※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

長い歴史を持つ企業でも、時代の流れに合わせて変化を求められる。安全な現場作業をサポートする商品を取り扱う株式会社のばのばの代表取締役である野畑昭彦氏は、事業の変化を学びの機会と捉え、その拡大に成功している。

新たな時代に求められるものは何か、そこで学んだことを既存事業へフィードバックするにはどうしたらいいのか。つねに進歩を考え続ける野畑氏は行動力の塊だ。そんな野畑社長に、これまでの経緯や、ユニークな新事業についてうかがった。

安全用品の卸売会社として、国内トップクラスの取引メーカー数を誇る

ーーまずは貴社の事業内容についてお聞かせください。

野畑昭彦:
作業服店様や建築金物店様などを対象に、作業用の手袋や安全靴などの卸売りをしています。仕入元は国内メーカーがメインですが、自社での輸入もしています。

自社オリジナル商品では布製の作業靴や人工皮革の手袋等の取扱いを増やしています。

ーー貴社が誇る強みは何でしょうか。

野畑昭彦:
弊社の強みは、安全靴や作業用手袋といった安全用品業界において、取引メーカーの数が国内トップクラスであることです。取引メーカー数でいえば、おそらく日本で1番多いのではないでしょうか。

近年、さまざまなメーカーが安全用品市場に参入しているため、小売店様は効率よく複数のメーカーの商品を見比べて仕入れる方法を求めています。多くのメーカーと取引している弊社なら、その悩みにダイレクトに応えられるわけです。

学びのために身を削り、消費者の声に耳を傾ける

ーー社長に就任した経緯を教えてください。

野畑昭彦:
私が社長になった経緯は父からの世代交代によるものです。会社の引き継ぎは自ら名乗り出ましたが、じつは乗り気でない部分もありました。

しかし、私が会社を引き継ぐことで喜んでくれる家族がいると考え、祖父の代から続く会社を継ぎ、家族の思いに応えたいと思いました。

ーー会社の運営で悩んだことはありますか?

野畑昭彦:
卸業者という立場上、消費者の声が聞けないことが悩みでした。消費者の声を事業にフィードバックしたくても、そもそも接する機会がなかったのです。

この課題を解決するために、販売先のない平塚市に小売店を構え、直接消費者の声を聞くことにしました。しかし、そこで予想外なことが起こります。同業他社が弊社の出店について触れ回り、多方面の耳に入ってしまったのです。弊社に競合の意図はないとはいえ、卸売業者が小売店を出せば安く売れるわけですから、卸先は歓迎しないですよね。これにより弊社は多くの取引先を失いました。

かなりの痛手でしたが、事業改善には消費者の声が不可欠と考え、その後も小売店を営業し続けました。そのかいがあって、消費者の生の声に触れることができ、卸業者でありながら消費者の意見を反映した商品の提案ができるようになりました。

会社の新規開拓を支える「のばのばかわら版」とは

ーー長年にわたって出している「のばのばかわら版」とは、どのような内容ですか?

野畑昭彦:
「のばのばかわら版」は、弊社が小売店を運営して得た営業ノウハウを詰め込んだ新聞です。多くの小売店様に送り続けており、「のばのばかわら版」から弊社を知ってくださった企業様も多くあります。

デザインは手書きイラスト付きの手作り感満載な感じですが、むしろこの「手作り感」が手に取るキッカケを作っているようです。

これが商談のきっかけになることも多く、新しい企業様へ出向いた時には「いつも読んでたよ」と歓迎してもらえることもあります。弊社にとって「のばのばかわら版」はいわば顧客との架け橋であり、事業の生命線ともいえる存在です。

今後は既存事業を盤石にしつつ、新規事業の育成にも取り組む

ーー今後の展望をお聞かせいただけますか?

野畑昭彦:
今後は新規ニーズの掘り起こしを推進する方針です。未開拓エリアへの訪問はもちろん、既存取引先にも顧客単価を引き上げるアップセルやクロスセル(併せ売り)でアプローチしていきたいと思います。

安全用品のニーズは使うシーンによって異なりますし、時代によって変化するものです。その点を踏まえたうえでお得意様の事業課題と向き合えば、お得意様も新しいニーズが見つかるはずと考えています。

また、安全用品以外の事業についても拡充していきたいと思います。現在、自社IP(知的財産)商品を取り扱う株式会社うんこと、広告業を行う株式会社おならを運営しています。

インパクト抜群!うんこグッズを取り扱う「株式会社うんこ」を立ち上げた理由

ーーなぜ「株式会社うんこ」を立ち上げたのですか?

野畑昭彦:
うんこは、ネットショップを学ぶために始めた会社です。以前のばのばのネットショップを開設したことがあるのですが、実店舗同様にお得意様から歓迎されず、閉店を余儀なくされました。

しかし、ネットショップのノウハウは必要です。そんなときに思いついたのが、既存の商品とまったく関係のない「うんこの絵がついたTシャツ」を売ることでした。

うんこの恩恵は大きく、事業を通じてサイトの解析やIPの強さなども学べました。こうして得たノウハウは、のばのばへのフィードバックに活用しています。ただ、うんこ事業を始めたばかりのころは怪しいサイトと思われていたようで、ユーザーから警戒されることがよくありましたね。

おならがうんこを手伝う?広告宣伝業「株式会社おなら」も設立!

ーー「株式会社おなら」も立ち上げたそうですね?

野畑昭彦:
株式会社おならは、株式会社うんこのYouTubeのコンテンツや「うんこ新聞」などを作っている広告宣伝会社です。おならがうんこを手伝っています。

コンテンツ部門を別会社にしたのは「コンテンツ」という、在庫管理の必要がない業態を学んでおきたかったためです。維持管理のコストが少ない業態はコスト面から見ると魅力的です。

おならで学んだノウハウは、うんこ同様にのばのばへフィードバックします。新規事業に取り組みながら、新たなノウハウをフィードバックすることにより、のばのばの既存事業も強固にできれば、新規事業の意義はより増しますよね。今後も学びとフィードバックを大事にし、事業推進に取り組んでいきたいと考えています。

編集後記

「家族のために会社を継ぐ」という気持ちから会社を引き継いだ野畑社長。仕事に向き合う姿はフロンティア精神あふれる挑戦者そのものだ。

必要と思うことは自ら学びの場を設けてとことんやる。一見ふざけているような株式会社うんこが成功したのも、根に熱い探求心があるからではないだろうか。次はどんな事業に取り組むのか、野畑社長の行動から目が離せない。

野畑昭彦/1989年有限会社野畑商店入社。1991年に有限会社ピクニックスを設立。2000年に野畑商店の代表取締役に就任し、2001年に輸入業務開始。2005年に野畑商店を株式会社のばのばに組織変更。2007年ピクニックスでネットショップ開設。2010年のばのばで中国青島に倉庫開設、2013年中国厦門に倉庫開設。2013年株式会社ばのばのを設立。2017年ばのばのを株式会社うんこに社名変更。ほか、広告宣伝会社として株式会社おならを設立。