※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

2016年の設⽴以来、「⾳声✕テクノロジー」の可能性を世の中に広め続けている株式会社Voicy。動画視聴サービスが乱⽴する中で、あえて「⼈の声を届ける」という事業に価値を⾒出したスタートアップ企業だ。代表取締役CEOの緒⽅憲太郎⽒に、設⽴の背景や業界が持つ可能性をうかがった。

新たな会社を設⽴した背景「普通の会社はつくらない」

ーーどのような背景で貴社を設⽴されたのでしょうか。

緒⽅憲太郎:
ベンチャー企業の⽀援家として多くの会社を⾒てきた経験から、私の中にはただ普通の会社をつくるという思いはありませんでした。⼈々の⽣活を⼤きく変え、社会のインフラを形成し、⽇本全体を⼀新するようなサービスを作りたいと思いました。

国内のプラットフォームは海外に飲み込まれているものが多かったので、「業界全体を網羅する⽇本発のプラットフォームをつくろう」という思いもありました。そして、⽬で楽しむコンテンツは豊富なため「⽿の世界」でトップになろうと、⾳声配信のサービスを考えたのです。

スタートアップの道のり――課題を乗り越え、価値を創造する

ーー起業の際にご苦労された点はございますか。

緒⽅憲太郎:
まだ世の中にニーズがない分野だったためマネタイズの⽅法が不明で、投資家の⽅には「私を信⽤してください」とお願いするしかありませんでした。

競合のいない市場では、市場規模が⼤きくならないので、弊社が新しい⽂化をつくった上で他の会社が参入して市場を広げる、という流れをつくりたかったのです。また、そういう事業をやる会社が⽇本に増えてほしいのですが、理解を得ることは⼤変でした。

ユーザーの評価も始めはそれほど⾼くなく、周りからは「売れるかわからないプロダクトをつくっている趣味のチーム」といった扱いを受けることもありました。

ーー事業を諦めなかった理由もお聞かせください。

緒⽅憲太郎:
「確実に成功するからがんばる」という思考では⼈⽣を楽しめないのではないでしょうか。私は会社や⼤学選びでも「⾃分が⼊れるレベル」より「⾏きたいところ」を優先します。上⼿くいくかどうかではなく、「そこに⽣まれている価値」を信じることも⼤切です。

⼈と話す、様々な話を聞くことに日常的に価値を感じる⼈はいるのですから、それを新たな価値にできないうちは⾃分たちのビジネス⼒が不⾜しているだけだという思いでやってきました。

オーディオコンテンツ産業の成⻑と未来を語る

ーー貴社の特徴や商材の魅⼒をお聞かせ下さい。

緒⽅憲太郎:
スマホで楽しむ段階を超えて、「スマートフォンの次の時代をつくる」という⻑期ビジョンは弊社の特徴の1つです。いずれは、隣で人がずっと話してくれる状態で、画⾯を⾒なくても⽣活できる時代になると考えています。

『Voicy』にはラジオやポッドキャスト、オーディオブックなどがあり、「⾳声の総合プラットフォーム」となっています。パーソナリティ(個⼈)が発信するボイスメディア、⾳声ニュース、ボイスドラマの3つは弊社の強みであり、特にボイスメディアは「声のブログ」とも呼ばれる独⾃のサービスです。

声を魅⼒としたインフルエンサーがたくさん⽣まれ、コンテンツを購入するユーザーも増加し、新たな産業を創出することができたと⾃負しています。

ーーどのようにサービスが広がっていったのでしょうか。

緒⽅憲太郎:
アンダーグラウンド化やサブカル化を避けてメインのプラットフォームをつくる場合、他産
業から出稿してもらい、経済が動くことで初めて産業として成り⽴ちます。

企業の皆さんがVoicy向けのコンテンツをつくったり、パーソナリティの皆さんが企業とVoicyでコラボしたり、そうした⼟壌づくりを⼤切にしてきました。Voicyはリスナーのエンゲージメント(関わり)がかなり⾼くなるプラットフォームなので、法人に利⽤いただく機会は増加し続けています。

今までは時間に余裕のある⼈が発信していましたが、音声は忙しい⼈ほど発信しやすい手段になり得ます。将来的には「⽿の世界」におけるロールモデルが⽇本でも多様化し、⼈⽣を豊かにする情報を⽿から気軽に得られるようになるでしょう。

従業員エンゲージメントを探る――⼈⽣を楽しむ働き⽅

ーー貴社で活躍できるのはどのような⽅でしょうか。

緒⽅憲太郎:
社員には「ギブファースト」のプロフェッショナルを⽬指してほしいと伝えているので、⼈が喜ぶためにがんばれる⼈や創意⼯夫ができる⼈は弊社で活躍すると思います。

会社における最⼤の福利厚⽣は「⼀緒に働く社員」です。もし今の会社に憧れる先輩が少ないと思っている⼈は、上に⾏くほど仕事が⾯⽩くなる弊社を魅⼒に感じるのではないでしょうか。

ーー読者に向けたメッセージもお願いします。

緒⽅憲太郎:
本気で⽇本の社会を変えるという⽬標のもと、他に類を⾒ないスタートアップをつくり上げることを目指しています。そのため、我が社に似通った企業は存在しないと信じています。せっかくの⼈⽣なのだから、社会に良い意味で多くの“⽖痕を残す”挑戦がしたい、それ⾃体が弊社のミッションです。

⼈⽣の多くを占める仕事は本気でやればやるほど⾯⽩いですよ。共感していただける⽅は、弊社に限らず「本気になれる環境」を提供してくれる会社で⼈⽣を楽しんでください。

編集後記

気軽に楽しめるエンタメはもちろん、暮らしを豊かにするコンテンツも充実してきた「⽿の世界」。かつてラジオの登場によって⽇本の情報伝達や娯楽が急変したように、緒⽅社⻑が想像する「⾳声✕テクノロジー」業界の未来は明るく、まったく新たな価値を私達に与えてくれるに違いない。

緒⽅憲太郎(おがた・けんたろう)/株式会社Voicy代表取締役CEO。⼤阪⼤学基礎⼯学部卒業後、同⼤学経済学部を卒業。公認会計⼠の経験を積んだのち、ベンチャー企業の⽀援家を経て2016年に株式会社Voicyを創業。現在は累計36億円を調達し、会員登録者数200万⼈が利⽤する⾳声総合プラットフォームへと成⻑。