※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

このところ菓子市場の中でもグミの成長は目覚ましく、小売販売推計金額は2022年782億円から翌年971億円と24.1%伸長。(※)子供から大人まで幅広い層に人気となっている。

キャンディメーカーとしてトップシェアを誇るカンロ株式会社(1912年創業、東京都新宿区)は社名の由来ともなった「カンロ飴」を主軸に、長きにわたって業容を拡大し、時代に合わせて進化しながら業界を引っぱってきた。ハードキャンディだけではなく、「ピュレグミ」といったグミも人気商品として注目を集めている。

キャンディ業界全体の好調と連動するように、カンロの業績も上昇傾向。2022年度の売上高251億円に対して2023年度は290億円を計上。15%超の増加となり、3期連続で増収増益を果たしている。

好調の背景になにがあるのかを知るため、2023年から総指揮を執る代表取締役社長の村田哲也氏に、プロフィールや経営方針について話を聞いた。

(※)流通ニュース「菓子市場/22年は1兆2086億円、グミキャンディが過去最高へ」

食品ビジネスに関わった豊富なキャリアを携え社長に就任

ーー貴社に入社するまでの経歴をお聞かせください。

村田哲也:
1992年に大学を出て三菱商事に入社し、菓子や飲料など食品流通事業を担当しました。国内取引だけでなく貿易業務も経験しながら、入社以来ずっと食品に携わっていました。

2011年から量販店のライフコーポレーションに約5年間出向しています。前半は首都圏のスーパーバイザー100人ぐらいを束ねる責任者を担当し、後半は営業本部長の立場で首都圏エリアを統括していました。

その後は三菱商事に戻り、生鮮品や事業会社管理を担当しています。そして同社がカンロの筆頭株主ということもあり、2019年に弊社の社外取締役として入社しました。

そして2023年1月に代表取締役に就任したという経緯です。

ーー各事業の内容をご紹介いただけますか。

村田哲也:
2022年から2年間、コア事業とグローバル事業、デジタルコマース事業、フューチャー・デザイン事業という、大別して4つの事業を推進してきましたが、今年から内容を一部再編しています。

新しい組織では、1つ目にコア事業で飴・グミの国内販売。2つ目のグローバル事業は文字通り海外展開。3つ目はヒトツブ事業で、「ヒトツブカンロ」の店舗運営を行っています。最後の4つ目はデジタルコマース・フューチャーデザイン事業です。

4つ目のデジタルコマースは「Kanro POCKeT(カンロポケット)」というEC機能を持つ弊社デジタルプラットフォームを軸にEC事業を展開する部署です。フューチャーデザインは既存事業にとらわれず、新しい取り組み、とりわけ「サステナブル」と「ウェルビーイング」の実現を目指す事業です。

パーパスに則した行動を徹底する

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか?

村田哲也:
商品開発方針は「素材を生かすこと」「キャンディならではの機能性」の2軸で取り組んできています。そうした菓子・食品としての開発コンセプトがベースにあり、なおかつ生活者の方々に安全安心な商品を提供するために、品質保証体制への配慮も欠かしません。

素材を生かし、健康にも留意した商品をお客様に提供する。各工場ではその使命感を持って生産を行っています。営業拠点もその使命感を持って販売を行っています。このようなことを誇りに思う社員が、責任感をもって一生懸命に製品をつくり上げていることが最大の強みといえます。

ーー貴社のアピールポイントを教えてください。

村田哲也:
まず第一に「おいしい」ということですが、それだけではなく、パッケージのユニークさといったデザインやその他の情緒的な要素にも注目してほしいですね。

主力の「ピュレグミ」や噛み応えのある個性派の「カンデミーナグミ」など、どれをとっても人にワクワク感を与えるような楽しい商品を提供しています。

飴業界のパイオニアとしてのブランド意識を大切にしながら、生活者の方々には安心を感じてもらうことが重要であり、このような使命をもてることは、とても喜ばしいことと思います。

ーーパーパスやクレドへの思いをお聞かせください。

村田哲也:
弊社には元々、「信義誠実」、「百万一心」、「創意工夫」という考え方があり、この3つをクレドとして掲げています。

そのバトンを受け継いできた中で、コロナ禍の経験をもとに存在意義、中長期的な方向性をもう1度整理していくことが、困難を乗り越えるうえでの力になると考え、役員、社内の各部署のスタッフが集まり、話し合いの場を設けて、2022年にパーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ大きくなる。」を策定しました。

パーパスをただ掲げるだけではなく、それに照らされている私たちがパーパスに即した行動ができるように実践することが重要だと認識を新たにし、また振り返りも行っています。

「顧客起点」を強化し、ブランド価値を引き上げる

ーー経営ビジョンについてはどのようなことをお考えですか。

村田哲也:
「顧客起点」を2024年の経営方針に掲げています。改めてお客様の立場に立つことの重要性を認識しています。「顧客起点」のためには、変わりゆく消費者の行動や取り巻く環境変化に対して、敏感になり、柔軟に対応しなければなりません。そして「ブランド基軸経営」を実現するためにも、顧客を知り、理解し、提供価値を高めつづけていく必要があります。

ーー読者の方に伝えたいことをお聞かせください。

村田哲也:
弊社には「成長の種」がたくさんあると感じていますので、それら種の中から一つでも二つでも花を咲かせていきたいと考えています。

そのためにも、働いている社員が「こんな事業があって、こんなことができるんだ」と、ワクワクするような環境を提供していきます。社員が前向きに新しい仕事にチャレンジしたりチャンスをつかんだり、それを通じて自信を持ったりしてもらえるような取り組みを、どんどん増やしていきたいですね。

編集後記

若者や多種多様な人が集まる原宿で、新しい文化の創造・発信を目指す商業施設、東急プラザ原宿「ハラカド」1階に2024年の4月、「ヒトツブカンロ原宿店」を出店した同社。

若者や多種多様な人が集う街に出店することで、多感な感性をビジネスに活かす継続的な取り組みを行い、社員の柔軟な思考の育成も目指している。

「カンロ飴」で一世を風靡した企業が、まだ見ぬ未来に向けてどこまで進化を続けていくのか、楽しみは尽きない。

村田哲也/1969年生まれ、愛知県出身。1992年、慶應義塾大学法学部を卒業、三菱商事株式会社に入社。2011年、株式会社ライフコーポレーションに出向、2012年、執行役員、2015年、上席執行役員に就任。2016年、三菱商事株式会社生鮮品本部戦略企画室室長、2018年、生活流通本部食品流通部部長に就任。2019年、カンロ株式会社社外取締役、2021年、執行役員、2022年、取締役執行役員を経て、2023年1月から現職。