地球温暖化は世界人類史上最大の課題であり、年々深刻化している。気候変動による森林火災、海面の上昇、異常気象といった環境問題を引き起こし、それにともなう経済的損失ははかり知れない。このままでは食糧難や感染症の流行にもつながり、将来的には地球に住めなくなるとまでいわれている。
脱炭素化(GX)およびサステナビリティの実現(SX)が急務である今、ソリューションの提供に努めているのがbooost technologies株式会社だ。今回は日本を代表するプライム上場企業のSX/GXプロジェクトを数多く成功に導いてきた代表取締役社長の青井宏憲氏に、事業立ち上げのきっかけや同社の強みなどについて話をうかがった。
東日本大震災で環境事業の社会的必要性を痛感
ーーサステナビリティや脱炭素に関する事業を立ち上げようと思った経緯について教えてください。
青井宏憲:
幼少期から日本の産業界の偉人伝をよく読んでおり、小学生のころから「将来、社会のインフラとなる事業を起こすんだ」という思いを抱いていました。新卒でコンサルティング会社に入社し、将来独立したときにうまく時流に乗れるように「マーケットが大きく社会性が高いこと」を軸に、自身が取り扱う事業を探していました。
そこで当時「スマートエネルギー」や「クリーンテック」などが注目されていた「サステナビリティ」「脱炭素」に着目したのです。
2015年には温暖化ガス削減の国際的な枠組みとしてパリ協定が採択されました。日本でも化石燃料でつくられている電力を再生可能エネルギーにシフトしていくために、電力自由化が実施されました。事業をスタートさせるには絶好のタイミングだと思い、いよいよ独立を実行に移すことにしたのです。
ーー事業を立ち上げるタイミングをうかがっていたのですね。
青井宏憲:
そうですね。また2011年の東日本大震災も、起業への思いを強めた出来事でした。
原子力発電の事故から、分散型再生可能エネルギーの重要性を再認識するとともに、当時勤めていたコンサルティング会社で、全国のエネルギー会社やガス会社を支援するために奔走していたのですが、震災時、音信不通になってしまった同僚がいました。もうダメかもしれないと一瞬思いましたが、数日後連絡があり、太陽光発電やエコキュート、蓄電池が備わっている取引先の方の家でなに不自由なく過ごしていたとのことでした。
その時、「自分が推進しようとしている事業は、社会インフラにとって必要不可欠なものだ」とより身近に実感することができ、更なる強い使命感を感じるようになりました。
非効率なサステナビリティ情報開示を支援するプラットフォームを提供
ーー貴社の事業の社会的な重要性をお聞かせください。
青井宏憲:
政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするというカーボンニュートラルを宣言しました。またグローバルな動向に足並みをそろえ時価総額3兆円以上のプライム上場企業から順次財務情報のみならず、非財務情報「サステナビリティ情報」を開示することが義務づけられる予定です。
義務化のタイミングとして2027ごろを予定されていますが、ヨーロッパに現地法人がある会社は25年からCSRD等の対応をしなければなりません。しかし、その開示に必要なデータを収集、集計する際に、Excel比率が71%であり、とても非効率に作業が行われています。
数百社のグループ会社間・各部署・各組織間で、グローバルに膨大なExcelデータをバケツリレーのような形で送りあっているため、開示は年1回行うのがやっとというのが現状です。この問題を解決し、サステナビリティ情報開示の体制強化につなげるとともに、本来注力すべき企業価値向上のためにも、私たちの事業がますます必須になってきています。
ーー貴社の事業は具体的にどのようなものですか?
青井宏憲:
サステナビリティ情報の開示に対し、ワークロードを固めて効率的に作業が進められるインフラを整えなければなりません。私たちはそのために必要な「サステナビリティERP」という基幹システムを提供しています。
これは、ESGスコアトップクラスのベストプラクティスを標準化し、ESG全般の、データを収集・可視化させ、マネジメントし、改善活動の実行や企業価値向上を可能にするプラットフォームです。開示の義務化を控えた今のタイミングで、対象企業である日本を代表するプライム上場企業に数多くの導入実績のあるこのようなプロダクトを持っていることが弊社の強みであると感じています。
大企業を相手にプロダクトの開発・提案を行えるプロ集団の採用・育成に注力
ーー今後はどのようなことに注力していきたいですか?
青井宏憲:
サステナビリティ情報開示の義務化にあたって、まずは時価総額3兆円以上の企業に弊社のプロダクトの導入を促すことです。そして私たち全員が顧客に満足していただけるような力を持つプロ集団にならなければなりません。
そのためにはエンタープライズ企業への導入の加速を実現すること。また、そのような企業に選ばれるプロダクトをつくる優秀なメンバーをいかに採用できるかということもポイントになると思います。採用活動には特に力を入れています。
ーーどのような人材に入社してほしいと考えていますか?
青井宏憲:
時価総額1〜3兆円以上の企業がターゲットであるため、ビジネスサイドは、同規模のエンタープライズ向けにビジネスを推進した経験のある方を求めています。特に外資系IT企業出身の方をペルソナにしており、実際にそのような方々に入社してもらっています。
一方プロダクトサイドは、事業ドメインのことを理解しながら、エンタープライズ向けのクオリティに落とし込むスキルが必要となってきます。よって、単にコードが書けるだけではなく、エンジニアリングまでしっかり担える方を求めています。
ーー最後に、求職者に向けてメッセージやPRをお願いします。
青井宏憲:
今後、全ての産業が脱炭素社会に向けて再生可能なクリーンエネルギーに転換していき、持続可能な社会に変革していきます。その最前線で事業を行う弊社で経験が積めること、また日本を代表する企業と一緒にビジネスができることは非常に貴重な経験になると思っています。
昨今DX人材の不足が嘆かれていますが、GX・SX人材はさらに不足しています。弊社であればその貴重な人材に成長することも可能です。少しでも興味を持った方、一緒に働きたいと思った方がいれば、ぜひ応募してみてください。ともに地球の未来のために働きましょう。
編集後記
同社と同じような、ESG開示を支援するプロダクトを提供する競合他社は複数ある。しかし、同社はサステナビリティ分野における数多くの特許を取得する等、知財戦略にも力を入れ強固な成長基盤を確立している。
知見のあるスペシャリストが社内にいない会社でもベストプラクティスを導入することでSXの成功に導くことが可能であることが強みのひとつであると青井社長は語った。既にシェア率No.1の導入実績を誇っているが、25年、そして26、27年に向けて、同社はさらに多くの企業から重宝される企業に成長していくだろう。
青井宏憲/2010年に東証一部(現プライム市場)コンサルティング会社に入社し、スマートエネルギービジネスチームのリーダーを経て、2015年にClimate Tech(気候テック)カンパニーであるbooost technologies株式会社を設立。