※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

限りある資源を大切に使用する。これまで紙で運用されていた書類や資料などを電子化する動きが世間でも主流になってきた。

社会でペーパーレス化が進む中、紙資源を循環させる事業を展開しているのが丸楽紙業株式会社だ。代表取締役である杉山喜久尚氏に、循環する再生紙を開発したきっかけや会社の強みなどをうかがった。

歴史ある家業から「企業」への変革

ーー入社後はどのような業務を行っていましたか。

杉山喜久尚:
入社後は営業・紙の加工・流通業務などを行うと同時に、グループ会社の経営にも携わっていました。他のグループ会社を設立したり出資したりすることで、経営の経験を積んでいきました。

ーー社長就任後はどのようなことに取り組みましたか。

杉山喜久尚:
私は、創業から2024年で85年目を迎える弊社の3代目になりますが、社長に就任してからは、家業から「企業」へと変えることを意識しました。給与制度を明確にし、休暇を増やし、人事などの組織制度を整えました。

また、業務を自動化・標準化するなど、業務改善と呼ばれることは現在も行っています。家業から「企業」へと変化させないと、組織としての成長はないと思っていたので、私の代で社内改革を実施しました。

ーー社長の軸となっている考えを教えてください。

杉山喜久尚:
苦労も運不運もすべて個人の捉え方次第と考えているので、苦労も失敗も学びの元だと思っています。誰しもミスはするものなので、「ミスをした後にどう改善するかが大切だ」ということは、従業員にも伝えています。

ーー学ぶことに関して貴社で取り組んでいることはありますか。

従業員に学ぶ機会を与えるため、資格応援制度を設けています。他にも、入社5年以上の従業員には永年勤続者海外研修制度を設けているので、海外で学ぶことも可能です。体系化された知識を知った上で実務を行うのと、実務を行ってから学ぶのとでは、浸透の度合いが違うと思うので、学びを習慣にするよう工夫しています。

地域に根付き、持続可能な未来を創造するための取り組み

ーー貴社の事業を教えてください。

杉山喜久尚:
「『紙から始まる』を創る」をテーマに、紙・機密資源・デジタルシステム・ハンドプロセスの4つの製品およびサービスを提供しています。

ーー貴社と競合他社との決定的な違いは何でしょうか。

杉山喜久尚:
「こまかくひろく」業務を行っているところだと思います。流通を血管に例えたときに、一次流通が動脈と静脈だとすると、弊社が行っているのは毛細血管のような二次流通です。今日も明日も明後日も、一定のレベルでサービスを「こまかくひろく」提供できるという点が、弊社の強みだと思っています。

ーー「地域密着型の循環企業グループ」を目指しているとのことですが、具体的な取り組みを教えてください。

杉山喜久尚:
納品と同時に、印刷会社などから余剰紙などの資源を回収する、循環型配送回収システムを構築しました。そして、回収した余剰紙を、森林と同等の再利用可能な資源として扱うために、「都会の森林ペーパー」と名付けた再生紙を製紙メーカーと協力して開発しました。この再生紙を使用した卓上カレンダーなどの製造、販売も行っています。

「当たり前を当たり前に行う」ーー豊かな人生を歩むために

ーー社内環境改善に関して、注力していることはありますか。

杉山喜久尚:
就業規則や休暇制度は明文化・可視化したうえで運用しているので、組織や人事の部分でも中小企業の中ではトップレベルだと思います。

また、社内での評価制度を整えている最中です。公平で透明性のある評価制度を設けることで、従業員がモチベーションを保ち、のびのびと働ける環境にしたいですね。しっかりと働き、結果を出せば評価される、そのような会社をつくっていかなければと思っています。

ーーモチベーションをもって働くことについて杉山社長はどのように考えていますか。

杉山喜久尚:
私は、豊かな人生の上に良い仕事があると考えています。人生が豊かでないと良い仕事はできません。仕事を通じて自分がどう成長するのか、人にどのような影響を与えるのかなどを考えることが大切で、お金だけを働く目標にすると長く続かないと思います。

弊社の行動指針でもある、「当たり前を当たり前に行う」という言葉の中には、同時にだれもできない量とだれもできない時間行う、という意味が含まれています。量をこなしていくことで、習慣が身に付きいわゆる才能を超える力が身に付きます。そのことを従業員に理解して働いてもらいたいです。従業員には会社を通して、豊かな人生を歩んでもらいたいと思っています。

編集後記

家業の3代目というプレッシャーをものともせず、組織の成長のために社内改革を進める杉山社長。紙を生業とする家に生まれたからこそ、紙を中心に社会が循環する仕組みをつくり、都会の森林ペーパーという商品までも開発した。今後、どのような新商品を開発し地域に還元していくのか、丸楽紙業株式会社に期待したい。

杉山喜久尚/1974年大阪府生。2001年に丸楽紙業株式会社に入社。2010年に同社代表取締役に就任。