
会社のユニフォームは第一印象として大きな影響を与える、組織の「顔」とも呼べる存在だ。そんなユニフォームを創業から100年以上つくり続けているのが株式会社カマタニである。官公庁から大企業、学校など、多くの顧客と長年にわたる取引を続けている同社は、近年医療・介護施設向けの寝具等を扱うリース事業にも注力し、一人で15秒程度でセットできる「時短フィットシーツ」の導入や、完全三分割構造の「独自マットレス」の開発などの業界の常識を覆す画期的な商品開発で急成長を遂げている。これらの取り組みや実績は経済産業省からも大いに評価されている。代表取締役の鎌谷正弘氏は、これもひとえに顧客から厚い信頼を得ているからこそだと語る。100年企業としての揺るぎない強みや、社員の主体性を引き出す革新的な制度、そして未来を見据えた新たな事業構想について話をうかがった。
世代交代の苦難を乗り越えリース事業で挑んだ収益安定化
ーーまずは、貴社の代表に就任された経緯を教えてください。
鎌谷正弘:
私が代表に就任したのは1990年のことです。カマタニで製造部や営業部を経験したのちに、先代である父から世代交代で代表を引き継ぎました。就任直後はバブル崩壊による業績悪化がありましたが、多くの社員に助けられながら、なんとか会社を切り盛りしました。
振り返ると、私は人に助けてもらうことが多かったように感じます。会社というチームは代表一人で成り立つものではありません。これからも社員というメンバーたちと協力しながら、会社を成長させていきたいですね。
ーー代表就任後に直面した最大の困難は何でしたか。
鎌谷正弘:
代表に就任した1990年以降の景気変動によって、業績が悪化したことです。特に2008年のリーマン・ショック以降は大変でした。その時に取り組んだのが、毎日の新規営業と、病院や福祉施設向けの寝具・リネン類を提供するリース事業の開拓です。新規営業をコツコツ続けることで顧客数を増やすと同時に、リース事業でベースとなる売上高を底上げし、収益の安定化を目指しました。これらの活動はすぐに効果が出るものではありませんでしたが、継続して取り組むことで徐々に実を結びました。
また、リース事業への取り組みは、「季節性商品」であるユニフォームの弱点を補完する効果も発揮しました。リース商品なら毎月コンスタントに売上が立つため、ユニフォームの需要にムラがあっても全体の売上高が極端に減ることはありません。
顧客ファーストの実践で、良好な関係を築く

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。
鎌谷正弘:
ユニフォームの企画から製造・販売・レンタルまでを一貫して手がけています。会社の「顔」であるユニフォームを通じて、組織のブランド力向上や生産性向上、安全性の確保などに寄与することをミッションとしています。
弊社は創業の1919年から100年以上の歴史があり、これまで警察庁や防衛省、JR、日本郵政、NTTなど、さまざまな組織のユニフォーム製作に携わった実績があります。創業時は衣料品や雑貨などを扱う小売商を営んでいましたが、1942年に陸軍の偕行社の指定工場となり、将校軍服の大量生産に従事したことをきっかけとして、ユニフォーム専門企業として製造から販売まで手がける会社に転身しました。
ーー貴社の強みを教えてください。
鎌谷正弘:
弊社の強みは100年以上の積み重ねで培った技術やノウハウ、そして顧客からの信頼です。ユニフォームは長く使い続けるアイテムなので、自然と顧客との付き合いも長くなります。それだけに、顧客からの信頼を得られる体制が求められます。顧客からの信頼を維持し続けるには、技術やノウハウ以上に「誠実さ」が重要です。顧客のニーズや悩みに真摯に向き合い、ユニフォームを通じて新たな価値を創出してこそ、真に信頼できる会社になれるのです。
また、顧客ファーストで、他社が取り組まないことにあえて取り組む姿勢も大切にしています。たとえば、近年大きく成長している寝具・リネンリースの分野では、商品を顧客間で使い回さず顧客ごとに専用のリース品を用意しています。これは当たり前のようですが従来のリネン業者では当然のように使いまわしが行われてきました。私たちは各顧客の専用品として管理を徹底することで、医療現場などにも圧倒的な安心感を提供しています。
ーーリース事業における、貴社ならではの特徴や強みについて教えてください。
鎌谷正弘:
実は、弊社はこのリネンリース分野においては一番後発の企業です。しかし、だからこそ既存業者の「自社都合」を押し付けるやり方を客観的に見直し、他社が手間を理由に敬遠するような顧客ファーストの取り組みを徹底することができました。具体的には、以下の3つが弊社の事業を牽引する大きな特徴であり、強みとなっています。
1つ目は従来のリネン業界では、リース品を複数の施設間で使い回すのが一般的でした。しかし弊社では、「商品を他施設と使い回しをせず、顧客ごとに専用のリース品を用意する」という徹底した個別管理体制を採用しています。あえて手間の掛かる手法をとることで、衛生面が強く求められる医療・介護現場に圧倒的な安心感を提供し、他社との明確な差別化を実現しています。
2つ目は現場の負担を減らす画期的な商品の提供です。たとえば、従来は綺麗にシーツを交換するのに二人で1分以上かかっていたものを、四隅を引っ掛けるだけで一人で15秒程度でセットできる時短フィットシーツを採用し、作業負担を大幅に軽減しています。また、独自開発のマットレスは、熱に強くへたりにくいポリエステル素材を採用し、全体を完全に三分割できる構造にしています。汚れた部分のみを交換できるうえ、部位ごとに硬さを調整することも可能となり、お客様から大変好評をいただいています。
3つ目は経営基盤を強固にする「ユニフォーム事業とのシナジー」です。自社における事業構造としての強みもあります。「季節性商品」であるユニフォームは需要にムラができやすいという弱点がありましたが、毎月コンスタントに売上が立つリース商品を展開することで、会社全体の収益安定化に成功しました。この事業間のシナジー効果により経営の安全性が高まり、さらなる設備投資やエリア拡大といった大胆な挑戦が可能となっています。
顧客に寄り添う提案には「人間力」が必要
ーー仕事で特に大切にしていることは何ですか。
鎌谷正弘:
特に大切にしているのは「人間力を高めること」です。仕事を通じて顧客との信頼関係を構築するには「相手に寄り添う提案」が不可欠です。そのためには、物事を相手の立場から考えたり、相手を思いやったりといった人間力が欠かせないのです。
このマインドを共有するために、新入社員には必ず「人間と生活の向上を目指す」という経営理念の共有をしています。社員たちにマインドが浸透すれば、自然と人間力が上がり、顧客に寄り添う提案ができるようになるものです。
弊社が官公庁や警察、防衛省といった信頼のある組織とお付き合いできているのも、長年にわたって信頼関係を積み重ねてきたからに他なりません。目先の利益ではなく、良好な関係の構築を第一に考えれば、自然と利益は増えていくものです。
社員の声を制度化し主体性を育む環境づくり
ーー社風や、社員の働きやすさを向上させるための取り組みについて教えてください。
鎌谷正弘:
非常に風通しが良く、従業員同士の仲が良いのが自慢です。弊社では年に3回、「青葉会」と呼ばれる各部署の従業員代表との懇談の場を設け、ベースアップや賞与の話だけでなく、現場の困りごとや要望を直接吸い上げています。
実際、従業員の要望から育休中の社員をカバーするメンバーに追加手当を支払う「育休応援制度」や、入社半年未満でも最低2日は有給を取得できる「ビギナー休暇」といった人事制度が生まれました。さらに、ボランティア活動に参加する際に会社の承認のもと「ボランティア休暇」も新設しました。そして現在はより働きやすい環境を整備するため、紙ベースだった勤怠管理をシステム化することにより業務を効率化し、残業時間を削減していく取り組みも行いました。
ーー今年から拡充された新人研修の具体的な内容をお聞かせください。
鎌谷正弘:
これまで7~10日程度だった新人研修を、今年から1ヶ月間に拡充しました。各部署を回って実際の業務を経験しながら、先輩社員との関係を構築する「アイスブレイク」の時間を重視しています。現場の顔と名前を覚えることで、配属後も質問しやすい環境を作ることが目的です。
若手の主体性を後押しする風土もあり、入社間もない新入社員が研修での学びを活かし、自ら動画編集アプリを使って自社のPR動画を作成してくれたという頼もしいエピソードもありました。今後は新卒だけでなく、中途採用の社員にも同様の研修を行っていく予定です。
顧客との接点をつくり、誠実な関係を築ける人材を求める

ーー採用において、求める条件や人物像について教えてください。
鎌谷正弘:
人との接点をつくる能力や、新規開拓などの積極性を持つ人材を求めています。弊社は顧客との信頼関係によって成長してきた会社なので、人付き合いを大切にする気持ちを持つ方と働きたいと考えています。基本的には、明るく、誰に対しても大きな声で挨拶ができる人柄を重視しており、また対人の仕事なので、相手に対する細やかな気遣いができる感性や明るさ優しさも求めています。こちらが明るいテンションで大きな声で挨拶をすれば、相手にもそれは波及し、良好な人間関係の構築につながるからです。
リース事業の拡大と第三の柱の構築でさらなる成長を狙う
ーー今後の事業展望をお聞かせください。
鎌谷正弘:
今後はさらなる売上高安定のため、大きく成長しているリース事業により一層注力したいと考えています。ベースとなる売上高を底上げできれば、経営の安全性が高まるのはもとより、さらに大胆な行動も可能になります。
現在、リース事業は毎年約4000万円ずつ伸びており、今年はリース単体で10億円規模に成りました。一方で、既存のユニフォーム事業は兵庫県内ですでに約40%のシェアを獲得しており、県内でのシェアはある程度頭打ちになりつつあります。そのため今後は、ユニフォーム事業における県外へのエリア拡大を進めるとともに、成長著しいリース事業を30億円規模にまで伸ばすことで、会社全体のさらなる成長を目指しています。同時に、この事業拡大を支えるため、医療関連サービスマークを取得している工場の生産体制や設備、人材の強化が急務となっています。
さらに中長期的には、既存のユニフォーム事業とリース事業に次ぐ、第三の柱となる新たな事業を構築していくことが目標です。100年以上にわたり培ってきた技術とノウハウを最大限に活かし、次の時代に向けたさらなる飛躍を目指します。
編集後記
取材を通して何より印象的だったのは、新入社員の活き活きとした姿と、それを嬉しそうに語る鎌谷社長の温かい眼差しである。創業100年を超える同社が今日まで存続し、さらなる急成長を遂げているのは、業務努力だけでなく、代表や社員の人間力が根底にあるからなのだろう。既存の枠にとらわれない独自の商品開発力や、一人ひとりの意見を尊重する風通しの良い社内環境が、若手の主体性を引き出し、時代に合わせて進化を続ける原動力となっている。同社はこれからも確かな信頼で、日本社会に貢献し続けるに違いない。

鎌谷正弘/1954年、兵庫県生まれ。桃山学院大学卒業。1977年鎌谷制服株式会社に入社、1986年株式会社カマタニに社名変更。1990年代表取締役に就任。