※本ページ内の情報は2024年12月時点のものです。

株式会社スーツは、中小企業向けのタスク管理ツール「Suit UP(スーツアップ)」を展開する企業だ。これは、同社の創業者が20年もの間、中小企業の経営支援に携わる中で、タスク管理のシステム化に着目して誕生した経営支援クラウドツールだ。

システム開発に至った経緯や、「大人スタートアップ」を謳う同社の特徴、自身が描く夢などについて、代表取締役社長CEOの小松裕介氏にうかがった。

中小企業の経営支援に関わる中で気付いたタスク管理の重要性

ーーまずは起業までの経緯をお聞かせください。

小松裕介:
大学卒業後は映画製作に携わりたいと思い、上場企業の映画会社に就職しました。しかし、2000年代前半は映画業界全体の業績が芳しくなく、図らずもその映画会社の事業多角化のためのM&Aや投資先の企業再生の仕事を担当することになったのです。

そして静岡県にある伊豆シャボテン動物公園グループの企業再生などの実績が認められ、社長に就任しました。こうして会社の黒字化に貢献したのですが、敵対的買収により社長を解任されてしまったのです。

その後これまで培った経験を活かそうと立ち上げたのが、企業の経営支援を行う株式会社スーツです。2022年には経営支援クラウド「スーツアップ」の立ち上げに伴い新設分割を行い、現在の形になりました。

ーー貴社のメインサービスである「スーツアップ」を開発した背景を教えていただけますか。

小松裕介:
これまで20年ほど中小企業の支援に携わり、多くのファンドやオーナーから経営に関する相談を受けてきました。そこで私が繰り返し伝えてきたのが「組織を創り、スタッフ間でコミュニケーションをしっかり取り、きちんとタスク管理を行うこと」です。

しかしあるとき、私はずっと同じアドバイスしか言っていないな、と気付き、それをシステム化すれば多くの企業の役に立つのではないかと思い、システム開発に着手したのです。

使いやすさを追求し、中小企業における業務効率の改善をサポート

ーー改めて貴社の事業内容についてお聞かせください。

小松裕介:
中小企業向けのチームのタスク管理ツール「スーツアップ」を提供しています。誰でも簡単に使えるタスク管理ツールを提供することで、中小企業の業務効率化を支援しています。

多くの中小企業では、タスク管理にExcelやスプレッドシートを使っています。しかし、これらの表計算ソフトには通知機能がないため、タスクの期限を守るためには、別途、担当者に対して確認の連絡をしなければいけません。また、既存のツールは入力項目が多く機能も複雑なため、導入しても途中で断念してしまうのです。

そこで、入力項目も最低限で操作がしやすく、タスクのリマインドをしてくれる通知機能を備えたタスク管理ツールを開発しました。さらに、このツールの特長はタスクの雛型機能があることです。この雛型は弁護士や会計士、経営コンサルタントなど、各業界のプロフェッショナルに制作をしていただきました。

業界特化のタスクの雛型もあって、例えば会計事務所向けの雛型があります。帳票類をお客様からご提出いただいてから税務申告を行うまでの一連のタスクの雛型があるので、会計事務所で働く方々からは、業務効率が大幅に向上したと好評を得ていますね。

ーー貴社ならではの強みはどこにありますか。

小松裕介:
経営陣に経験豊富なプロフェッショナルがそろっていることです。私自身も上場企業の社長を経験し、有名企業を再生した実績があります。執行役員CFOの高橋は、かつて厚生労働省のキャリア官僚で、監査法人での実務経験も持っています。

また、マーケティングの責任者である執行役員CMOの麻生は、大手化粧品メーカーでD2C事業の立ち上げをした経験があります。こうした各分野のエキスパートが集まっているのが、弊社の最大の強みと言えるでしょう。

ミドルエイジが大きな夢を追いかける「大人スタートアップ」

ーー貴社の社風について教えていただけますか。

小松裕介:
私たちは自分たちを「大人スタートアップ」と呼んでいます。弊社の経営陣は40歳前後のミドルエイジが中心ですが、大きな夢を描いて、その実現を目指し一生懸命に取り組んでいます。その一方で、日々の業務については、プロフェッショナルとしての知見や経験に基づいて、どんどん対応していっています。

このように大きな夢や熱い情熱を持ちながら、今までの経験を活かして目の前の問題をスムーズに解決できることが特徴ですね。そして、常に「正しいことを行う」ことを大切にしています。たとえば、きちんとお礼の連絡をするなど、一つひとつの業務を丁寧にこなす「凡事徹底」を心がけています。

一見地味に思えることを愚直に実行することが、企業の成長につながると考えています。

ーー小松社長の夢をお聞かせください。

小松裕介:
中小企業の業務効率化を通じて、日本経済を豊かにすることです。人口減少が進む日本の国力や経済力を維持していくためには、労働生産性の向上が重要なテーマだと考えています。

20年ほど経営支援をしてきた中で、多くの経営者が、経営者としての本来の役割、すなわち、マネジメント(経営管理)を十分に行っていないと感じています。それこそ大半の中小企業では、上司が部下に対して「これ、やっておいて」という曖昧な指示だけで業務が進められています。

それらの課題解決の一助となるべく、弊社のツールを通じて、組織を創り、コミュニケーションを改善し、適切なマネジメントを行えるように支援したいと思っています。

AI機能の実装でユーザーの使いやすさ向上を目指す

ーー今後の展望をお聞かせいただけますか。

小松裕介:
弊社が提供している「スーツアップ」を、タスク管理の標準ツールにすることが目標です。ゆくゆくは「タスク管理といえばスーツアップ」と言われるポジションを確立したいですね。

技術面に関しては、AIを活用したタスクの雛型制作の開発を進めています。現在でもプロが制作したタスクの雛型は5,000種類ほどありますが、これまでユーザが蓄積したタスク設定のデータをAIで分析し、さらに各業界や職種に適した雛型を提示できるようにしようと考えています。

この取り組みには、AI研究の権威である榊博士に技術顧問として参画いただいています。AIによってタスクの雛型の精度が高まることで、さらに簡単にタスクが設定できるようになります。とにかく簡単に操作できるツールにしたいですね。

また、日本経済の成長に貢献したいという私たちの思いを伝え、協力してくださる方を増やしていきたいと思っています。創業したばかりのベンチャー企業で知名度が低い分、この大義名分を掲げ、社内外にアピールしたいと思っています。

ーー最後に読者の方々へのメッセージをお願いします。

小松裕介:
弊社では中小企業の業務改善という20年、30年かかる中長期的な社会課題の解決に向け、一緒に取り組んでくれる方を求めています。スタートアップで一番大切なのは、「お客様の悩みを解消したい」という気持ちだと思っています。

そのため「中小企業の課題解決に貢献したい」という、強い志を持った方をお待ちしています。

編集後記

新卒で入社した会社で経営の立て直しに携わることになり、そこから経営支援の道を歩んできた小松社長。中小企業の業務改善という大きなテーマを掲げ、日々の業務に邁進する姿からは、日本を良くしたいという強い思いを感じた。タスク管理を軸に業務効率化を支援する株式会社スーツは、きっと今後の日本企業になくてはならない存在とになるに違いない。

小松裕介/1981年、神奈川県生まれ。中央大学を卒業後、ソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現:伊豆シャボテンリゾート株式会社)に入社し、2013年に代表取締役社長に就任。同社グループを黒字化に導く。2014年に、現在の「株式会社スーツ」の前身である株式会社スーツを設立し、代表取締役に就任。2020年に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。2022年に株式会社スーツを新設分割し、代表取締役社長CEOに就任。