私たちのライフラインを支えている土木工事でもDXやAI技術が進み、現場の仕事内容も変化を遂げている。
1977年に創業したエコシビックエンジ株式会社は、長年築き上げた取引先との良好な信頼関係を保ちつつ、技術の向上や人材導入で新しいことを成し遂げ、国内の数多くのトンネル工事に携わってきた。同社の代表を務める門間恒夫社長に、経営理念や今後の展望、そして採用にかける思いをうかがった。
憧れだった土木の現場からのたたき上げで経営者に!
ーー土木業界に入ったきっかけを教えてください。
門間恒夫:
きっかけは、学生時代の夏休みに土木工事のアルバイトをしたことでした。その時に憧れを抱き、高校を卒業したら土木業界に就職しようと考えました。
卒業後の進路を考える際に、「すぐに現場で施工管理できる人がほしい」という募集案件があり、最初は学校から紹介された土木会社で働いていました。その後、弊社の前身であるイワノ工事株式会社に入社しました。家から現場に直行直帰となり、出社するのは週に1回程度。同じ会社の仲間と会うのは月に1回の全体会議くらいで、現場中心で仕事を学んでいきました。
ーー社長に就任されることになったときは、どんな気持ちでしたか?
門間恒夫:
私自身、社長に就任するというビジョンは全く頭にありませんでした。現場で働いているときが本当に楽しかったので、「役員になってほしい」と前社長から相談を受けた際も「一度ゆっくり考えさせてください」と言いました。
当時の社長に突然声をかけられて「次期社長には門間さんが良いと思っているんだけど、どうだろうか」と切り出され、そこまで評価していただいているのかと驚いたことを覚えています。
私が入社当時から常に考えていたのは、「利益を追求していくために何をしなければいけないか」ということです。経営者にも通じるこうした視点が今の私をつくったのかもしれませんね。
「ヒト営業」で世界屈指の日本のトンネル技術を支える
ーー貴社の事業の強みを教えてください。
門間恒夫:
シールドトンネル工事のうち、トンネル形成部材(セグメント)を組み合わせる継手に水漏れ防止のシールを貼り、強度を高め、人々の安全を守るというのが、弊社のメインの仕事の一つです。
シールを貼ること自体はとてもシンプルな作業ですが、世界最高レベルにある「日本のトンネル技術」の一端を担っています。地下水が多い日本においては、とくにトンネルの接合部分から水が漏れるのを防ぐ技術が優れていると言われており、弊社が取り組んでいるのはまさにその肝心です。
ーー事業を続けるなかで、大切にしていることは何ですか?
門間恒夫:
弊社は主に、スーパーゼネコンや大手ゼネコンと取引していますが、こうした仕事をいただけている背景には、「ヒト営業」というものがあります。
「ヒト営業」というのは、専門的な工事を手がける技術や実績はもちろん、現場で長年築き上げてきた人と人とのつながりのことです。それがあるから「エコシビックエンジに任せれば大丈夫」という信頼につながっています。10年、15年と長年一緒に仕事をしているからこそ、声をかけていただけるのではないでしょうか。
ーー人材育成についての考えを聞かせてください。
門間恒夫:
「年功序列」という考えが昔からありますが、私個人は実力主義でいいと思っています。できる人たちがもっと伸びていくためのアシストをするのが私の役目です。各部署の部長や課長などマネジメント層にも、人を育てる方法を伝えることを大切にしています。
やる気を持った人たちに伸びていってほしいと思いますし、未経験の若い人材も迎え入れて育てていきたいですね。実際に、入社して2、3年目の社員でも1人で仕事ができるレベルにまで成長しています。それと並行して、年齢が高い社員もできるだけ長く活躍できる環境づくりに取り組んでいます。通常は60歳定年が多いかと思いますが、弊社では70歳まで働ける制度を設けました。
ーー現場社員に対して取り組んでいることはありますか?
門間恒夫:
皆それぞれ現場で頑張ってくれているので、現場の管理や判断は個々に任せ、自由にやってもらうというのが社風です。ひとつの現場に1人がつきっきりというわけではなく、1人が複数の現場を担当しているため、どう動くべきかは各々の判断に任せています。「社員を信じる」ということが一番大切だと私は考えています。
女性も土木業界で活躍できるように後押ししたい
ーー土木という仕事の醍醐味は何ですか?
門間恒夫:
土木業界は実際入ってみないとどんな仕事をしているのかわかりにくいかもしれませんが、私たちの暮らしを支えるために、なくてはならない仕事です。社会において必要とされる大切な仕事であると同時に、ずっとなくならない仕事であることが醍醐味です。そして、我が社には社会を支えるという意義や使命があります。
ーー近年、土木業界で女性も活躍していますが、どう捉えていますか?
門間恒夫:
女性の活躍には、大変興味を持っています。実際に、100人くらいのジョイントベンチャーの現場では、1割ほどが女性です。施工管理として活躍することが普通になり、女性専用の宿泊施設も整備されています。弊社でも女性活用を大いに進めていきたいと思っています。
職人となると体力的な問題もあるかもしれませんが、現場管理であれば性別関係なく活躍できます。また、女性が現場にいることで、「雰囲気が明るくなる」「違う物事の目線」という相乗効果もあると感じています。
ーー採用に対する思いをお聞かせください。
門間恒夫:
男女関係なく施工管理の現場で活躍していただきたいという考えで、採用に力を入れています。採用時には、基本的に経験や資格などの条件をつけていません。
私のように、コネやバックボーンがないところからスタートしても、経営者を目指せますから、希望を持った若い方に門を叩いていただきたいですね。ともすれば息苦しさを感じる混沌とした時代だからこそ、仕事が楽しめる会社にしたいと思っています。
編集後記
物流や人の移動を支える道路のなかでも、トンネル工事を得意としているエコシビックエンジ株式会社。一緒に働く仲間を採用するときに大切にしているのは、「経験ではなく、仕事に希望を持てるかどうか」と語る門間社長。その言葉からは、土木の仕事に対する誇りと熱い思いが感じられた。
門間恒夫/1963年神奈川県生まれ。1982年川崎市立川崎総合科学高等学校土木科卒業。卒業後、学校から紹介された土木会社に勤めたのち、1987年にイワノ工事株式会社(現:エコシビックエンジ株式会社)に入社。2021年、同社代表取締役社長に就任。