独立した組織として変革していく必要があります。オフィス環境の改善や人事制度の見直し、MVV(Mission,Vision,Value)の刷新やそれに基づく行動様式の定義など含め、全社的に変化を推進している最中です。

エンタメ需要とAIの活用で変わる決済サービスの未来

ーー今後の展望についてお聞かせください。

野村亮輔:
大きく二つのテーマがあります。一つはエンターテインメント業界への注力です。市場環境とデジタル技術・AIなどの技術革新により人々の生活や働き方が多様化していく中、日々を「楽しむ」ことへの関心は今後一層高まると考えています。ゲーム、音楽ライブ、漫画などのエンタメコンテンツは世界に発信できる強力な文化であり、それらに紐づく購買体験や楽しみ方についても、より変革できる可能性や意味は大きいと感じています。ゲーム攻略メディアを運営するGame8様とのジョイントベンチャー設立もその一環です。私たちはあくまで裏方の「黒子」として、エンタメと決済を掛け合わせることで、新しい価値創造に貢献したいと考えています。

もう一つはAIへの対応です。さまざまな企業ですでに議論されている、生成AIの業務などへの早期適用は勿論、決済市場における資金の流れもより安全を担保しつつ、より自動化、効率化できる可能性があります。さらにはAIが主体的に働き、人々の作業を代行する時代において、決済という行為そのものがAIによって代替される可能性も高く、そのような、未来に如何に現在のレガシーの仕掛けを適用していくか、準備を進めていくことが次の3〜5年のテーマになると考えています。

ーー求める人物像について教えてください。

野村亮輔:
弊社は現在、変革の真っただ中にあります。このフェーズを共に駆け抜け、成長を牽引してくれる、チャレンジ精神のある人材を求めています。特に重視するのは「勉強意欲」と「自己修正・自己変革力」です。本を読むだけでなく、さまざまな人と会い、人から学びを得て、自分自身をアップデートできる人が望ましいです。

また、受け身ではなく、自らプロダクトや価値創造に関わりたいという思いを持つ方も歓迎します。たとえば、お客様からの要望に対し、個別対応だけでなく、他の顧客にも適用できるサービスとして形にできないか、と考えるような発想力です。それはエンジニアであっても営業であっても同じです。世の中のビジネスプロセスや業界構造に対する知識を持ち、探求する意欲がある方が、弊社のフェーズには合うと思います。

頑張った人が正当に評価される文化を強化したいと考えています。これまでの慣習にとらわれず、能力と成果で勝負したいという方にとって、今は非常に良いチャンスだと思います。決済の専門知識は現時点で必須ではありません。多様なバックグラウンドを持つ方々と一緒に、新しい価値を創造していきたいと考えています。

編集後記

決済という「黒子」の存在に、エンターテインメントやAIといった要素を掛け合わせることで、人々の生活をより「楽しく」豊かにしていきたいという熱意が伝わってきた。変化を恐れず、自ら考え行動し、新しい価値創造に挑む姿勢を持つ人にとって、同社はまさに飛躍のチャンスに溢れるステージだろう。今後のソニーペイメントサービスが、時代とともに、どのような未来を切り拓いていくのか注目したい。

野村亮輔/早稲田大学法学部卒業。米ダートマス大学で経営学修士(MBA)を取得。NTTデータで決済サービスの営業、ビジネス企画に加え、M&Aなどを通してのAPACへの参入プロジェクトや、リテール業界のDX戦略立案などを担当。Apple Japanに参画後、Apple Payの事業統括責任者として、Apple PayでのVisa決済の国内展開や、QRや電子マネーなどの日本独自の決済手段のApple Pay対応を軸に、事業拡大戦略とパートナーシップ推進に携わる。Squareでは取締役として事業戦略統制を図り、決済プレーヤーとのパートナーシップ機関などを管掌。「iPhoneタッチ決済」の日本市場への投入を牽引。2024年よりソニーペイメントサービス株式会社の取締役、専務執行役員を務め、2025年2月より現職就任。