多くの産業にDXの波が訪れている。AIを活用した業務効率化・省人化の必要性はもはや論を待たない。そんな中、物流業界は今日でも旧態依然とした慣習が色濃く残る業界のひとつである。そのような状況を打破し、業界に新風を吹き込むのが2017年に創業したスタートアップ企業である株式会社Azoopだ。革新的なサービスを次々と市場に送り出す同社を率いる朴社長に話をうかがった。
物流業界を皮切りに、次世代に新たな可能性を提供したい
ーー貴社の事業内容について教えてください。
朴貴頌:
2017年に創業した会社です。ミッションとして掲げるのは、「次世代に、新たな選択肢と可能性を。」です。スローガンは、「レガシーを、スマートに。」と定め、旧態依然とした産業の変革を目指している会社です。ファーストステップとして、物流業界の経営改善・業務改善を図るサービスを提供しています。
ーー現在展開しているサービスについて、詳しく教えてください。
朴貴頌:
主力サービスは3つあります。
1つ目は「トラッカーズオークション」という商用車のネットオークションサービスです。従来の商習慣では、売り手が買取事業者に見積もりを依頼して、最も高い金額を提示した会社に売却する流れでした。本サービスの提供価値は、ネットオークションを導入することにより、今までにないマッチングが可能になり、双方が良い条件で取引できる点です。類似・競合がない独自のサービスであり、自信を持っています。
2つ目は、「トラッカーズマネージャー」という業務支援サービスです。いわば自動車の履歴書を作成するサービスです。特長は整備や修理の履歴、購入履歴、事故履歴などの情報をクラウド上で一元管理できる点です。自動車自体にフォーカスしたサービスは業界初といえるでしょう。
3つ目は、ドライバーに特化した採用支援・人材紹介サービスを手がける「トラッカーズジョブ」です。「定着課金」という報酬体系を採用しており、紹介したドライバーの採用後、1ヶ月が経過した段階ではじめて報酬をいただきます。
ーー会社を設立するにあたって、どのような思いがあったのでしょうか。
朴貴頌:
父が経営していたトラック運送業と商用車流通業の会社で取締役を務めていたことがきっかけで、さまざまな問題意識を持つようになりました。物流業界向けのトラックの売買における、業界の旧態依然とした慣習を解決したいという思いが日増しに強くなっていったのです。
サービス開発にあたっては、なにより顧客ファーストを意識しました。この気持ちは今も持ち続けており、提案も基本的に対面で行い、お客様の声を直接お聞きすることを大事にしています。お客様に喜んでいただけるサービスづくりには、現地現物に多くのヒントがあります。
ーーどのような意識で事業に取り組んでいますか?
朴貴頌:
私たちは次の7つのバリューを定めています。
・Super Ownership 「誰かが」ではなく、「自分が」やる。
・Think Big 今の慣習にとらわれず、未来思考で発想する。
・Speed is Power 無駄なく、ゴールに最短で向かう。
・Feel Reality 「現地現物」を大切にする。
・Open Communication 尊敬と配慮をもって、本音で語る。
・Nice Challenge 学びのある失敗は称賛する。
・Smile Impact 笑顔で、楽しもう。
中でも、Super Ownershipは重要視している価値観で、「圧倒的当事者意識」とも表現します。「誰かが」ではなく、「自分が」やるという意識を社員1人ひとりが持ち、日々活動するということです。
ーー共通のバリューを旨とすることで団結感が生まれそうですね。ちなみに、社長ご自身が特に心がけていることは何ですか。
朴貴頌:
基本的に戦わないことを心がけています。戦うことはすなわち、価格競争に身を投じることにつながります。そうではなく、独自路線で唯一無二のポジショニングを持つことに注力しています。その礎になるのは、何が起きてもやり遂げる胆力です。
ーー事業を進める上で印象に残っているエピソードを教えてください。
朴貴頌:
一番最初に契約いただいたお客様のことは、うれしくてよく覚えています。
その他のお客様に関しても、2年以上商談を重ねて、ようやく成約に結びついたことがありました。これまでの努力が報われた気持ちで非常に達成感がありました。
サービス開発に関するエピソードを紹介すると、「トラッカーズマネージャー」のプロジェクト開発時のことが印象に残っています。ローンチの1年ほど前から、いくつかの企業にプロジェクトとして参画していただきました。社長の皆さんからの声を反映しながら、試行錯誤を繰り返したうえで完成させたため、非常に思い入れがあるサービスです。
課題解決のため、業界に風穴をあける同志を求む
ーー今後は事業をどのように進めていきたいと考えていますか?
朴貴頌:
物流業界の「2024年問題」「2030年問題」を引き合いに出すまでもなく、物流インフラのあり方は変わっていくべきだと思っています。変化する時代のなかで、弊社のサービスがデファクト・スタンダード(事実上の標準)として選ばれる状況を作っていきたいと考えています。物流業界にとどまらず、介護、医療、教育、インフラ業界などに対して新しい選択肢を提供することにチャレンジしていきます。
ーー新しく仲間に加わる方へメッセージをお願いします。
朴貴頌:
弊社では、営業に意欲的な人が活躍しています。
サービスには自信を持っていますので、お客様のお困りごとに対して必ずヒットします。つまり、営業の成果を出しやすい環境なのです。手を挙げた人にはチャンスを与える方針ですので、抜擢人事も頻繁にあります。チームワーク、誠実さ、素直さ、成長意欲、行動力、これらをそなえている方が望ましいです。皆さんの挑戦の舞台に弊社を選んでもらえたら嬉しいです。
編集後記
新進気鋭のスタートアップが真摯に向き合うのは古い慣習が残る物流業界。その組み合わせに興味を覚えつつ、インタビューに臨んだ。「物流業界の不を解消したい」と繰り返す朴社長の言葉を聞くうちに、業界の新しい幕開けを感じずにはいられなかった。今はまだ、朴社長の描く未来が現実になる日が楽しみだ。「誰かが」ではなく、「自分が」やる。株式会社Azoopの挑戦にエールを送り続けたい。
朴貴頌/慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、2010年に株式会社リクルートに新卒入社し、コンサルティング営業担当として中小から大手企業まで約200社の採用・育成の企画設計および運用を支援。その後、家業(トラック運送業および商用車流通業)の取締役を経て、2017年に株式会社Azoopを設立。