※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

「日本企業は長寿である」と言われることがある。世界中で創業100年以上の企業を見渡してみると、日本企業が半数近くを占めている。一方で、創業10年以内に9割の企業が倒産してしまうとも言われる。

小厚化成株式会社は、大阪で創業し、108年目を迎える老舗化学品メーカーだ。継続的に発展している企業の秘密はどこにあるのか。創業家の4代目社長、小林豊光氏に話を聞いた。

老舗企業の後継者としての歩み

ーー大学卒業後、2年間は他社で勤務していましたが、どのような理由からの意思決定だったのでしょうか?

小林豊光:
学生の頃から家業を継ぐように念を押されていましたが、社会人経験がないまま家業を継ぐよりも、他社で経験を積んだほうが自社に還元できると考えたからです。製造現場、営業、経理まで、一通り経験させてもらい、ビジネスの現場を身をもって学ぶことができました。

また、当時の社長に「家業を継いで経営者になるのであれば、同世代の同じような立場の人から学ぶことも多いだろう」と青年会議所の活動を進められました。街を良くしよう、日本を良くしようと本気で取り組み続けていたので、2001年には理事長に就任するなど青年会議所での活動には仕事よりものめり込んでいましたね。

ーー貴社に入社後の業務内容を教えてください。

小林豊光:
半分製造、半分営業というバランスで、いわば開発営業のような業務を担当していました。

弊社のようなメーカーでは、担当者が製造方法を理解していないと営業活動が成立しません。製造の仕組みと過程を理解して初めて、営業や商談のシーンで求められるものがわかり、それに対する弊社の提案について考えることができます。

ーーその後、専務取締役に就き、経営者の立場となったことで変化はありましたか。

小林豊光:
最も変化したことは、責任の大きさでしょうか。責任が増えると視野が広がりますし、物事を深く理解するようになります。先代社長である父からも、非常に多くのことを学びました。

一から十まで、一般的に必要とされる知識を超え、父から学ぶことができました。技術的なことはもとより、精神面や振る舞いも父の背中を見て学びました。父の教えがあり、私自身も石橋を叩いて渡るような性格でしたので、大きな損失などはなく、堅実に歩んできました。

永続する企業のたった一つの秘訣

ーー108年の長きにわたり、発展し続けた秘訣は何でしょうか。

小林豊光:
弊社は薬品商店からスタートし、今日の化学品製造業に業態転換しました。取り扱う商品としては、大きく5つの柱があります。自動車、半導体、環境、医薬、食品です。

長く経営を続けられた秘訣は、時代の潮流に合わせて卸業から製造業へ転換し、商品の幅を拡大してきたからです。

医薬品は景気の波に左右されづらいものですが、許認可を得るまでに3年かかりました。これは大変でしたね。薬品に関してもお客様のご要望の数量に対応できる設備を持っているので、30ccのものから30トンのものまで、幅広く提供できます。

これから訪れる未来に対しても、世の中のニーズにアンテナを巡らしながら、変化を恐れずに進んでいく企業でありたいですね。

ーー社内文化に関して力を入れていることはありますか。

小林豊光:
チームプレーとして仕事をすることですね。幅広い商品を扱っているので、取引先の業界によって繁閑時期が異なります。繁忙期の部署の仕事を、隣接部署のメンバーが喜んで手伝いに行くこともあります。部署間の垣根を超えて協力する文化があり、会社全体として良い製品を提供できるように工夫しています。

また、社員同士のコミュニケーション促進企画として、定期的にスポーツ大会や慰安旅行などを実施しています。工場が離れていると、社員同士の連携がどうしても取り難くなるため、会社としても社員同士が接点を持つきっかけを提供しています。

他にも、社員が自主的に改善提案をする制度があります。日々の気づきや改善点を毎月1人1件の依頼書にまとめて提出してもらいます。依頼書の提出が多いほど、仕事に深く向き合っていることの証になります。「依頼書の数」と「仕事の成果」は、比例していると感じますね。優秀な社員は、次々と提出してくれます。このようなことから弊社にはアットホームな雰囲気があり、それが会社の特徴になっていると思います。

それぞれの強みを活かして化学品業界の未来を切り開く

ーー貴社の求める人物とはどんな方でしょうか。

小林豊光:
現在、弊社では中途採用を積極的に行っています。人生100年時代と言われる現代において、たとえば、50歳代の方を採用した場合でも10年以上は働いていただくことが可能です。年齢を重ねると体力の面で若い人に一歩譲ってしまいますが、豊富な知識や経験は替えのきかない強みだと思っています。

働き方については、AIをはじめとするIT技術を駆使して効率化、自動化を進めており、社員それぞれに合った働き方が実現できるよう、さまざまな施策を実施しています。

化学品の業界はまだまだ奥が深く、私たちが対峙するのは「とても大きな山」です。私たちとあなたが、これまでに培ってきた豊富な知識と経験を活かして、一緒に登ってみませんか?

編集後記

時代を捉え、変革と成長を続けている小厚化成株式会社。4代続く歴代の社長の慧眼がビジネスモデルを進化、発展させてきた。社長のみならず、一人ひとりの社員が自社の経営を真剣に考え、改善提案をする文化も、その礎になっているのだろう。次に目指す姿はどこにあるのか、小厚化成に今後も注目していきたい。

小林豊光/1964年大阪府生まれ。1988年京都薬科大学を卒業後、薬剤師の資格を取得。2年間、他社に勤務した後、1990年小厚化成株式会社に入社。2002年、専務取締役に就任。2006年、代表取締役に就任。