
企業活動の要となる基幹システムに対して、専門性の高い運用保守サービスを提供しているビジネスシステムサービス株式会社。同社は親会社のビジネスエンジニアリング株式会社が手がけるプログラムの開発・導入支援の、後工程である運用保守を一手に引き受け、縁の下の力持ちとして着実に実績を重ねてきた。東京本社と関西支店に加え、2024年に秋田支店を設立し、地方を中心にさらなる事業拡大を目指す同社の代表取締役社長、志村健二氏に話をうかがった。
ある日突然、社長をお願いできないか
ーー社長の経歴を教えてください。
志村健二:
私は大学時代、工学部で化学工学を専攻していました。大学の教授から、専門知識を活かせる仕事としてプラント設計におけるプロセスエンジニアリングの仕事を勧められ、東洋エンジニアリング株式会社に推薦していただくことに。私自身の性格や、やりたいことにマッチした社風だったため、喜んで入社しました。
入社後は化学プラントの設計の中枢部分を担うことになりましたが、設計書など海外とやりとりする文書はすべて英語だったので、苦労しましたね。勤務後に英会話学校に通い、基礎から英語の勉強をやり直したほどです。ただ、先輩を始め社内の人間関係には恵まれていましたし、やりたい仕事もできたので、充実した毎日だったと思います。
その後、1999年に新たなキャリアとして、当時の子会社である東洋ビジネスエンジニアリング株式会社(現:ビジネスエンジニアリング株式会社、略称:B-EN-G)へ転籍希望し、SAP事業本部へ配属になりました。ERPパッケージの基幹システムのコンサルタントから始め、その後は、リーダー、プロジェクトマネージャーと順調に責務の範囲を広げ、IoTやデータを活用した新規事業立ち上げにも携わりました。
また、出身母体である東洋エンジニアリングのIT運用業務を外部へ委託したいという依頼を受け、B-EN-Gとその子会社であるビジネスシステムサービス(B-SERV)と共同でその委託先として選ばれました。提案から折衝、条件面のすべてにおいて責任者として務めました。
ーーどのような経緯で社長に就任したのですか?
志村健二:
ある日突然のことでした。自ら手を挙げたわけではなく、前社長とB-EN-Gの羽田社長の指名を受けて社長に就任しました。先のIT運用委託プロジェクトを通じて弊社の内部に十分な理解があったこと、もともと保守ビジネスの成長に深い関心があったことから、「責任を持って会社を成長させてほしい」とお願いされました。さまざまな戸惑いもありましたが、この人事を承諾し、2023年に社長に就任しました。
真摯な姿勢と技術力で、基幹システムの安定運用を実現

ーー貴社の事業内容について教えてください。
志村健二:
弊社の主力事業は、SAP(※)を中心とした統合基幹業務システム(ERP)導入後の運用保守サービスです。また、導入期間中は、B-EN-Gが元請としてプロジェクトを管理していますが、弊社はプログラム開発やテスト、動作確認など、運用と保守を見据えた関り方をしています。システム導入の上流工程である企画、要件定義、設計など高度な知識が必要とされる部分はB-EN-Gが担当し、弊社は途中から参画して、稼働後の運用保守をスムーズに巻き取るという流れです。
実際の運用保守業務は、お客さまとの週次や月次の定例会のほか、インシデント発生時は原因と対策をまとめたレポーティングなど運用のPDCAサイクル管理を行うことで、お客さまのERPの安定運用を支えています。このように真摯に向き合う姿勢が評価されて、長期に渡り運用保守の契約をいただいております。
(※)SAP:世界シェアNo1のドイツのソフトウェア会社
ーー貴社の強みや特徴はどのようなところですか?
志村健二:
弊社ではお互いに助け合いの精神を持ちながら、仕事を進める社内文化が形成されています。この文化によって、誰かの困りごとにいち早く周囲が気づくので、声をかけて一緒に課題解決に取り組むことができるのです。特に「助け合うように」と指示したわけではないのですが、自然にこのような文化が形成されているところが、弊社の特徴といえるでしょう。
秋田支店を皮切りに、地方での人材確保を目指す
ーー今後はどのようなところに注力したいとお考えですか?
志村健二:
地方に採用拠点をつくって社員の採用を増やし、事業規模を拡大したいと考えています。近年、IT人材の不足によって、ほしい人材を採用することが困難になってきました。特に弊社は運用保守の業務を取り扱う都合上、パートナー事業者ではなく社員としてしっかり教育を受け、長く働いてくれる人を募集しています。
そこで、弊社は2024年に秋田支店を設立し、現地で人材を採用する試みを始めました。今後は秋田以外の地域でも同様の試みを継続し、現在約160人の社員を、5年後までに260人に増やせる体制を構築したいですね。最終的に、会社全体で300人規模の体制を整えることができれば理想的です。
ーー最後に、貴社の事業に対する社長の意気込みをお聞かせください。
志村健二:
弊社の業務は、目立たないながらも「縁の下の力持ち」として、お客さまのビジネスを支える役割を担っています。お客さまのニーズや課題に対して適切な提案を行うことで、成功の喜びをともに分かち合い、自分自身の成長も実感できる、非常にやりがいのある仕事です。「お客さまがITで何をしたいか」というところをしっかりと捉え、伴走していくことが、弊社の強みであり社会的な価値だと考えています。
編集後記
システムの運用保守は、ビジネスの土台を支える重要な仕事だ。志村社長の穏やかな語り口からは、それらの仕事への誇りと愛情が伝わってきた。特に印象的だったのは、「助け合い」が自然と根付いている社風の話だ。トラブル対応が日常的な仕事だからこそ、お互いを思いやる文化が培われたのだろう。技術と人間性の両面で成長できる職場の魅力が、取材を通じて浮き彫りになったと感じた。

志村健二/1967年山梨県生まれ、横浜国立大学工学部卒業。卒業後は、東洋エンジニアリング株式会社に入社し、主に海外の化学プラントのプロセス設計業務に約10年間従事。その後、当時の子会社の東洋ビジネスエンジニアリング株式会社(現:ビジネスエンジニアリング株式会社)に移籍。顧客向けERP導入のコンサルタントやプロジェクトマネジャーを務める。同社でIoTやデータを活用した新規事業の立ち上げを牽引。2021年に同社執行役員に就任。2023年に子会社であるビジネスシステムサービス株式会社の代表取締役社長に就任。