※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

中小企業庁のデータによると、小規模事業者が重要と考える経営課題として、最も多いのは、「販路開拓・マーケティング」であり、その割合は25.6%にのぼる。そんな中、広告やデザインの知識を取り入れ、顧客の本質的な成長へのアプローチを得意とする企業がある。それが、2018年の創業以来、途切れることなく黒字経営を続ける株式会社セブンデックスだ。なぜ起業直後から黒字化を実現できたのか、その秘訣や企業としてのカルチャーについて、代表取締役の中村伸啓氏に話をうかがった。

決して順風満帆だったわけではない、現在の事業にたどり着くまでの険しい道のり

ーー起業するまでの経緯をお聞かせください。

中村伸啓:
大学を卒業後、成長率の高い会社を探して、株式会社マイナビ(以下、マイナビ)に就職しました。マイナビでは営業部に配属され、営業活動に加えて広告のディレクション、制作、分析など幅広い業務を経験し、最終的にはセールスマネージャーに昇進しました。

もともと大学在学中から起業したいという思いを抱いていました。しかし、具体的な事業内容が漠然とする中、マイナビの関西圏採用の同期であり、現在の共同経営者である堀田との出会いが、私の起業への道を一気に加速させたのです。彼も起業への強い意欲を持っており、2016年に初めての会社を立ち上げました。当時は、もう1名の共同経営者と計3名でキュレーションメディアを約2年運営したものの伸び悩み、1人が抜けるタイミングで、私たちは事業の再考を決意しました。

時代のニーズを敏感に捉え、常に充実した提案を心がける姿勢で急成長

ーー貴社の事業内容について教えてください。

中村伸啓:
弊社は大きく2つの事業を展開しています。
1つ目は、ビジネス・クリエイティブ・スタジオです。これは、企業のマーケティングやブランディングにおける課題解決を支援する事業で、マーケターとデザイナーから成る事業開発部隊を指します。

2つ目は、2024年1月にスタートしたHRソリューション事業です。現時点では人材紹介のみですが、今後はキャリアコーチングなどHR(Human Resources:企業における人的資源の活用)に関する幅広い課題に対応できるよう、事業を拡大していく計画です。

ーー起業当初から黒字だったとのことですが、その理由は何ですか。

中村伸啓:
顧客のニーズを的確に捉えてきたことだと思います。
今の時代、単に依頼されたことだけに答える時代は終わったと考えています。顧客から漠然とした依頼をされても、それに対する適切な提案が求められる時代です。弊社は、顧客にとって本当に良いと思えるものを、積極的に提案する企業であることを目指し、努力しています。

起業当初は、堀田と2人でゼロから営業活動を始め、2年目には弊社のサービスを導入してくださった企業様から新たな紹介をいただけるようになりました。3年目からはオウンドメディア(自社媒体)などを通じてお問い合わせをいただけるようになり、現在の6年目では、インバウンド営業スタイルが定着しています。

ーー貴社の強みを聞かせてください。

中村伸啓:
似たような事業を行っている企業との違いは、単にデザインだけではなくお客様の成長を確実に実現するためのエグゼキューション(執行、実施、実行の意味:一般的にはM&A用語として使用され、スキームの選定や企業価値算出など一連の業務を指す)を徹底的に考えている点だと思います。多くの会社で優秀な人が実践していることを、組織的に、そして効果的に行えるのが、弊社の強みです。

どうしたら組織的に行えるのか、とよく聞かれますが、特別なことはしていません。社員に弊社の思想をしっかりと浸透させ、いくつかの実践的な「tips(how to)」やナレッジを、研修などを通じて資産化しています。たとえば、会議一つとっても、弊社では会議の位置付けや、そのために時間をどう使うかを、動画やテキストにしてまとめています。

さらに、弊社がマーケティングのみならず、広告や運用までを一貫して支援できる点も、他社にはない強みです。

急成長する中でも、明確でブレない思想と「ロマンとそろばん」で意思決定

ーー今後、力を入れていくことについて教えてください。

中村伸啓:
マネージャー育成と新規事業の展開です。
現在、社員は40名ですが、ここから3ヶ年で160名採用したいと考えています。一般的にマネージャーは、1名で5名程度をマネジメントするのが適切ですので、今の弊社のマネージャーの人数では足りません。

しかし、ただ単に人数を増やすだけでは不十分です。弊社には、会社の在り方や方針などの思想がしっかりと根付いているので、その思想に基づき、社員が意欲的に成長できるように、マネージャーをサポートし、育成していきます。今後も、会社の在り方や方針などの思想に共感した方に入社していただきたいと考えています。

また、弊社のパーパス(purpose:企業の存在意義)は、「小さな革命を次々と生み出し、日本のシーンを沸き起こす」という目標に基づき、社会をよりよくするための事業を積極的に展開していくことです。社員が本当にやりたいと思うことで、ロマンとそろばんが両立するのであれば、積極的にチャレンジし、この3ヶ年で少なくとも毎年1つは新たなマーケットを切り拓いていきます。

ーーその結果、5年後10年後のビジョンはどのように思い描いていますか?

中村伸啓:
日本経済の新しいロールモデルになりたいと思っています。
具体的には、ユニークで興味深い事業を展開しながら、しっかりと利益を生み出せる企業にしていきます。新たな価値を生み出せる会社。一定の規模で持続的に成長を遂げる会社。強く大きく挑戦的な会社。周囲から「おもしろい」と評される会社。これらが弊社が目指す方向性です。

一般的に会社の意思決定は、費用やリスクに基づいてなされることが多いですが、実際には、意思決定は会社にとって方針や思想を示す重要な判断です。弊社では費用やリスクの観点のみで意思決定を行うのではなく、思想を基軸にしたいと考えています。一方で、感情を起点にした意思決定が誤った方向に進まないように、論理的な裏付けも大切にする。これが弊社の考え方です。

ーー最後に、貴社に向いているのはどのような人材ですか。

中村伸啓:
ゆくゆくは自身で起業したい方や、意欲的に仕事がしたい方です。
弊社には起業経験者が多く、40名の社員のうち10名がそれに相当します。さらに、今後積極的に多岐にわたる事業を展開していくので、起業を目指す方には実践的な経験が積める場として最適だと思います。

また、マーケティングやクリエイティブな仕事は専門的に見えますが、大切なのはお客様やステークホルダーをどう幸せにするかを考えることに尽きます。お客様を幸せにするためのアプローチや手段に関する知見はもちろん必要ですが、根本は、お客様の幸せや利益、どう成長させるかという視点です。ビジネスをつくっていくことに興味を持っている方にとって、弊社は非常に刺激的でやりがいのある企業だと感じていただけるはずです。

編集後記

起業当初、中村社長が挑戦した事業内容は未経験の領域だった。それでも、顧客の成長や幸せを心から願い、依頼された内容にとどまらず、積極的に提案を行ってきた。その結果が、起業以来続く黒字経営や、共同経営者と2人の体制から現在の40名にまで成長した社員数に表れている。起業家として、論理のみならず情熱や感情も併せ持って進む中村社長が率いる株式会社セブンデックス。同社が、日本企業の新しいロールモデルとなり、やがては日本経済を牽引する存在となる日もそう遠くないだろう。

中村伸啓/1992年生まれ。大阪府出身。株式会社マイナビにて広告のディレクション、サービス開発を経て2018年に株式会社セブンデックスを共同創業。代表取締役に就任。顧客起点のマーケティングとデザインを実現し、事業成長へ導くビジネス・クリエイティブ・スタジオ事業を展開。「心が熱くなる未来と時代のシンボルになる企業を創る」をビジョンに日本のビジネスシーンのアップデートに取り組む。経営戦略、事業戦略、ファイナンスを管掌。