
ミライト・ワングループの中核としてITシステムのライフサイクルを一貫支援する、株式会社ミライト・ワン・システムズ。同社は、成り立ちの異なる6つの組織を統合し、2022年に始動した。この大連合を率いるのが、代表取締役社長の田村亮彦である。NTT時代に営業ノウハウゼロから200億円事業を築き上げ、その経験を胸に「挑戦」をキーワードとして掲げ、競合にはない「提供価値」の創出を目指す。今回は同氏が描く、企業の成長戦略と未来像に迫る。
ゼロから200億円事業へ 挑戦の原点が築かれた軌跡
ーーまずは、これまでのご経歴についてお聞かせください。
田村亮彦:
1985年にNTTへ入社し、35年間在籍しました。その後株式会社ミライトへ移籍し、約2年間の準備期間を経て、2022年に弊社が設立されたタイミングで代表取締役社長に就任した形です。NTT時代はソフトウェア開発や社内システムの基盤構築に長く携わっていましたが、部長職以降の約20年間は金融業界のお客様を担当し、これが私の大きな転換点となりました。
ーーNTT時代のご経験から社長就任に至るまで、特に大きな挑戦となった出来事についてお聞かせください。
田村亮彦:
NTTで課長職を務めていた時期、社内にあるソフトウェア開発本部を分離する独立会社の立ち上げに参画していました。その会社には営業経験者がほとんどおらず、それまで社内のシステム開発部門であったため、お客様もゼロの状態からのスタートでした。しかし、協力的なパートナー企業の方々や、支えてくれたメンバーの頑張りもあり、金融システム部門を約20年で年商200億円の事業へと成長させることができたのです。
その実績が認められミライトへ移籍し、今度は6つのソフトウェア開発組織を一つに束ねる、いわばソフトウェアの大連合をつくるというミッションに挑むことになりました。そして2022年の社長就任時には、設立後5年間で売上高を2倍にするという大きな目標を掲げました。さらに、エンジニアの数に依存しないビジネスモデルである「非人月ビジネス」の比率を20%まで高めることも目指しています。
「提供価値」の最大化へ 挑戦を続ける組織文化
ーー改めて、貴社の事業内容と強みについてお聞かせください。
田村亮彦:
弊社の事業は、ITシステム分野における上流のコンサルティングからシステム開発、基盤構築、さらには運用保守に至るまで、ITシステムのライフサイクルを一貫して支援することです。その中で最も重視し、会社の強みとして徹底的に追求していこうとしているのが「提供価値(バリュープロポジション)」です。
これは「お客様が求め、弊社が提供でき、かつ競合会社には提供できない価値」を指します。競合も提供できる価値では、価格競争に陥るしかありません。弊社ならではの価値でご指名いただく。そういった分野をどれだけ多くつくれるかが重要だと考えています。
そして、その提供価値を生み出す源泉こそが、社員一人ひとりの「挑戦」です。この「挑戦」は弊社の採用活動においてもキーワードになっています。習得が困難で複雑な業務領域へ果敢に挑戦し続ける先に、他社が追いつけない提供価値が生まれると信じています。
ーー新しいサービス開発においては、どのようなことを意識されていますか。
田村亮彦:
思いつきのアイデアで開発しないことを意識しています。ターゲット分野の専門家になった上で、世の中のサービスを徹底的に調査し、それでもなお提供されておらず、お客様が必要とするものを見極めて開発するよう伝えています。また、社内では若手社員を中心に「DX&KAIZENコンテスト」を実施し、AIなどの先進技術に触れ、新しい価値創造を体験する機会も設けています。
ーー今後の成長に向けて、採用に関するお考えをお聞かせください。
田村亮彦:
これからの時代、プログラム開発はAIに代替される部分が増えるでしょう。もちろん情報系の人材も必要ですが、それ以上に、世の中の仕組みやビジネスモデルをしっかり描ける人材が不可欠です。ですから、文系学部出身の方や体育会で活躍された方など、多様なバックグラウンドを持つ人材に大いに期待しています。
「この分野なら日本一」と評される未来へ

ーー今後のビジョンについてお聞かせください。
田村亮彦:
お客様から「この分野は、誰が何と言ってもミライト・ワン・システムズが一番強い」と言われる会社になることが目標です。そのために「選択と集中」を徹底し、各事業本部がターゲット分野・業務を明確に定めることで、リソースを集中させていきます。
加えて、お客様の事業成長に貢献できる提案力の強化も欠かせません。私自身がファシリテーターとなる営業合宿や月1回の営業推進会議および各事業本部との提案戦略に関するディスカッションを実施しています。さらに、担当者とお客様先へ同行して弊社の価値を直接アピールする姿を見せ、実体験から学んでもらう機会を増やしていきたいと考えています。
これからもお客様のニーズにお応えし、社会に貢献できる企業であり続けるために、努力していく所存です。
編集後記
NTT時代にゼロから事業を築き、6社統合という難事を経てミライト・ワン・システムズを率いる田村氏。その言葉の根底には、常に「挑戦」という確固たる信念があった。困難な領域にこそ商機を見出し、競合が真似できない「提供価値」を追求する姿勢は、変化の激しいIT業界を勝ち抜くための確かな羅針盤となるだろう。「この分野なら日本一」と評価されることを目指し、飛躍する姿をしっかり見届けたい。

田村亮彦/1962年、兵庫県生まれ。1985年、早稲田大学理工学部卒業。同年、日本電信電話株式会社(現・NTT株式会社)に入社。2014年、NTTコムウェア株式会社(現・NTTドコモソリューションズ株式会社)取締役に就任。2020年、株式会社ミライトへ移籍。2022年に株式会社ミライト・ワン常務執行役員 兼 株式会社ミライト・ワン・システムズ代表取締役社長に就任。