
テレビCMや新聞、雑誌の広告が主流だったところから、ネット広告が台頭し、広告業界の様相は一変した。こうした中、顧客データをもとにしたデジタルマーケティングを駆使し、効果的な広告支援を行っているのが、株式会社KIYONOだ。
数々の最年少記録を樹立した前職での経歴や、起業のきっかけとなった広告業界が抱える課題などについて、代表取締役社長CEOの清野賢一氏にうかがった。
入社3年で営業部長に昇格し、30歳で取締役に就任
ーーまず清野社長のこれまでの経歴についてお聞かせください。
清野賢一:
新卒で入社した会社を1年で辞め、インターネット広告会社に就職しました。当時はインターネット広告の黎明期で、お客様からのニーズがあり、とにかく営業したら売れるという時代でしたね。
また、前の会社を1年で辞めてしまったため、今度こそ結果を残そうと積極的に営業活動をしました。その結果、入社から1年で200件ほど新規取引を成約させたのです。この成果が認められ、入社3年目で営業部長に昇格すると、その後はサービスの開発を行うテクノロジー部門の部門長も務めました。
営業とテック部門をそれぞれ3年経験し、30歳になったタイミングで、起業を意識するようになったのです。そんなときに、会社が新しくデータプラットフォーム事業を立ち上げることになり、その子会社の取締役、のちに代表取締役に任命されました。業務内容に興味があったのと、経営を学ぶ機会だと思い、自分の起業は保留にしました。
その会社では顧客の消費データを収集し、それをもとに販売戦略を立てる業務に携わりました。SNS広告のクリック率を測定し、消費者の購買行動をリサーチすることでマーケットの仕組みを知ることができ、とても興味深かったですね。
広告業界の課題を解消するため起業を決意

ーーそこから起業に至った経緯を教えていただけますか。
清野賢一:
私が所属していた子会社が5年半でクローズすることが決まったことで、再び起業に目を向けるようになったのです。自分で事業を立ち上げ、広告業界が抱える構造的な課題を解決したいという思いもありましたね。
2005年当時は日本の広告費のうち、テレビメディア広告費がおよそ2兆円、インターネット広告費は5,000億円でした。しかし現在では、インターネット広告がおよそ3兆3,330億円なのに対し、テレビメディア広告費は1兆7,000億円と逆転しています。
私は長年インターネット広告業界を見てきて、テレビメディア広告を上回ることは以前から予測していました。そのため、見込み客を購買まで導く顧客育成や、顧客情報の管理や分析、CRM(※1)の重要性も実感していたのです。
さらに、脱Cookie(※2)の流れにより広告測定がしづらくなっています。そのため、すでに広告会社が報告する広告のクリック率や成約率と、実際の売上との数字の乖離が起きている状況です。こうした業界におけるイノベーションのジレンマを解消したいと思い、株式会社KIYONOを立ち上げました。
(※1)CRM:カスタマーリレーションシップマネジメントの略。
(※2)脱Cookie:個人情報やプライバシーの観点から問題視され、「サードパーティCookie」の利用が段階的に廃止されること。
顧客情報を一元管理し、効果的な広告運用で集客効果を向上
ーー改めて貴社の事業内容を教えてください。
清野賢一:
広告による新規顧客獲得と、CRMによる顧客育成、そしてCDP(カスタマーデータプラットフォーム)による顧客データの統合・分析の三位一体でアプローチしています。
オンラインとオフラインの顧客データを統合し、一人ひとりに最適なコミュニケーションを実現することで、企業の売上向上に貢献しています。たとえば、オンラインとオフラインで別々に顧客情報を管理する場合、コールセンターから電話が来て、さらにメールやアプリからの通知も来る状態になります。
これでは1人の顧客に対し、1日に何度も同じ情報を送ることになります。そこで、顧客情報を一元管理することで、最適な配信ボリュームで消費者にPRができ、顧客ロイヤリティ(顧客が企業に対して抱く愛着や信頼度)の向上につながるのです。
ーーデジタルDX領域に参入する企業が少ないのはなぜなのでしょうか。
清野賢一:
端的に言えば、収益性の問題です。顧客育成やCRMはとても手間がかかる割に、収益性が低いのが特徴です。そのため、収益にすぐに反映されるテレビや動画広告に注力している企業が多いのです。
ただ、広告業界全体の市場規模は6〜7兆円の間で留まっているため、あとはパイの奪い合いです。さらに人口減少により日本経済の停滞が予測されるので、競争はさらに激化していくでしょう。これから広告業界で勝ち残っていくには、マーケティングと顧客育成、顧客情報の管理・分析の両輪で回していくことが不可欠だと考えています。
マーケティングDXで業界の先頭を行く企業へ
ーー貴社が求める人物像を教えていただけますか。
清野賢一:
弊社は高付加価値なサービスを提供したいと考えており、それにコミットできる人材を求めています。自分が得た職能を活かし、自ら行動し、事業の発展に貢献していただける方に来ていただきたいですね。
ーー今後の展望をお聞かせください。
清野賢一:
今後は三位一体戦略を進めるため、AIによる業務の効率化やSNSの短尺動画領域への参入、開発体制を強化します。
その一環として、ベトナム・ハノイの開発会社との資本提携も実施しました。こうしてエンジニアリングを拡大することにより、安価かつ高品質なサービスを提供できる体制を整えています。
ーー最後にメッセージをお願いします。
清野賢一:
2027年までにデータマーケティング日本一、そしてAIカンパニーとして世界一を目指します。
マーケティングDXに特化した事業運営を行っているのは、弊社ならではの強みです。お客様の目線に立って最適なサービスを提供する弊社の需要は、これからさらに高まるでしょう。弊社の事業内容に興味を持たれた方、これから成長が期待できる業界で活躍したい方はぜひお越しください。
編集後記
広告業界の構造に違和感を持ち、課題を解消するため起業を決意した清野社長。話を聞く中で、自らの手で業界のあり方を変えたいという強い信念を感じた。顧客データをもとにした効果的な広告戦略で企業の利益の最大化に貢献する株式会社KIYONOは、業界の変革者となることだろう。

清野賢一/2005年に株式会社オプトに入社、2008年にテクノロジー部門長に就任。2011年データマーケティング会社PlatformIDの取締役を経て代表取締役に就任。2017年に株式会社KIYONOを設立。2019年にはOracleの最優秀パートナー獲得、2020年住友商事100%子会社のSCデジタルと資本業務提携、2024年大日本印刷と資本業務提携をし、企業のデジタルマーケティング活動を支援している。