株式会社CDRエコムーブメントは、モバイル機器・PCのデータ消去やグレーディング(機能動作、外観状態を評価し、ランク付けを行うこと)など、中古IT機器の再生化事業のほか、IT機器全般に関する総合的なソリューションの提供を行う会社だ。
スマートフォンのデータ消去と機能検査、外観検査においては、「C-DreAm Ⅰ」で完全自動化に成功し、更に、進化させた「C-DreAm Ⅱ」の開発を進めている。
今回はそんな同社の代表取締役、近藤憲氏に、創業の経緯や自動化技術、経営者として大切にしている考え方、今後の展望などを聞いた。
持続可能なビジネスへの挑戦!自動化の先にある可能性
ーー創業の経緯や創業時のエピソードを教えてください。
近藤憲:
弊社は、父が創業した会社を私が引き継いで始まった会社です。現在行っている中古IT機器のデータ消去の事業は、父の会社では行っていませんでしたが、某携帯キャリアから「データ消去業務をお願いしたい」と頼まれたことをきっかけに始めました。
事業を始めるために、当時名古屋にあった拠点からメンバーを東京に連れてくることになりました。社員は30名ほどでしたが、1日1万台など多くの依頼をいただき、気づけば社員数は200人規模になっていました。
ーー事業を始めるにあたって、どのような苦労がありましたか。
近藤憲:
業務効率化のために、コンベアを導入しようとしたところ、最初は協力会社や社内からの反対が多くありました。また、導入後は機種、状態などが異なる中古端末がコンベアにランダムに流れてくるため、次の工程に進めるための技術的な対応が難しかったのも苦労した点です。
試行錯誤をする中、サーキュラーエコノミー(循環経済)を意識し始めたのがこの頃です。「中古端末を再びしっかりと使える形にして循環させる会社でありたい」と目標を決めてビジネスを始めたことで、結果として収益を上げることができました。
ただ、その後も、自動化をさらに進めようとすると、周囲から「わざわざ自動化にコストをかけるのではなく、派遣社員の数を増やせばいいのでは」と反対されました。
しかし、仕事を覚えた派遣社員が辞めてしまえば、新たにまた人を育て直さなければいけなくなります。それでは余計にコストがかかってしまうため、自動化に向けて舵を切る方向に話をまとめ、ようやく本格稼働させることができました。
AIが傷や凹みを自動判定して行うグレーディングシステムが強み
ーー貴社の方向性や自動化装置の今後の活かし方についてお聞かせください。
近藤憲:
私は、弊社を「サーキュラーエコノミーに対してソリューションを提供する会社にしたい」と思っています。また、BPO(業務プロセスの一部を専門業者に外部委託すること)の分野では、弊社が中古機器の処分を一括して引き受けることによって、顧客にもっと上流工程の仕事を目指してもらえるようにサポートしていきます。
中古端末再生のための完全自動化の装置は1年ほど前にできたばかりですが、この機械では、AIを使ったグレーディング(外観状態の評価)により力を入れていきたいですね。外装の傷などを見て判定する弊社のグレーディング技術は非常に好評で、機能動作との組み合わせによって17段階のランク判定にも対応できる点が、他社と違う強みだと思います。
ーー会社として目指していることは何でしょうか。
近藤憲:
特に大手の企業は、社長も庶務も関係なく、全員が高価な新品のPCを買いそろえる傾向にあります。しかし、すべての人が同じ端末を使う必要はないと私は思っていますし、不要になったら全部捨ててしまうのは非常にもったいないことです。
弊社としては、中古と新品のPCが混ざったポートフォリオを通して、そういった企業がどのようなPCを買えば最適かを提案していきたいと考えています。また、使われたPCがどのように処分されるのか、最後まで考える必要があると思っています。
AI化が進む時代の流れにいかに対応するかが今後の鍵
ーー経営者として大切にしていることはありますか。
近藤憲:
「追い詰められた決断はしたくない」を信条にしています。理由としては、追い詰められた際の決断は、最悪の結果になることが多いからです。そのような状況にならないためには、常に情報を収集し続け、相手に対して上手を取り続けることが大切です。この点については、経営者が最も気配りしなければいけないと思っています。
ーー今後の展望を教えてください。
近藤憲:
改めてになりますが、弊社を「サーキュラーエコノミーに資するソリューションを提供する会社」にすることです。そして5年後までに、売上50億円を目指します。
そのほか、営業強化・新商品開発・採用強化にも力を入れていきます。営業強化でいえば、大手を開拓するためには「勘所」をおさえることが重要です。特に若手にその勘所を身に付けてもらうために、社員教育に注力していきたいと思います。
新商品開発でいえば、今あるシステムの延長線上としての商品を開発していきたいです。今のシステムに何を追加すれば効率化できるか考えていきます。
そして採用強化では、新商品の改善システムを経験している人やソフトウエアに強い人、大手向けの営業ができる人を採用したい。中途採用人材ももちろんですが、若手を中心に、中途の人は若手を助けるという観点で採用活動を行う予定です。
今後は、AIが主体となったスマホやPCなどの端末が増えていくことが予想されます。そういった流れにどのように対応するのかが1番の課題ですし、弊社はAIに対応できるパイオニアのような存在になりたいと思っています。
編集後記
自動化装置の導入などで、周囲の反対を受けながらも会社をあるべき方向へと導いてきた近藤会長。さまざまな分野にAIが取り入れられる中、どのように適応していくかが今後の鍵となっているという。
今回の取材では、人材面を中心に社内の体制強化に努め、サーキュラーエコノミーを通して社会に貢献したいという近藤会長の強い思いに触れられた。
近藤憲/1949年岐阜県生まれ。1972年京都大学経済学部卒業。三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し銀座支店と本店を経て米国へ転勤。その後シンガポール支店、ロンドン支店、本店に勤務。2000年に三菱銀行から国際証券株式会社に転籍出向。10社余りの証券会社統合に従事。最終的に成立した三菱UFJ証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)取締役兼専務執行役員投資銀行本部長に就任。2009年に株式会社アドバイザリー・カンパニーを設立し、代表取締役社長に就任。2016年に株式会社CDRエコムーブメントを設立し、代表取締役に就任。