※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

自動車産業は大きな転換期を迎えている。電動化の波が押し寄せ、車載コンピュータの高度化が進む中、整備現場では新たな技術対応が求められている。部品供給の在り方も、単なる物流機能から技術サポートを含む総合的なサービスへと変化を遂げつつある。

そんな中、熊本、福岡、山口の3県で事業を展開するオートアライアンスホールディングスは、チーム制という新たな組織体制を導入し、変革に挑んでいる。「変化を受け入れる」という理念を経営の軸に据える木下和馬取締役に、自動車アフターマーケットの未来像と、新たな挑戦について話を聞いた。

技術と物流で築く新たな整備支援モデル

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。

木下和馬:
私たちは自動車の補修部品やメンテナンス部品を、整備工場や自動車販売会社に提供するBtoB事業を手がけています。熊本、福岡、山口の3県で事業を展開しており、取引数は西日本最大規模を誇ります。自動車部品は1台あたり約三万点もあり、その裾野の広さが大きな特徴です。

部品の種類が膨大で、品番特定が難しく、お客様ご自身が品番の特定に苦労されることが少なくありません。そのため、適切な部品選定から代替品の提案、確実な納品に至るまで対応しています。

ーー他社と比べて特徴的な取り組みは何ですか。

木下和馬:
最大の特徴は物流体制にあります。十分な在庫を自社で保有し、迅速な納品を可能にしています。さらに、技術の高度化に対応するため、2つの専門部隊を設置しました。1つは設備機器のメンテナンスチームです。自動車整備用リフトなどの設置から保守まで、一貫した業務支援を行なっています。

もう1つが整備士チームです。近年の自動車は電子制御が進み、ECU(エンジンコントロールユニット)の診断が必要なケースが増加しています。私たちの整備士チームは、整備工場様向けに高度な技術支援を提供し、複雑化する整備ニーズに対応しています。

専門チーム制導入による働き方改革

ーー就任後、どのような改革を進めていますか。

木下和馬:
業界特有の文化である専門知識を持った個人完結型の働き方から、情報とスキルを共有するチーム制を推進しています。従来のままでは休暇取得が難しく、長期的な事業運営に課題があったのです。そこで、シフト制や拠点統合を進め、効率的な人員配置を実現しました。さらに、社内LINEで情報共有を強化し、特定の担当者不在時も対応可能な仕組みを構築しました。

これにより、年間休日の日数を2023年の105日から今年度は110日に増加しました。2028年には120日を目指しています。この目標には業務の標準化と、社員一人ひとりの理解が不可欠です。特に長年勤務している社員には丁寧に説明し、対話を重ねながら進めています。

EV時代を見据えた事業多角化への挑戦

ーー新規事業についての展望をお聞かせください。

木下和馬:
新たに導入したチーム制を活用し、次の展開も始めています。既存の乗用車部品だけでなく、10トン車などの大型商用車や輸入車の部品という新分野に専門チームを配置しました。これにより、これまで対応が難しかった分野へのサービス提供が可能となりました。

さらに将来は、自動車産業で培った技術や物流網を、さまざまな産業機器分野に応用していく構想を描いています。部品業界では、EV化の進展が事業に与える影響も懸念されており、事業の多角化は重要な課題です。現在は既存事業の拡大や地域展開に注力していますが、新規分野については慎重に検討を進め、今後3〜5年で具体的な形にすることを目指しています。

業界再編が進む可能性も考慮し、今のうちに力をつけておくことが重要です。かつてホームセンター事業から撤退した経験を教訓とし、戦略を進めていきたいと考えています。

ーー自動車部品業界を目指す方々へメッセージをお願いします。

木下和馬:
自動車部品の仕事は、一見すると専門性が高いように思えるかもしれません。しかし、弊社では入社後3年目まで、数ヶ月ごとに集合研修を実施し、段階的に知識とスキルを習得できる環境を整えています。また、育休制度など福利厚生の充実にも注力しており、長期的に働ける環境づくりを進めています。ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

編集後記

取材を通じて印象的だったのは、「変化を受け入れる」という木下取締役の経営哲学が、リーマン・ショック後の商社勤務時代の経験に深く根ざしている点だ。多くの営業拠点を抱える企業でありながら、個人完結型からチーム制への転換を実現し、在庫管理から技術支援まで、専門チームを設置することで、より高度な顧客対応を可能にしている。

単なる部品供給にとどまらず、技術と商社機能を融合させた新しいビジネスモデルの構築に挑む同社の取り組みは、自動車アフターマーケットにおける次世代の企業像を体現している。

木下和馬/1985年熊本県生まれ。成城大学卒業後、2008年に専門商社に入社。2019年にオートアライアンスホールディングス株式会社のグループ会社である株式会社フタバへ入社し、2024年より現職。