※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

株式会社SmartHRは、登録社数6万社(※)を超えるクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供するSaaS企業だ。

異例のスピードで成長を遂げた同社は、創業から9年目で評価額1700億円を突破し、ユニコーン企業のひとつになった。

芹澤雅人氏はCTO(最高技術責任者)を経て、2022年に代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任した。同社のサービスの強みや、芹澤代表が目指す目標などについてうかがった。

(※)SmartHR上で事業所登録を完了しているテナント数(ただし、退会処理を行ったテナント数を除く

SmartHR公式サイト:「SmartHRが登録社数60,000社を突破」(2023年10月時点)

人事労務のクラウドサービスならではの強み

ーーSmartHRの強みをお教えください。

芹澤雅人:
弊社のサービスの最大の強みは、業種や会社の規模に左右されない、労務関連のクラウドサービスを提供している点です。他のBtoB向けクラウドサービスは、業界や企業の規模に合わせてシステムを構築するので、販売先が限定されてしまうんですね。

一方で労務に関しては、年末調整の際も全員同じ書類を使うように、企業独自のものはあまりないんです。こうしたサービスの汎用性の高さが、多くのユーザーを獲得できた主な理由です。

ーーSmartHRのメリットは何ですか。

芹澤雅人:
SmartHRで労務管理を行うことで、副次的に最新かつ正確な従業員のデータベースが手に入ることです。

SmartHRは従業員自身のスマホやパソコンを使って、雇用契約や入社手続きなどの労務手続きをウェブ上で行えます。引っ越しや結婚などに伴う身上変更などもSmartHRで受け付け、そのデータを使って役所への各種手続きを行います。

これらの手続きにより、従業員データは常に最新で正確なデータとしてSmartHRに収集・蓄積されます。従業員データの管理は各社それなりに工数がかかっており、そこを一元管理できるようになることはとてもメリットがあります。

ーー人事・労務システムの分野で貴社は後発になりますが、ここまで規模を拡大できた理由は何ですか。

芹澤雅人:
クラウド上でデータの閲覧や手続きができるのが、他社との大きな差別化ポイントです。当時、他社のサービスはパッケージ型が主流でCD-ROMから特定の端末にインストールして使われることが多く、給与明細の配布や年末調整といった対従業員向けの業務はシステム外で行う必要がありました。

弊社のサービスではクラウドベースなので、従業員にもアカウントが発行され、各人がスマホやパソコンからログインし、さまざまな作業を行えます。また、従業員と人事・労務の担当者のやりとりもSmartHR内でスムーズに行えます。こうした利便性の良さが評価され、多くのお客様に導入いただいています。

創業メンバーの人柄・カルチャーに魅力を感じ、入社を決意

ーー芹澤代表が入社した経緯をお聞かせいただけますか。

芹澤雅人:
大学卒業後は、エンジニアとしてコンシューマー向けのアプリ開発を行っている企業に就職しました。そこで初期メンバーの方から話を聞いているうちに、創業したばかりのスタートアップ企業で働いてみたいという思いが芽生えたんですね。

そんなときに日本最大級のテクノロジーとスタートアップの祭典、「TechCrunch Tokyo」に参加していたSmartHRに興味を持ったんです。労務を切り口に働く人のデータを体系的に集めて管理できる、画期的なプロダクトだと感じました。

それに加え、創業者の人柄やカルチャーにも惹かれ、この人たちとだったら面白いことができそうだと思いました。BtoB向けのシステム会社は、どこか堅いイメージがありましたが、SmartHRは遊び心というか、クリエイティビティが感じられました。

この人たちがつくっているからこそ、システムも親しみやすいんだと納得しました。また、遊び心がありながら、ロジカルに考えて最適解を導き出していくところもいいなと思いました。

ーーエンジニアとして入社し、CTOを経てCEOに就任するまでの経緯を教えていただけますか。

芹澤雅人:
マネジメントは私の性に合わないと思っていたので、入社時にはエンジニアの仕事に専念したいと伝えていました。しかし、入社して1年半ほど経ったときに、会社からマネジメントをしてもらえないかと打診されたんです。

正直悩みましたが、「私が少しでもこの会社に貢献できるなら」と思い、引き受けました。それからCTOに就任し、マネジメントに専念するようになりました。

その後、代表取締役CEOの宮田さんが辞任することになり、次は誰がCEOになるんだろうとどこか他人事のように見ていたんですね。最終的に私とCOO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)が「自分ならどんなCEOになるか」についてプレゼンし、その内容を踏まえて次のCEOが選ばれることになったんです。

そうしてプレゼンの内容を考えるうち、創業メンバーの意思を引き継げるのは私しかいないと思い始めていました。そこで私がCEOになったら会社のカルチャーを強化し、強い組織にしたいと伝えた結果、取締役会でCEOに指名されました。

労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。

ーー今後の展望について、どのようにお考えですか。

芹澤雅人:
年間定期収益が150億円を突破しましたが、ここから1000億円まで伸ばすつもりです。そのくらいの規模の会社になれば、「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」という弊社のミッションの実現に近づけると思うんですよね。

社会に貢献できる企業になれるよう、さらに成長スピードを上げていきたいと思っています。

ーー芹澤代表の目標をお聞かせください。

芹澤雅人:
私の最終的な目標は、すべての方が楽しく働ける世の中を実現することです。

エンジニアをしていた時、私自身が楽しんでいると良いものを生み出せたんです。これこそが、モノづくりの真髄だと思っています。

大学の卒業間近になると「人生の夏休みが終わった」と、社会に出ることをネガティブにとらえる傾向にありますよね。しかし、「仕事=つらいもの」ではなく「仕事=楽しいもの」になれば、仕事の効率が上がり、労働力不足もカバーできると思っています。

ーー貴社が求める人物像を教えてください。

芹澤雅人:
弊社は従業員数が1000名を超えるスケールアップ企業になりましたが、これからさらにギアを上げて成長していきたいと思っています。そのため、変革を起こし、成長をけん引してくれる人材を求めています。

創業期とは違い、多くの優秀なタレントがそろった今は、クオリティの高いものを創造する楽しさを実感できる職場になりました。大胆なチャレンジがしたいという方こそ、弊社にぴったりだと思いますよ。

編集後記

創業時のカルチャーを大切にしながら、会社の規模を拡大するため、日々奔走する芹澤社長。インタビューでは、「とにかく仕事を楽しむことが重要だ」と話してくれた。「誰もがその人らしく働ける社会」を実現するため、株式会社SmartHRは飛躍的なスピードで成長し続けることだろう。

芹澤雅人/2016年2月株式会社SmartHR入社。2017年7月にVPoE(技術部門のマネジメント責任者)に就任し、開発業務のほか、エンジニアチームのビルディングとマネジメントを担当する。2019年1月以降、CTOとしてプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整も担う。2020年11月、取締役に就任。その後、D&I推進管掌役員を兼任し、ポリシーの制定や委員会組成、研修などを通じ、D&Iの推進に尽力する。2022年1月、代表取締役CEOに就任。