
2013年に設立された株式会社SNSソフト。ITインフラの設計・構築を中心としたエンジニア人材の派遣サービスと、ITソリューションの提案力によって、取引を拡大してきた成長企業だ。さらに、人工知能(AI)の研究、金融システムや光触媒製品の開発など、その事業は多岐にわたる。代表取締役の孫前進氏に、創業の経緯や事業にかける思い、今後の展望をうかがった。
システムエンジニアの知見と失業体験を糧に起業
ーー貴社を設立するまでの流れをお話しいただけますか。
孫前進:
中国の大学を卒業した後、留学生として来日しました。1年間は研究生としての活動と、千葉大学大学院の試験勉強を並行したのち、修士課程に進みました。その後は大学時代にプログラム言語を少し学んだことから、2社のIT企業に在籍し、多種多様なシステム開発を経験しました。
起業するきっかけとなったのは、2009年のリーマン・ショックによる失業です。家族を巻き込む形で苦しい生活を送る中で、「二度と失業したくない」という思いから、自分で会社を作ることを決めました。そこから経営の知識を身につけ、2013年に弊社を設立した次第です。
ーー経営において苦労した点はありますか?
孫前進:
売上が3億円を超えた頃に、成長の踊り場に差し掛かりました。上場を含む次のステージへ行くためには、個人事業的な経営から脱皮しなくてはいけないと気づいたのです。
会社に必要な機能を改めて分析し、お客様との信頼関係の構築、人材の採用と育成、営業力の強化、人事部門の内部統制、経営の見える化などを含めた14個のテーマに一つずつ取り組んでいきました。その努力が実り、創業9期目で強固な顧客基盤を獲得できたのです。
人材の個性を大切に、多彩なITソリューション&開発事業を展開

ーー現在の事業内容を教えてください。
孫前進:
主力サービスは、ITエンジニアの派遣・受託業務を行うSES(システムエンジニアリングサービス)です。そのほか、ITソリューション事業、AI事業、金融システム開発事業、光触媒事業を展開しています。
お客様のお悩み解決を目的としたITソリューション事業では、自社パッケージの開発や完全受託開発、町工場のDXなどを請け負っています。2024年以降はソリューション開発を加速させるAI技術の研究にも注力し、AI面接・AI弁護士といったシステムや相続手続きの自動化サービスを企業様向けに開発してきました。
千葉大学と共同開発中の光触媒事業では、新たなソリューションや製品の開発、インフラ事業への展開を視野に入れています。新型コロナウイルスを99.6%不活化させた試験データもある確かな研究として、除菌脱臭機の開発をはじめ、引き続き社会貢献につなげる取り組みを続けていきます。
ーー大切にしている考えや思いもうかがえますか?
孫前進:
経営者として「社員の雇用を守る」という意識が強くあります。長い歴史を持つ会社や大手企業でも、倒産の可能性はゼロではないからこそ、会社を存続させるために新しい技術を勉強し続けなければと考えています。
SES事業においては、すべての人材を大切にすることを意識しています。仕事の成果には個人差が出るものですが、誰にでも必ず得意分野がありますから、入社してくれた人材を出来る限りフォローして、個人の強みを活かせる会社でありたいと思うのです。
人材をフォローする一環で導入した社員向けカウンセリング制度は、弊社の特徴の一つです。SES業界には、派遣した人材がチーム内で上手くコミュニケーションを取れないケースがあります。弊社では人材を孤立させないために、安心感を与えられるフォロー体制を築き、社員の希望に合わせて現場も訪問します。社員を大切にする気持ちは、経営のコアであると言っても良いでしょう。
中小企業の生産性を上げる「AI技術」をコアにさらなる高みへ

ーー求める人物像も教えていただけますか。
孫前進:
真面目で向上心が高く、「会社と共に成長したい」と思う方に来ていただきたいですね。自身の経験からも、仕事を通して成長すれば、将来の自分や家族にとって良い結果が訪れると言い切れます。昔と今の私では、人生における考え方も変わりました。
たとえば、世の中のあらゆる問題には99%の確率で解決方法があると考えています。自分が知らない分野があれば、知識を持つ人を探して、答えに辿り着く力も人材に求めるところです。
ーー今後の展望をお聞かせください。
孫前進:
社員数を増やしつつ、既存顧客との関係維持と新規顧客の開拓を進めていきます。そして、5年後には年間売上35億円を達成したいと思っています。弊社は中国人のIT経験者を中途採用し、私や役員たちの人脈で取引を広げてきましたが、今後は新卒者や営業経験者も積極的に採用したいところです。
近年は、DXを促進したい中小企業様にITの専門性が求められています。IT事業のコア技術としてAI技術を導入し、生産性を上げることで日本の中小企業をより発展させていく。この構想の実現に向けて、ビジネスネットワークを広げると同時に、社員たちのAI研究にも、より一層注力していきます。
編集後記
細かい分析と戦略立て、実行までのスピード感、そして常に学び続ける姿勢。まさに理想の経営者像を体現している孫氏の根幹には、失業という実体験にもとづく「雇用を守ること」への使命感があった。事業の基盤を大切にしながらも、変革し続けるSNSソフトは、安心と成長の場を求める人にとって間違いなく魅力的な環境だ。

孫前進/1977年生まれ。中国・陝西省の西安建築科技大学建築構造設計学科を卒業。千葉大学大学院の自然科学研究科デザイン設計工学の修士課程を修了。ITエンジニアとして、株式会社フルキャストテクノロジー、サイノコム・ジャパン株式会社に勤務。2013年、株式会社SNSソフトを設立。代表取締役に就任。