※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

あなたは麻雀を実際に卓で打ったことがあるだろうか?そこにはゲームでは味わえない質感や音といったリアルならではの臨場感が存在する。

株式会社シグナルトークの代表取締役である栢孝文氏は、リアル麻雀の臨場感にこだわってオンライン麻雀「Maru-Jan」という形で再現した。そのこだわりが多くの人に受け入れられ、幅広い年代層に愛される長寿ゲームになっている。

そんな栢社長が次のテーマに掲げているのがシニア層を中心としたヘルスケア事業だ。なぜオンライン麻雀からヘルスケアにつながるのか、そこには麻雀が持つ知られざる可能性があった。

小学生の自作ゲームづくりから、本格的なゲーム制作の世界へ

ーー社長の経歴をお聞かせください。

栢孝文:
私は子どものころからゲームが大好きで、小学生のころからゲームを自作して遊んでいました。ゲームを自作していた理由は我が家にファミコンがなかったからです。どうしてもゲームをやりたいという思いから、自作するという道を選びました。

中学になるとチームで本格的なゲーム制作に取り組むようになり、ゲーム制作者の道を目指すようになりました。ちなみに、麻雀で遊ぶようになったのもこのころです。

大学院卒業後は、憧れのゲーム会社だったセガやソニーコンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)でプランナーやプロデューサーとして経験を積みます。

その後、2002年にアメリカでシグナルトーク・コーポレーションを設立して独立。2006年に日本で株式会社シグナルトークを設立し、2007年に代表取締役に就任して今に至ります。

目指したのはリアル麻雀の完全再現

ーー貴社のオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」独自の強みや、込められたこだわりを教えてください。

栢孝文:
リアルで打つ麻雀の楽しさを余すところなく伝えるために、デジタルで再現できる限界のレベルまでこだわり抜いています。

ゲームでも本物さながらの体験を届けることで、麻雀牌(パイ)の質感や打ったときの音、点棒の動きや自動卓ならではの積み方のクセなど、あの臨場感をディスプレイの前にいる皆さんにも届けたいのです。

一見、細かすぎると思えるような部分もありますが、リアルの麻雀を愛する方は、そのこだわりに「本物」を感じてくれるはずです。伝えたいこだわりを高いレベルで詰め込んでこそ、ゲームは面白くなると私は信じています。

シニア層にこそインターネットで麻雀を打てる環境を

ーー「Maru-Jan」はシニア層にもアプローチしているそうですが、それはなぜですか?

栢孝文:
主な理由は2つあります。一つはシニア層がインターネットを当たり前に使う時代になったこと。もう一つはシニア層の楽しみ作りに貢献したいという思いからです。

シニア層には足が不自由な方や入院中の方など、実際に麻雀を打つことが難しい方も多くいらっしゃいます。しかし、オンライン麻雀ならいつでも簡単に麻雀を打てますし、さらには「Maru-Jan」が開催している全国大会に出場することも可能です。

実際に末期がんで入院していた方のご家族から「生前ずっと最期まで遊んでいました」というメールをいただいたことがあります。人生最後の楽しみに携われたと知り、仕事の意味を考えさせられました。

麻雀を入口に、シニア層のヘルスケア事業にも切り込む

ーーヘルスケア分野ではどのような事業に取り組んでいますか?

栢孝文:
麻雀を活用した脳機能の活性化や認知症予防などに取り組んでいます。

麻雀が認知症予防になるという説は以前からあるものです。「Maru-Jan」のユーザーはシニア層の方が多いので、この機会を活かしてヘルスケア方面からもアプローチできないかと考えました。

まだ、麻雀と認知症予防の関連性はハッキリ証明できていませんが、実験・検証によって少しずつポジティブなデータが集まってきています。ヘルスケアはゲームの技術の流用が可能な分野なので、麻雀を軸に新たな価値を提供できればと思います。

会社と社員の両方にメリットのある「理想の就労環境」を目指して

ーー就労環境の改善に関して、具体的な取り組みを教えてください。

栢孝文:
働きやすい環境は人によって異なるので、弊社では一人ひとりの理想を可能な範囲で叶える取り組みをしています。無謀な話に聞こえるかもしれませんが、理想には諦めない限り近づくことが可能なので、今後も努力を続けていきます。

実現した制度の例として、売上が前年同月比で105%以上になったら翌月に休日を1日増やすというものがあります。また、月間労働時間の短縮にも取り組んでおり、以前の約160時間から約120時間まで、短縮に成功しました。

生産性を高めて成果が出たらしっかり休む、メリハリのある働き方は会社と従業員の両方にメリットが大きいのです。ちなみに、ゴールデンウィーク休暇と夏季休暇、年末年始休暇はそれぞれ約2週間あります。

成長志向のマインドを持って人々の生活を良い方向へ変えていこう

ーー人材に求める条件は何でしょうか。

栢孝文:
自分の責任を自覚できることを重視しています。さまざまな出来事は、一見理不尽なようでも、原因の一端に自分の行動が含まれている場合があります。自分の責任範囲は思っているより広いのです。

これに気付ければ、理不尽に思えていたことも、改善や成長、リスクヘッジのチャンスに変わります。そして今までの自分より少し良い自分へと変われるでしょう。

採用では技術力や実務経験よりもマインドを重視しています。特に、仕事を楽しむ方法を模索する人は伸びる傾向にあるので積極的に採用したいですね。

最後になりますが、私は技術とは社会を幸せにするために使うべきだと考えます。弊社の技術を皆さんの才能で活用していただき、人々の生活を少しでも良い方向へ変えていきましょう。

編集後記

栢社長のかつての趣味だったゲームと麻雀が今では一大事業になり、さらには人々の健康を支える可能性を示すまでになった。このポジティブな連鎖反応は、栢社長があらゆることにこだわり抜き、可能性を模索し続けた結果なのだろう。栢社長が次に見つける可能性はどんなものか。ヘルスケア事業へと進むその背中に注目が集まる。

栢孝文/1975年、大阪府出身。1999年、大阪市立大学大学院工学研究科情報工学専攻卒業。株式会社インテック、株式会社セガ・エンタープライゼス(現:株式会社セガ)などを経て、2002年シグナルトーク・コーポレーションを設立。代表取締役に就任。2006年、株式会社シグナルトークを設立し、2007年に代表取締役に就任。現在、会員数170万人、20周年のオンライン麻雀「Maru-Jan」をはじめ、「FoodScore」、「LifeLeap」などヘルスケア事業も新規展開中。