※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

投資への関心が高まりをみせ、国内の個人株主数は9年連続の右肩上がりで増加している。

2022年10月に日本でリリースされた投資情報アプリ「moomoo(ムームー)」。リアルタイムで配信される取引情報、視覚的にわかりやすいデータ分析などの豊富な機能が無料で利用できる点が好評で、ユーザー数は世界中で2,100万を超える。

「moomoo」を提供するmoomoo証券株式会社の代表取締役社長である伊澤フランシスコ氏に、同アプリの魅力や今後の展望について話をうかがった。

意外な経歴、独学のプログラミングスキルで大躍進!アメリカでレストラン経営も

ーーご経歴を教えてください。

伊澤フランシスコ:
大学を卒業した後、最初に入ったのは商社です。そこでは新卒社員はなかなか仕事を任せてもらえず、「もっとスピード感をもって成長をしたい」と考えていたところ、フランス語が話せるという縁で仏系銀行のソシエテ・ジェネラル証券に移ることになりました。

私は金融に関しては全くの新人だったため、コピー取りなど雑用からのスタートでした。その中でプログラミングのスキルを独学で身につけて、トレーダーがアシスタントを数人付けて毎日2時間以上かけて行っていた作業を、ボタン1つ、10分で完了できるプログラムをつくりました。

その熱意が評価され、当時最先端だった日本株のオプション取引でトレーダーのポジションを得ることができました。そこから私の金融キャリアがスタートしました。かつてのリーマン・ブラザーズ証券で取引の自動化を行う電子取引の部署の責任者を経て、日本に進出したアメリカのFintech系証券会社から誘いを受けて、初めて社長の立場を経験しました。

その後、リーマン・ショックのあおりを受けて、「いったん金融業から離れよう」と思い、心機一転、家族でロサンゼルスに移住することにしました。その際に、レストランを開業してビジネスビザを取得し、一時期は異なるコンセプトのレストランを4店舗経営した時期もありました。

その後、レストラン経営に区切りをつけて日本に戻ってきたところで、SBI証券から声がかかり、マーケティング部門で個人投資家向けのサービスに携わりました。ここで初めて個人投資家向けのオンライン証券ビジネスを学びました。その後、主にFXやCFDを取り扱うデンマーク系のサクソバンク証券の社長を経て、moomoo証券の社長に就任、現在に至ります。

投資情報が目に見える「わかりやすさ」を追求したアプリ

ーー「moomoo」はどのようなアプリですか?

伊澤フランシスコ:
技術を駆使して、どのようなレベルの投資家でも最先端の投資情報を簡単に取得でき、投資できるアプリというコンセプトです。特徴的なのが、一般的な証券会社が口座を開設しないとアクセスできないデータや情報が、アプリをダウンロードするだけで、無料でほぼ全て使用できるところです。個人投資家がもっと簡単に、プロと同じ情報にアクセスできるサービスを目指し、2018年にアメリカで開発されました。

私はトレーダーとしての目線で、「こういった情報や機能があったら投資家が喜ぶだろうな」と思うアイデアをたくさん持っています。

しかし、これまで働いてきた証券会社のシステムの中では、時間や費用対効果の問題で実現できないことばかりでした。このギャップに頭を悩ませていた頃にUIに優れた「moomoo」と出合い、「このアプリを日本で提供したい」と強く思いました。

ーー「moomoo」のどのようなところが優れていると感じましたか?

伊澤フランシスコ:
データが視覚化されて、わかりやすく表示されているところです。たとえば、企業の財務諸表は数字が多くて読み解くのが大変ですが、「moomoo」はそのデータを抽出して、グラフ化して表示するので、時間をかけず視覚的に理解できます。その情報を投資に役立てることができるのが大きなメリットだと思います。

「まずは無料のプラットフォームづくりから」従来の逆をつくビジネスモデル

ーーオンライン証券の市場は大手5社のシェアが大きい中で、どのような点にビジネスチャンスを見出していますか?

伊澤フランシスコ:
証券会社としては投資家のニーズに応えていくことがミッションです。彼らのニーズは口座をつくることではありません。資産運用で成功することです。

そのニーズをサポートするために、弊社では口座を開設してからサービスを開始するのではなく、まずは投資家に役立つ投資プラットフォームをつくることを第一に実行しています。

更に、「moomoo」アプリであれば、ダウンロードすれば無料でほぼ全ての情報を見ることができるので、口座開設を躊躇される方にも気軽に使っていただけます。

まだサービスを開始して間もないこともあり、日本のユーザーは「moomoo」で情報収集を主に行っている方が多かったのですが、米株に引き続き、2024年3月に日本株の取引サービスを開始したあとは、口座開設する方が大きく増えてきています。日本株取引は手数料完全無料、米株取引も業界最安値で、NISA口座を活用することができるのもご好評いただいている理由の一つかもしれません。

「こんな機能がほしかった」投資家ニーズに応えていきたい

ーー貴社で求める人材像はありますか?

伊澤フランシスコ:
今後もますます事業を拡大していく予定で、その中で求める人材像は2つあります。
1つはオンライン証券の経験が豊富な方です。弊社は仕事のスピード感が速く、上下の垣根があまりない社風なので、「ダイナミックに働いてみたい」と考えている方にはマッチすると思います。

もう1つは、やる気にあふれる20、30代の方です。今の会社である程度の経験を積み、「そろそろ次のチャレンジをしてみたい」と考えている方にも、ぜひ仲間になっていただきたいと考えています。

ーー今後の展望を教えてください。

伊澤フランシスコ:
2024年は、家づくりにたとえるなら土台作りの段階です。証券サービスとしては、弊社はまだ日本株と米国株取引しか提供していません。今年は、投資信託やNISAのつみたて投資枠などのサービスもスタートしていきます。

2025年になると、インテリアやカーテンの色を考えるような楽しい時期を迎えるでしょう。これは、取引サービスの部分で、「今までにないユーザビリティを提供できるようになる」ということです。

AIに全ての資産運用を任せるサービスは既にありますが、当社ではもっと柔軟に投資家の方々に喜んでいただけるサービスもつくっていきたいと思っています。たとえば「自分でいくつかのお気に入り銘柄を選んで、資金配分の部分だけをAIに任せて最適比率にしてもらう」というような、今はまだないけれど「あったらいいな」と思われるサービスを提供していきたいですね。

編集後記

「お客様のニーズにきちんと応えて提供することができれば、どんなビジネスも成功すると思っている」と語った伊澤社長。スピード感をもってお客様のニーズに応えていくため、それを実現する技術力と製品開発を追究する姿勢を強く感じた。投資家の右腕的存在となっていく同社の今後の成長に期待が高まる。

伊澤フランシスコ/慶応義塾大学法学部を卒業後、ソシエテ・ジェネラル証券株式会社やリーマン・ブラザーズ証券(当時)などの大手外資系証券会社のトレーディング部門で株式およびデリバティブ取引の経験を積んだのち、オンライン証券ビジネスに転身。株式会社SBI証券のマーケティング部長、サクソバンク証券株式会社の社長を経て、2022年よりmoomoo証券株式会社の代表取締役社長を務める。