※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

創業70年の節目を迎えた松田電気工業株式会社は、電気工事や通信工事を中心に、設計から施工、メンテナンスまでを一貫して手掛ける総合設備工事会社だ。公共施設から民間企業の大型案件まで幅広く対応し、自社に作業部門を持つことで実現するワンストップサービスを強みとしている。同社を率いるのは、銀行業界から建設の世界へ足を踏み入れた経歴を持つ代表取締役社長、奥村雅英氏。金融機関で培った視点を活かして社内改革を断行。社員の成長と「誠実さ」を追求する同氏に、これまでの歩みと事業の強み、そして未来への展望を聞いた。

銀行員から建設業界へ!元銀行員社長の挑戦と改革

ーー貴社に入社した経緯をお聞かせください。

奥村雅英:
大学卒業後、地元金融機関に入社しました。55歳のとき、取引先でもあった松田電気工業株式会社へ出向したのが、最初の関わりです。総務、人事などの経営管理部門で、当初は主に人事や給与、福利厚生等の制度点検に取り組みました。

金融機関では形式やコンプライアンスが非常に重視されます。一方で、建設業界は良くも悪くも勢いや長年の慣習が強い文化でした。特に、お金の使い方の感覚は大きく異なり、当初は戸惑いました。銀行では限られた予算が厳格に管理されますが、建設業界では「仕事のためなら使うべき時に使う」という考え方があったのです。

業界の文化や慣習を一部否定するような改革も進めましたので、反発がなかったわけではありません。たとえば、経費の使い方については、その必要性を厳しく検証するように改めました。また、社員の立ち居振る舞いや仕事への向き合い方についても、より高い水準を目指し、少しずつ改善を促してきました。

ーー今年、創業70周年を迎えるにあたり、どんな変革をされましたか。

奥村雅英:
70周年という大きな節目に、経営理念を刷新しました。「技を極め ともに、まっすぐ、一歩ずつ 人々の幸せを追求する」という理念です。私たちが大切にすべき価値観である「誠実さ、正直さ」を、より前面に出すように見直しました。これは役員だけでなく、社員も含めて皆で考え、共有したものです。人から後ろ指をさされることのない仕事をする。そして、お客様やまわりの人々の利益も考えられる。そういった姿勢を大切にしていきたいと考えています。

顧客のニーズを把握しワンストップで対応

ーー改めて、貴社の事業内容を教えてください。

奥村雅英:
電気設備、電気計装設備、空調・給排水設備、情報・通信システム、エコ・省エネ設備。総合設備業者として、これらの施工はもちろん、企画からメンテナンスまで自社一貫体制で提供しています。具体的には、病院や工場、学校といった公共性の高い施設。さらに、民間の建物の電気設備、情報通信設備も手掛けています。近年は、ニーズが高まっている空調や給排水設備も含めて幅広く対応しています。現在の事業比率は、公共工事が約4割、民間工事が約6割です。

ーー事業における強みは何でしょうか。

奥村雅英:
最大の強みは、設計部門、施工管理を行う建設部門、そして実際に工事を行う作業部門を全て社内に擁していることです。これにより、お客様のニーズに一貫して対応できる「ワンストップ体制」を構築しています。この点が、他社にはない大きなアドバンテージだと自負しています。

また、建設業界では、実際の作業を専門の下請け業者に委託するケースも少なくありません。弊社の場合、経験豊富な設計者、施工管理者、そして高い技術力を持つ作業員まで在籍しております。そのため、お客様の急なご要望や修理・メンテナンスにも迅速かつ柔軟に、責任を持って高品質なサービスを提供できます。その点も大きな強みですね。

社員の成長を全力サポートする「社内大学」構想

ーー社員の方々のスキルアップに関して、どのようなサポートをされていますか。

奥村雅英:
業務に必要な資格取得にかかる費用は、会社が全額負担しています。さらに、資格を取得した社員には、その努力と専門性を評価します。毎月の給与に資格手当を上乗せして支給することで、社員の成長意欲をサポートしています。

研修制度も、これまではOJT中心でしたが、今後は体系的かつ専門的に学べる環境の整備を進めています。外部のコンサルティング会社の知見も取り入れながら、「社内大学」とも呼べるような仕組みを立ち上げる準備を進めているところです。新入社員からベテランまで、キャリア段階に応じた多様なカリキュラムを整備します。それにより、知識や技術、さらには人間力も高め、社員一人ひとりの継続的な成長を後押しする計画です。

地図に残り生活を支える仕事で働く魅力

ーー採用において、特にどのような人材を求めていますか。

奥村雅英:
新卒採用では、文系・理系を問わず募集しています。社会のインフラを創り、支えることに純粋な興味や情熱を持つ方に来ていただきたいです。キャリア採用であれば、経験を活かして即戦力として活躍できる施工管理技術者は特に歓迎します。施工管理者がいなければ受注できない案件もあり、会社の成長にとって非常に重要なポジションです。

何もないところに自分たちの手で設備を構築する。それが完成して電気が灯り、人々の生活を支えていると実感できる。その時、言葉では言い表せない達成感と感動を味わえる仕事です。時には地図に残るような大きなプロジェクトに関わることもあります。それは技術者としての誇りとなり、生涯の財産になるでしょう。

ーー最後に、目指す会社像をお聞かせください。

奥村雅英:
70年という長い歴史の中で、地域の皆様やお客様から一定の信頼をいただいてきました。しかし、その歴史や現状の評価にあぐらをかくつもりはありません。経済や社会がどのように変化しようとも揺らがない、本当に強くてしなやかな会社を築きたいです。

社員一人ひとりがプロとして高い意識と誇りを持つこと。そして、お客様や社会から「松田電気工業の社員はやはり仕事ぶりが違うね」「人間的にも信頼できる」と評価していただくこと。技術力だけでなく人間性も含めて評価されるような、そんな企業文化を持つ会社を目指しています。

編集後記

銀行という全く異なる世界から建設業界へ転身し、老舗企業を率いる奥村社長。その語り口からは、改革者としての強い意志が感じられた。同時に、社員一人ひとりの成長を心から願う温かい眼差しも印象的だった。創業70周年を迎え、「誠実さ」を胸に新たな一歩を踏み出す松田電気工業。その挑戦は、業界内外に確かな光を灯していくことだろう。

奥村雅英/1982年、大学卒業後に地方銀行へ入行。支店長などを歴任する。55歳の時、松田電気工業株式会社へ出向。出向から3年後に同社取締役に就任し、松田電気工業へ正式に籍を移す。その後、代表取締役社長に就任。銀行員時代に培った視点から、経費の透明化や社員の働き方改革を推進。さらに、「誠実さ、正直さ」を核とした企業文化の醸成も進める。創業70周年を迎え、社員の人間力向上と企業の持続的成長に向け、新たな挑戦を続けている。