IoTとAIが織りなす次世代の住空間、スマートホーム。この領域で独自のプラットフォームを構築し、業界を牽引するのが株式会社アクセルラボだ。同社が開発した「SpaceCore(スペース・コア)」は、多種多様な設備や家電を一つのアプリで操作できる汎用性と使いやすさを誇る。さらに、IoT制御システムの「alie+(アリープラス)」も自社開発した。これらの強みを活かし、住宅からホテル、介護施設まで幅広い分野でスマート化を推進している。
スマートホーム黎明期に「必ず世の中に不可欠なものになる」と、いち早くスタートアップを果たした同社の代表取締役CEOの小暮学氏に、創業や事業、人材への思いを聞いた。
スマートホームのプラットフォームとソリューションを自社で確立
ーー貴社の創業に至るまでの経緯をお聞かせください。
小暮学:
私は不動産投資会社でキャリアを積んだ後、27歳のときに用地取得から設計建設、販売管理までを行う不動産デベロッパー、株式会社インヴァランスを設立しました。
自社物件は、基本性能やデザインにこだわっていましたが、より利便性を追求するべくアイデアを求めてアメリカへの視察を重ねました。そこで、当時アメリカでは既に普及が進んでいたスマートフォンと連動するスマートホームに出会ったのです。あらゆるものがIoTによってつながる心地よさに驚きましたね。
帰国後すぐにスマートホームの部署を立ち上げて日本の生活に合ったプロダクトを開発し、物件に導入しました。その結果、入居者の方に大変喜ばれました。大きな手応えと可能性を実感し、スマートホーム専門の弊社を設立したというわけです。
ーー貴社の柱となっている事業は何ですか。
小暮学:
「SpaceCore」という独自のIoTプラットフォームによるスマートホームサービスが弊社の根幹ですね。日本の住宅は設備も家電もメーカーも多種多様なうえ、それぞれにデバイスやアプリが存在します。「SpaceCore」はこれらすべてを1つのアプリでコントロールできる汎用性とユーザビリティが特徴で、連携可能なデバイスやアプリは業界最大級を誇ります。また、IoT機器の制御や機器間の連動のために「SpaceCore」にも搭載が必要なIoTエンジン「alie+」も独自に開発し、提供しています。
ーー独自のプロダクトを持つ強みについて教えてください。
小暮学:
弊社のようにIoTプラットフォームやエンジンを開発・運用している会社は稀だと思います。「instatech(インスタテック)」というグループ会社を全国に展開し、導入・運用アドバイスから設置・施工、アフターサポートまで対応しています。
また、「BtoBtoX」と呼ばれるビジネスモデルにおける真ん中のBにあたる設置・施工者の方へのサービス提供も行っています。IoTの設置には、通常の電気・配線工事にはない、プロトコルやデバイス、アプリの調整などが必要ですが、弊社はICTの知識や技術面での支援も可能です。こうしたワンストップサービスによって、すべてのお客様に貢献できることが弊社の強みです。
社会課題にもアプローチ。チャレンジを楽しめる人が理想の人材
ーー現在は、どのようなことに注力していますか。
小暮学:
急ピッチで取り組んでいるのはスマートホームの世界標準規格「Matter」に対応できるゲートウェイとソフトウェアの開発です。「SpaceCore」「alie+」に蓄積されたデータの活用やAIの開発も進めています。
「SpaceCore」においては施設・設備の自動化に加えて、カメラやスピーカーなどとの連携で可視化やセキュリティ強化が図れるので、人手不足の解消に寄与し、保安・保全が必要な分野における導入件数が増加していますね。
たとえば、ホテルのフロント業務の無人化や、介護施設の巡回などの省人化です。不動産分野では無人内覧や、災害や事故など非常時の迅速かつ遠方からの状況確認も可能になるでしょう。こうした新領域への進出や、社会課題の解決および、危機管理を担うためのプロダクトの開発やアップデート、各業界のDXにも力を注いでいます。
ーー貴社で活躍するために必要なスキル、マインドについて教えてください。
小暮学:
人口減少や働き方改革を背景に、無人化・省人化が実現する「SpaceCore」の活用方法は無限だと捉えています。住宅にフォーカスすると、スマートホームの導入率はアメリカの約50%に対して日本は10%にも満たない水準ですが、日本の住宅世帯数は5000万戸を超えるため、巨大なマーケットであることは間違いありません。
このチャンスに満ちた領域で成功したい、今までにないプロダクトを構築したいというチャレンジ精神が旺盛な人が弊社に向いていると考えます。ICT未経験者でも教育制度が整っているので、エンジニアとして活躍しているスタッフも多いですね。もちろんスキルも大切ですが、まずは何より弊社が大切にしているバリューに共感してくれることが大切だと思っています。
アクセルラボのスマートホームを日本のスタンダードに
ーー貴社が目指す未来について教えてください。
小暮学:
アクセルラボは「IoTを、日本のあたりまえに。」というビジョンを掲げています。弊社のプロダクトやサービスによって、人や暮らしをより心地よく、日本が直面する課題を解決し、より豊かな社会に貢献していきたいと考えています。
現在のスタッフだけでなく今後の採用によってこれから出会う新しいスタッフとも弊社の価値観を共有し、スマートホームというブルーオーシャンの先頭をともに航行していきたいですね。
編集後記
10代の頃から起業家になることを目指していた小暮社長。夢を達成した先には、人や暮らし、社会を進化させていくという壮大なミッションが待っていたのではないだろうか。まだスマートホームを知らない人たちにその価値を届けるべく、小暮社長は挑戦を続けていく。
小暮学/1976年生まれ。不動産投資会社の営業職を経て、2004年、株式会社インヴァランスを設立。総合デベロッパーとして東京都内の投資用マンションにおけるリーディングカンパニーへと成長させる。2017年、株式会社アクセルラボを設立。空間とテクノロジーの融合を掲げ、スマートホームサービスなどの事業を展開。