※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

昨今では、入居者に無料でインターネットを提供する、マンション全戸一括型インターネットサービスが普及している。

このサービスを業界でいち早く始めたのが、株式会社ファイバーゲートだ。同社は機器の開発・製造から電気通信サービスまでを一気通貫で提供している独立系のWi-Fiソリューション企業で、ホームユース事業とビジネスユース事業を展開している。

新事業となる再生可能エネルギー事業や、会社として目指す目標について、創業者の猪又將哲氏にお話をうかがった。

全戸一括のインターネット接続サービスの先駆け

ーー貴社の特徴を教えていただけますか。

猪又將哲:
棟全体を無線LANでつなぐ、全戸一括のインターネット接続サービスをいち早くスタートしました。現在は、一部屋ごとにLANケーブルを敷設し、壁にアクセスポイントを埋め込む方式で、通信スピードが安定するのがメリットです。

ーー貴社の強みや他社との差別化ポイントを教えてください。

猪又將哲:
ホームユースとビジネスユースのWi-Fi事業を展開しているところですね。

たとえばビジネスホテルと旅館では建物のつくりが異なるため、それぞれに合った設備を導入しなければなりません。こうした背景があり、ホームユースかビジネスユースのどちらかに特化しているWi-Fi事業者が多いのです。

ただ、たとえば保険では火災保険や自動車保険、損害賠償保険など、複数の商品を販売していますよね。もともと保険営業をしていた私にとっては、多種類のサービスを同時に提供することにためらいがないので、両方のサービスを展開してきました。

また、埋め込み式のルーターなど、通信機器を自社で開発・製造しています。Wi-Fiサービスの提供だけでなく、ものづくりを行っているところも弊社ならではの特徴です。

さらに、設立当初は経営リソースが十分でなかったため、地方に支店をつくるのはハードルが高かったんです。そこで、不動産会社とアライアンス契約をし、各不動産会社向けにWi-Fiサービスをプライベートブランド化させてもらい、先方のブランド名でレジデンスWi-Fiを請け負うプライベートブランド化のサービスも幅広く展開していきました。

こうしたサービスをいち早く始めたことと、通信機器の製品化をしているのが、弊社の大きな強みですね。

会社を立ち上げるまでの紆余曲折

ーー起業したいという思いは昔からあったのですか。

猪又將哲:
母から「サラリーマンはつまらないから商売をしなさい」と言われ続けていたので、どこかで意識はしていましたね。ただ、私は社長になりたかったわけではないんですよ。

今で言うと『ニューヨーク・タイムズ』にイーロン・マスクと握手している写真が載るような、スーパービジネスマンになるのが夢でした。

ーーそこから会社を立ち上げたのは、何かきっかけがあったのですか?

猪又將哲:
1995年頃の第三次ベンチャーブームのときに仲間が次々と会社を立ち上げ、上場させていたのを目の当たりにし、事業をするからにはやはり上場したいと思いました。そこで、31歳のときに会社員を辞め、翌年に会社を設立しました。

その後、他社と合併して上場を目指したのですがうまくいかず、当時の役員と一緒に別の会社を作ったんです。そこでは大手通信会社の代理店業務をしていたのですが、すれ違いが生まれてしまい、再び独立することになります。

そのときに子会社に代理店業務を移し、再スタートさせたのが、この会社です。

ーーそれからはどのように事業を展開したのですか。

猪又將哲:
当初はオフコン(オフィスコンピュータ)と呼ばれる、1960年代から作られ始めた、中小企業等での事務処理に特化した小型のコンピュータを販売していました。ところが、Microsoft Windowsの発売を皮切りに、オフコンの需要が一気に減っていったのです。

そこで、インターネットの前身となるパソコン通信(ホストコンピュータとパソコンとを電話回線で接続するサービス)事業を始めました。

再生可能エネルギー事業に対し大切にしてきた考えとは

ーー最近では太陽光パネルと蓄電池を販売する再生可能エネルギー事業を展開するなど、次々と市場を開拓していますね。

猪又將哲:
新たな市場を開拓していくアントレプレナー(独創的なアイデアや技術を用いて市場・会社・事業を生み出す起業家)とまでは言えませんが、ベンチャースピリットは常に持つようにしていますね。

通信サービスと再生可能エネルギー事業をかけ合わせ、病院などの公共施設にも販路を拡大していきたいと考えています。日光を活用して電気をつくる太陽光発電は、他の発電方法と比べて取り組みやすいので、全国の施設に普及していきたいと思っています。さらに蓄電池で電気を貯めておけば、災害時に電気の供給がストップしたときでも、自家発電ができます。

発電と通信設備で、誰もが教育と医療を受けられる世界へ

ーー学生のうちに習得または経験しておくべきことを教えていただけますか。

猪又將哲:
1日でも早く日経新聞を読めるようになることですね。内容を理解できるようになるために、日頃から読む習慣を身に付けるのがいいと思います。

また、社会人になるとまとまった休みを取りにくくなるので、学生のうちに海外旅行をしておくといいでしょう。特にベトナムやインドネシアなど、今勢いのある国を自分の目で見て、熱量を感じてみてください。

ーー貴社の最終的な目標を聞かせてください。

猪又將哲:
最終的な目標は、世界中の人々が、インターネットを使える環境をつくることです。世界には今も電気が通っていない村がいくつもあります。なかにはスマホを使うために、電気が使えるところまで何時間も歩く人もいると聞きます。

そこで太陽光パネルと蓄電池を提供し、村の中で自家発電できるようにして、通信設備も導入すれば、長い時間をかけて移動することなく、インターネットも使えるようになります。

そうすれば遠隔で教育や医師の診察を受けられるようになり、人々の生活も大きく改善されるはずです。このように誰もが教育と医療を受けられる環境を整え、世界の課題解決に貢献していきたいと思っています。

編集後記

会社が大きくなってきた今もベンチャー精神を忘れず、新しい事業へ果敢に挑戦している猪又社長。インタビューからは前例にとらわれず、新たな道を切り拓いてきた人という印象を受けた。日本と世界のインフラ整備に貢献する、株式会社ファイバーゲートに期待したい。

猪又將哲/1965年生まれ、愛知県出身。北海道大学卒業後に興亜火災海上保険株式会社(現・損害保険ジャパン株式会社)に入社。1995年マイネットの代表取締役に就任し、札幌市中央区に本社を移転して株式会社ファイバーゲートを設立。Wi-Fi事業を手掛け、2018年に東京証券取引所マザーズに上場、2019年には東京証券取引所市場第一部(現・プライム市場)および札幌証券取引所への上場を果たす。