※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

ひかり産業株式会社(東京都墨田区)は、包装紙をはじめ紙資材の製造・販売のほか、外食産業の手足となって幅広いサービスを提供する。

具体的には物流や発注システム、人材といった外食のソリューションを一手に引き受け、外食業界のコーディネーターのような役割を担っている。
実はこのような事業を行っている企業は多くはなく、明確な大手の競合が存在しないのが1つの特長だ。

独自性の高さが魅力の同社だが、キーマンである代表取締役社長の神戸淳氏がどのような人物か、エピソードや経営方針と合わせて話を聞いた。

独立しようと退社した先に家業の組織変動

ーー会社の歩みと社長に就任するまでの経緯をお聞かせください。

神戸淳:
弊社の発祥は、祖父が立ち上げた紙メーカーのユタカ紙業から独立した、有限会社ひかり加工所という子会社です。1999年に株式会社に組織変更して現在の社名になりました。

父が社長をする家業でしたが、兄がいますので私が後を継ぐ予定はなく、普通に大学を出て大手メーカーに就職をして、営業に配属されました。
しかし、尊敬できる上司にも出会えなかったですし、仕事にやりがいを感じられなかったので、独立したいと考えるようになりました。

入社から3年後に会社を退社して起業を考えていたところに、ユタカ紙業の工場部門を管理する、ひかり加工場の組織変更の話が持ち上がり、いくつかの事情が重なって私が参画することとなりました。そして入社してさまざまな部署で修業を積んだあと、2017年に社長に就任することになったのです。

入社当時に社長だった父を尊敬し、仲が良かったのは幸いでした。私は何かを始めるとき事前にすべて報告していましたし、父も仕事をいったん渡すと決めたら一切口を出さないタイプでした。

世間一般に父と子の確執をよく耳にしますが、私たちは逆にその辺はうまくやっていましたから、いい師弟関係でいい経営ができていたと思います。

小回りが利いて決定が早いのはアドバンテージ

ーー改めて、現在注力する事業についてお聞かせください。

神戸淳:
現在の柱は、プラットフォーマーとしてお客様の支えとなる事業であり、具体的には「受発注のコールセンターや、物流事業などのわずらわしいシステム」を全部アウトソーシングできるサービスです。

ターゲットの中心は多店舗展開する外食産業です。手離れが良くなる私たちのサービスはある程度大きいほうが有効ですから、幅広くとれば20〜300店舗ぐらいの規模にマッチします。

包装資材以外にも食材、備品等店舗で使用する商品すべてを取り扱っており、人材まで含めたトータルコーディネートを展開できるのは、このビジネスの醍醐味です。

ーー貴社の強みはどんなところでしょうか?

神戸淳:
強みは身軽なところですね。この規模で従業員は30人弱ですから小回りが利きます。他社資本などの関係性もないため、独自の考えで動いていける。

そして取締役は私しかいませんから決定も早い。何かを決めて始める間にプランとしての「旬」が終わっているようなことはないですからね。

家族のように思う社員のために会社を盛り上げる

ーー今後の経営テーマや目標についてお聞かせください。

神戸淳:
私には明確な後継者がいないので、できるだけ早く誰かが新たに社長に就任しても動じないように、人事面での仕組み化といった組織改革を進めています。

また、弊社の昔からの従業員には、会社の近くにお住まいで、長く働いていただいている方がたくさんいます。世の中の最先端にいる激しい競争の中の人たちと違って、落ち着いている方々です。

社員が「結婚した」「家を買った」と聞くと、身内のようにとても嬉しい気持ちになります。だからこそ、皆の生活を少しでも良くしたいという願望は強くあります。

そのためにも、1つの節目として売上高100億円を当面の目標とし、従業員が安心して働けるよう、ある程度は規模を拡張していきたいと考えています。

ーー最後に、20代30代の方にアドバイスをお願いします。

神戸淳:
いろいろ考え抜いた末に嫌になって、動き出す前に何かを諦めるのはもったいないと思っています。考えるだけで行動せず、若いうちに冷めてしまうのは早すぎる。新しいことに思い切ってトライしなければ見えない景色もあるので、白黒つけられるまで挑戦してみるべきだと思います。

加えて言うなら「人生100年時代」といわれる中で、仕事だけがすべてではなく、いい仕事をするためにはプライベートを充実させることも大切だと知ってほしいですね。

編集後記

神戸社長は、前身の会社で父親と一緒に働いた当時のことを「素晴らしかった」と振り返っている。自分の親とのやりとりをそこまで誇れる人物がどのくらいいるだろうか。

同氏の発言には、ポジティブな思考があふれ出ている印象を受けた。

目下のところ後継者は模索中のようだが、親近感が湧く人柄だけに、「神戸社長のような人物のもとで働きたい」と思う人はたくさんいるのではと感じた。

神戸淳(かんべ・じゅん)/1973年東京都生まれ、立教大学卒。大学卒業後、メーカーの営業を3年間担当し、ひかり産業株式会社に入社。2017年、代表取締役社長に就任。