AIがさまざまな業界の発展を手助けしている昨今、AIと士業の融合により、真の意味での「法の民主化」に挑戦している人物がいる。株式会社Robot Consultingの代表取締役会長、横山英俊氏だ。
横山会長は、日本だけでなく、法による社会が形成されているアメリカでも挑戦を始めており、さらには世界中へとサービスを波及させていきたいという。AI活用で訪れる未来とはどのようなものか、横山会長の挑戦やビジョンなどについて聞いた。
法律などを身近なものにする、AIと士業を融合したサービスを展開
ーー貴社の事業内容や独自の強みを教えてください。
横山英俊:
弊社ではAIと士業を融合させたサービスを開発しています。すでに労務管理領域を担当する『労務ロボ(LABOR ROBOT)』をリリースしており、デジタル上で法律について話を聞くことができる『ロボット弁護士(ROBOT LAWYER)』の開発も進めています。
これらのサービスはチャットボットのような感覚で利用でき、法律や労務といった難しい分野を身近な存在にしてくれます。たとえば『ロボット弁護士』は質問サービス自体は無料で利用可能で、質問に対してAIが最適な回答を返してくれます。さらに詳しく相談したい場合は、リアルな弁護士と連携することも可能です。
また、AIを業務に導入するために必要となる知識を学んでいただけるよう、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)などに関するeラーニング研修も行っています。
士業とAIの可能性をかけ合わせ、新時代の事業を創出
ーー横山会長の経歴や事業立ち上げのきっかけをお聞かせください。
横山英俊:
Robot Consulting設立前は、投資家として活動していました。そのなかで社労士事務所の相談役を務めた時、膨大な作業の効率化や、蓄積された業務データの活用を考えるようになりました。そこで考え出したのが、士業とAIをかけ合わせたサービスです。こうして私は会社を設立し、AIと士業を融合させたシステムを開発しはじめました。
訴訟大国と言われる米国と違って、日本人は弁護士との距離が遠く、よほどのことがなければ弁護士に法律事務などを依頼することはありません。しかし、弁護士に依頼するほどではなくても、法律を参照したい場面はあるはずです。
私はAIがこの距離を縮めてくれる可能性があると考えています。まずAIに相談してもらい、本格的に相談したい場合は弁護士に取り次ぐ。弊社のサービスは一般の方と法律との懸け橋になれると確信しています。
ーー事業を行ううえで苦労したことは何ですか?
横山英俊:
現在、米国の株式市場NASDAQ(ナスダック)に上場する準備をしているのですが、米国の会計基準を学んだり、語学研修が必要だったり、日本と異なるルールなどへの対応で苦労しました。
特に苦労したのが資金調達です。NASDAQに上場している日本企業が少ないこともあり、投資家から投資を受けるためにビジネスモデルをご理解いただく点において苦戦しました。
しかし、弊社の事業はすぐに利益が出ないにしても、社会的なインフラになり得るという価値があります。この点をよく説明し、信頼を得ることに成功しました。
世界中の人たちが気軽に法律を活用できる未来
ーー5年後・10年後のビジョンを教えてください。
横山英俊:
現在は日本と米国を中心としたサービスを開発していますが、5年以内には『ロボット弁護士』のようなプロダクトを世界各国で展開したいと考えています。それと同時に、AIに世界中の法律を学習させて、世界中の法律家をつなぐネットワークの構築も目指したいです。
最終的には、世界中のどこにいても法的アドバイスが気軽に受けられる環境を実現したいと考えています。
積極的に世界へ出て、自分の可能性に挑戦しよう
ーー読者へのメッセージをお願いします。
横山英俊:
これから社会で活躍する皆さんには、ぜひ国内だけでなく、海外でも挑戦していただきたいです。日本のビジネスモデルは国内だけで完結しがちですが、AIの進化に伴ってビジネスのグローバル化は加速していくでしょう。
そういった将来的な視点からも、もっと世界へと出るべきです。海外には日本よりも市場が大きく、ビジネスに積極的な国がたくさんあるので、自分のビジネスがどこまで通用するのか、チャレンジしてみてください。
私たちが目指すのはテクノロジーを使った「法の民主化」です。誰もが法律を身近に感じられる、世界規模のネットワークの先にこそ、その世界があるはずです。
編集後記
社会で自由に泳ぐには、まずルールとなる法律を知る必要がある。横山会長の挑戦は、社会という海に浮標を浮かべてくれているようなものだ。横山会長は「法の民主化」という高邁な使命を帯び、広大な海を力強く泳いでいく。
横山英俊/1985年、宮崎県出身。2020年、株式会社Robot Consulting設立。ファウンダー兼代表取締役会長、SAKURA法律事務所アドバイザー、投資家