国連ではSDGsを掲げ、2030年までに達成すべき貧困や気象変動など世界の問題に対して、企業や個人が持続可能な目標を掲げ、実行することを推奨している。
株式会社ジツダヤは、2015年に国連がこの目標を掲げるよりも早く、環境先進国ドイツで100年近く使用されている建材を中部地方にて販売を開始した。代表取締役社長の友松氏に、今注力していることや社内の取り組みについてうかがった。
キャリアの道のりで学んだ仕事をする上で大切な経験
ーー社長になるまでの経緯を聞かせてください。
友松正護:
新卒時には前社長である父の紹介で双日建材に入社し、主に合板などの基礎資材の営業を経験。4年勤めた後に、同じく建材を扱うパナソニックで住設建材の営業をしながら人脈を培いました。
ーー今までの経験が現在の仕事に活きていることはありますか。
友松正護:
パナソニック勤務時代、社会人として忘れられない経験をしました。当時、太陽光パネルの導入に向けての注文が殺到しており、通常納期は4〜6ヶ月かかっていました。そんな中、私の段取り不足と手配ミスで納期2カ月前に商品手配ができていないことが分かりました。
そこで上司に相談したところ、「仕事は人で流れている。人は最後は熱意で動くんだ」という言葉をいただきました。その後、毎日関係各所に働きかけ、上司も本社に足を運んで頭を下げてくれた結果、無事に納期に間に合わせることができたのです。
この経験から、「あらゆる手を尽くした後に、人は熱意で動く」という言葉が、現在でも私の中で大切な指針となっています。特に弊社は製造業とは異なり自社で商品をつくっているのではなく、人間力でお客様の心を掴むことが重要なので、この言葉は今でも私の行動の基盤となっています。
仕入れ先や地場の工務店との「共生共栄」
ーー貴社の事業について教えてください。
友松正護:
メインは資材流通業で、弊社の売上構成の9割は資材流通です。社内には建築、資材、リフォーム、外構(庭やエクステリア)の各部署があり、住宅に関してはワンストップで受注生産が可能です。土地を買うこと、家を建てること、さらには売却することもできる。これが弊社の大きな特徴です。
また、弊社は「共生共栄」の理念を掲げており、弊社のみの利益を追及するのではなく、仕入れ先様や地場の工務店様とともに仕事をつくり上げていくことを信条としています。
ーー貴社の強みを聞かせてください。
友松正護:
売上の9割が既存顧客であることに表れているように、弊社の強みは技術面と人間力にあります。また、営業エリアの北と南に位置する小牧店と鳴海店の2つの配送拠点により、物流面でも迅速な納期対応が可能で、指定された場所に細やかに配送できる点も弊社の大きな強みです。
さらに、約10年前から「ECOボード」という木の繊維を用いた断熱材の取り扱いを開始しました。これは、環境先進国であるドイツからの輸入商品で、その優れた商品力がお客様が購入いただく決め手となっています。日本全国でも取り扱っている建材流通店はわずか6社のみで、東海エリアでは弊社が唯一の取り扱い業者です。
このECOボードの価値を最大限に活かすため、弊社ではECOボードを使用した住宅の建工務店をグループ会社として設立しました。
また、ECOボードがもつ理念に共感していただいた工務店様17社とボランタリーチェーン(同じ目的意識を持った小売店同士が組織化し、チェーンオペレーションを展開する)を組織し、その普及に努めています。
誰もが働きやすい未来を目指して
ーー人材採用の強化に向けて、貴社で取り組んでいることはありますか。
友松正護:
今後は、新卒採用と中途採用の両方を増やしていきたいと考えています。弊社は業界内ではある程度認知度はあるものの、BtoBが主な事業領域のため、新卒の学生にはあまり知られていません。
それでも弊社に入社してくれた方々とともに成長すべく、コミュニケーションを積極的に図る体制を整えています。具体的には、全社員が、社長と年に2回、直属の上司とは勤務評価のフィードバックとして同じく年2回の面談を実施しています。
さらに今期からは、2ヶ月に1回の部署内グループディスカッションの機会を設けました。これまでの2年間は、心理的安全性の高い組織をつくることを目的に、上司と部下の垣根をなくそうと直属の上司と2ヶ月に1回、「1on1ブレイク」と呼ぶ15分程度の雑談の場を設けてきました。これがある程度軌道に乗ったことから、今度はメンバー間の垣根もなくしたいという思いで、スタッフとも相談して新しい方法に変更したのです。
これらの取り組みが功を奏し、弊社では私や取締役、上司、そしてメンバー同士のコミュニケーションが活発に行われています。
ーー今後の展望を聞かせてください。
友松正護:
売上の9割を住宅資材が占める弊社ですが、今後は住宅業界内において新たな事業展開を目指していきます。具体的には、ECOボード住宅が集まる街区『エコボテラス』のプロデュース。さらに高付加価値賃貸住宅やマンションの全館空調の商品開発にも着手しています。
また、今後も「人間力」の強化に注力していきます。弊社では、SDGsから言葉を借り社内で「SDJs」活動を開始しました。これは、持続可能なジダツヤの発展という思いを込め、全ての部署から数名ずつ集まってもらい、10年後の弊社を考える場を設ける取り組みです。そして、10年後の目指したい会社のビジョンが定まったのちに、各部署で現状の課題を洗い出し、具体的な改善策について話し合っています。
私自身は、10年後のキーワードを「ファミリー」と定めています。社員同士が家族のような意識を持って、誰かを蹴落として上にあがるのではなく、「共生共栄」の理念のもと、誰も見捨てず、困難に直面した際には助け合える、和の精神を持つ企業にしていきたいと考えています。そのため、障害のある方やシニアの方を含め、どんな方でも働ける組織体制の構築に努めていきます。
編集後記
何度も繰り返された「共生共栄」という言葉。トップダウンではなく、社員とともに会社、そして社会を築きあげていきたいという友松氏の思いが溢れている。友松氏だからこそ、取引先の工務店や施工主が彼の仕事に満足し、リピーターとなるのだろう。株式会社ジツダヤの商品を選ぶことで、環境に優しい住宅やオフィスが建てられる。この取り組みが続けば、環境保全も一歩ずつ確実に広がっていくだろう。
友松正護/1987年愛知県生まれ、日本大学経済学部卒。双日建材株式会社で4年間、パナソニック ハウジングソリューションズ社で2年間の修行期間を経て、2015年に株式会社ジツダヤへ入社。2024年9月に同社代表取締役社長に就任。複数の住宅業界団体にて地場住宅産業の活性化を促す活動に注力。