※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

コンサルティングファームなどの出身者と企業の需要を結ぶマッチングサービス「HiTalent(ハイタレント)」を運営しているハイタレント株式会社。2000人を超える「優秀」な「高スキル人材」を、どのように開拓してきたのか。自身もハイタレント人材である、代表取締役の有吉洋平氏にお話をうかがった。

東大卒業者、起業3度目で成功をつかむ

ーー社長の学生時代について聞かせてください。

有吉洋平:
大学1年生の時、周りにいる多くの優秀な人に驚き、興味を持っていたアカデミックの中でも一番にはなれないと感じました。その後、文系と理系をつなぐビジネスに興味を持ち、ビジネスに関わるデータサイエンス系の専攻に進むことに決めました。

ーー大学卒業後から起業まで、どのように過ごしましたか?

有吉洋平:
実は、ハイタレント株式会社は私にとって3回目の起業でした。学生時代に初めて起業しましたが、そのときは上手くいかなかったのです。将来、また起業することを視野に入れて、リーダーシップのある人に出会うために戦略系コンサルティングファームに新卒で入社しました。数年間お客様の経営戦略や新規事業立ち上げのお手伝いをした後、独立して2社目を創業しましたが、1社目同様、十分に成長させることはできませんでした。

同級生でもある2社目の創業を手伝ってくれた若山と話し合い、若山が株式会社ビズリーチの出身だったことから、「ビズリーチのフリーランス版を立ち上げよう」という話になりました。そこで、2020年1月に設立したのがハイタレント株式会社です。

知り合い100人からの紹介で拡大する人と企業のネットワーク

ーー現在、どのような事業を展開していますか。

有吉洋平:
戦略系コンサルティングファームや投資銀行の出身者、IT・DXコンサルタントなどの高スキル人材を対象に、企業とのマッチングを行うサービスとして「HiTalent」を展開しています。プロジェクトマネージャー以上の経験がある「優秀層」を集めているのが特徴です。

最初は私や共同創業者の友人に声をかけ、100人に登録してもらいました。学生時代にコンサルタント志望者の団体に参加していたので、既に業界につながりが多かったことが役に立ちましたね。

その後、定期的にキャンペーンを実施したりして、知り合いが多そうな方に直接声をかけるなど地道な努力を続けた結果、登録者100人の一人ひとりが知人を紹介してくださり、現在は登録者が2000人を超えています。

ーーマッチング先の企業はどのように開拓していますか?

有吉洋平:
創業直後は、コロナ禍で外注を控える状況になりましたが、私個人でお手伝いしていた会社やその社員の紹介で1年目をなんとか乗り切りました。現在も、社員や登録フリーランスからの紹介が多いですね。優秀な方ほど多数の企業から要望があり、すべてを担当できないため、「HiTalent」を紹介してくれます。

ーー貴社の強みはどのような点ですか。

有吉洋平:
フリーランス人材も企業も、ご縁を大切にし、紹介でコミュニティを広げていることが弊社の大きな強みですね。弊社では、成果が出るまでコミットし続けることを大切にしています。審査を経た優秀な人材が活躍できるように、間に入る営業担当者が提案に関わり続けることが重要です。

また、弊社のサービスでは発注者と受注者の両方を、対等に協業できるパートナーと捉えています。フリーランスとして受注する方が、別の機会には企業の一員として発注する可能性もあります。このような柔軟な運営姿勢が、紹介による拡大につながっているのでしょう。

世界的な「最適配置」の実現を目指して、2030年を見据えた「コンサルの民主化」とグローバル展開

ーー今後の会社の目標や事業の計画を教えてください。

有吉洋平:
「ヒト・モノ・カネ」の最適配置を目指しており、中でも「人」の部分に焦点を当てています。現在は、優秀な人材が不足しているのではなく、優秀な人が活躍できる環境がなく、知恵の共有ができていない問題があります。

そのために今後は、中堅企業にも積極的にアプローチし、将来的には大企業に限らず誰もがコンサルティングを利用できる「コンサルの民主化」を推進したいですね。コンサルティングはオーダーメイドが原則ですが、特定の内容に対する定型的なパッケージも用意し、柔軟に対応していく方針です。

さらに、その先にはAIを利用した半自動化があります。すべてをAIに変えることはできませんが、マッチングの一部を自動化することで、お客様にスピードの価値を提供できるでしょう。

ーー今後の顧客開拓は、どのように進めていきますか?

有吉洋平:
幸いなことにフリーランスの方の中では認知が高まってきましたが、一般企業からの認知はまだ不十分です。リピート顧客を確保するために、フリーランスの方と協力して、以前お手伝いした時とは別の部署に提案しに行くこともあります。

また、弊社はコンサルティングファームにもフリーランスをマッチングさせ、チームの一員として活躍してもらっています。個人での活躍とチームでの活躍を両立させ、リソースを最大限に活用したいですね。一般事業会社とコンサルティングファームは、今後も顧客としてバランスよく両立させていきたいですね。

ーー海外展開の計画についても詳しく聞かせてください。

有吉洋平:
2050年までにグローバル展開を実現したいと創業したときから考えていました。登録フリーランスには外資系出身で英語ができる方も多いので、企業側を増やしたいですね。企業側は、ジャパン・マーケットに興味を持つベンチャーキャピタル(※)などを手がかりにしました。そこで、外資系出身者から紹介が得られる見込みがあり、海外フリーランスも展開できる目途が立ってきました。

※ベンチャーキャピタル:未上場の新興企業を対象にする投資会社など

ーー今後、事業を進めていく上での鍵を教えてください。

有吉洋平:
弊社の「ハイタレント集団」には、従業員だけでなく、登録フリーランスや登録企業も含まれると考えています。「世の中を良くしたい」という志を持つ方を集めて協業し、1社だけではできないことを実現していきたいですね。その仕組みをいかにつくれるかが、今後の成長の鍵になるでしょう。

編集後記

多くの試練に臆せず挑戦してきた社長の姿から、本当の「優秀」とは失敗を糧に前に進む力のことなのだろうと感じた。成長路線に乗ったハイタレント株式会社は、「ハイタレント集団」の力で今後どのように進んでいくのか。想像もできない未来をぜひこの目で見届けたい。

有吉洋平/福岡県立東筑高等学校入学。福岡県立修猷館高等学校編入・卒業。東京大学工学部システム創成学科卒業。大学ではデータ解析を学び、システム創成学科長賞を受賞し首席で卒業。株式会社ローランド・ベルガーに入社し、コンサルティング業務に従事。独立後、フリーコンサルタントとしてIT企業など未経験業界を中心に幅広いコンサルティング業務に従事。2020年、ハイタレント株式会社を共同創業し、代表取締役に就任。