
代理店募集に特化したWebサイト「代理店ドットコム」を運営し、数多くの企業の事業拡大を支援する株式会社プライスレス。同社の代表取締役を務める佐藤康人氏は、営業職での挫折を経て33歳で独立。「日本で唯一の代理店構築コンサルタント」として独自の道を切り拓いた。自身の苦しい経験から生まれた「不幸な人を一人もつくらない」という信念を胸に、知られざる巨大市場に挑む同氏に、その軌跡と事業にかける思いをうかがった。
挫折と衝突から生まれた33歳で独立する覚悟
ーー社会人としてのキャリアの原点についてお聞かせください。
佐藤康人:
新卒で東証二部上場の空調会社に入社し、総務部でキャリアをスタートしました。株主総会の運営や許認可手続きなどを通して、ビジネスの基礎を学ばせていただきました。しかし、約6年半その業務を経験する中で、毎年同じことの繰り返しに物足りなさを感じ始め、「新しいことに挑戦したい」という思いが募りました。そこで、以前から希望していた営業職に就くため、アウトソーシングを手掛けるベンチャー企業へ転職を決意したのです。
ーー営業職に転身されてから独立に至るまで、どのような経験をされたのでしょうか。
佐藤康人:
最初に転職したアウトソーシングの会社では、新規開拓営業の面白さに目覚めたのですが、若さゆえに社長と衝突し退職。次の外資系保険会社では、お客様を思うあまり高額商品を提案できず、営業として全く成果を上げられませんでした。
「このままではいけない」という強い危機感に苛まれる中、当時は家族を養うために、昼は営業代行、夜はアルバイトを掛け持ちする必死の毎日でした。そうした状況で「もっと自分らしく、自由にビジネスがしたい」という想いが日に日に強くなり、33歳で独立を決断したのです。
「代理店」との出会いが拓いた唯一無二の市場
ーー独立当初は、どのような事業から始められたのですか。
佐藤康人:
独立当初は、まず営業代行の業務委託からスタートしました。私自身が営業部長のような立場で、複数の企業の営業を担い、多い時には7社の名刺を持って活動していたのですが、その中で大きな転機が訪れます。あるPOSレジメーカーから「エンドユーザーではなく、販売代理店を見つけてほしい」と依頼されたのです。この依頼をきっかけに、私は初めて「代理店」というビジネスモデルを意識しました。
それまで全く馴染みがなかったのですが、以前学んだ「その道のナンバーワンになる」というマーケティングの鉄則をふと思い出し、「代理店の専門家はいるだろうか」と調べたところ、誰もいないことに気づきました。これを千載一遇の好機と捉え、その日から「日本で唯一の代理店構築コンサルタント」と名乗り、事業の舵を大きく切ったのです。
ーー具体的にはどのような手法で企業の支援を始められたのですか?
佐藤康人:
コンサルティングを進める中で、各企業の代理店募集を個別に支援するのは非効率だと感じていました。そこで、代理店を募集したい企業と、代理店になりたい個人や企業をWeb上で繋ぐプラットフォームを自ら立ち上げたのです。それが、代理店募集に特化した専門サイト「代理店ドットコム」です。設立当初から効率化を徹底し、営業担当者を一切置かず、資料請求から掲載までを自動化する仕組みを構築しました。
失敗経験から生まれた成功を導く仕組み
ーー貴社サービスが持つ、他にはない強みや差別化のポイントを教えてください。
佐藤康人:
代理店募集が初めての企業様でも成功できるよう、手厚いサポート体制を整えている点です。代理店向けの資料テンプレートや、契約を獲得するための電話営業などのマニュアルも無料で提供しています。誰が実践しても失敗しない水準まで仕組み化しているのが、弊社の最大の強みです。
実は、私自身が過去に60万円を支払ってある企業の代理店になったものの、何の教育も受けられず1円も稼げなかったという苦い経験があります。この経験から、募集する側の企業様には「貴重な時間や投資を無駄にしてしまう人を出さないでください」と強くお伝えしています。
この問題は私個人だけのものではありません。代理店業界には、募集する側のノウハウ不足と、応募する側の情報不足という根深い課題があり、結果として多くの不幸なミスマッチが生まれています。この状況を何とか打開したいという思いから、2013年には「一般社団法人日本代理店協会」を設立し、代理店構築のノウハウをまとめたマニュアルの無料配布も始めました。まだまだ道半ばですが、この仕組みを社会に広げることができれば、日本経済を根底から変える力になると信じています。
人生を変える転機をもたらす人との出会い

ーー事業における今後の展望についてお聞かせください。
佐藤康人:
「代理店募集で日本を元気に」という想いのもと、弊社サービスをもっと多くの人々に届けたいです。企業の経営戦略として「代理店を募集する」、あるいは個人の働き方として「代理店になる」という選択肢が、当たり前になる社会をつくることが私の使命です。
そのために、事業を拡大したいと願うすべての経営者や個人事業主の方々に「代理店ドットコム」をご活用いただきたいです。新しい商品やサービス、そして何より新しい人との出会いのために使っていただくことで、ビジネスを大きく飛躍させるきっかけを掴んでいただければ、これほど嬉しいことはありません。
また、代理店になることは働く側にとってもメリットが大きいと考えています。ですので、経済的な悩みを抱える若い世代にこそ、その可能性を知ってほしいと思います。時給で働く以外の選択肢として、スキルを磨きながら自身の力で未来を切り拓く方法があることを、事業を通して広く伝えていきたいです。
ーー最後に、この記事の読者である若者へメッセージをお願いします。
佐藤康人:
人生を変えるほどの転機は、多くの場合、人との出会いから生まれます。もし今の自分を変えたいと願うなら、新しい人と出会うための行動を起こさなければ何も始まりません。私たちは、志の高い素晴らしい経営者と出会える場所を提供しています。ぜひ、その一歩を踏み出してみてください。
編集後記
営業としての挫折、そして家族を養うためにアルバイトを掛け持ちした過去。佐藤氏の迅速果断な行動は、逆境の中から磨き上げられたものだ。自身の苦い経験を原動力に、代理店という仕組みを通して「関わるすべての人を成功に導く」と語るその眼差しは、単なる経営者のそれではなかった。同社が提供するのは、ビジネスのマッチング機能を超えた「人生の転機となる出会い」そのものだ。代理店という選択肢が当たり前になる社会を目指す同社の挑戦は、日本経済を足元から元気にしていく確かな力となるに違いない。

佐藤康人/1972年2月4日東京都小金井市生まれ。1994年中央大学商学部会計学科卒業。2005年4月、株式会社プライスレスを創業し、代表取締役社長に就任。一般社団法人日本代理店協会会長も務め、代理店ビジネスの普及・支援に注力している。代理店ドットコムのホームページはこちらから。