※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

会社のユニフォームは第一印象として大きな影響を与える、会社の「顔」とも呼べる存在だ。そんなユニフォームを80年以上作り続けているのが株式会社カマタニだ。

カマタニは官公庁から大企業、学校など、多くの顧客と長年にわたる取引を続けている。代表取締役の鎌谷正弘氏は、これもひとえに顧客からの信頼を得ているからだと語る。

とはいえ、会社を100年以上存続させるのは簡単なことではない。そこで鎌谷代表に、100年企業としての強みや大切にしている価値観などをうかがった。

顧客ファーストの実践で、良好な関係を築く

ーーまずは貴社の事業内容をお聞かせください。

鎌谷正弘:
事業内容はユニフォームの企画から製造・販売・レンタルまで手がけています。会社の「顔」であるユニフォームを通じて、組織のブランド力向上や生産性向上、安全性の確保などに寄与することをミッションとしています。

弊社は創業の1919年から100年以上の歴史があり、これまで警察庁や防衛省、JR、日本郵政、NTTなど、さまざまな組織のユニフォーム製作に携わった実績があります。

創業時は衣料品や雑貨などを扱う小売商を営んでいましたが、1942年に陸軍の偕校社の指定工場となり、将校軍服の大量生産に従事したことをきっかけとしてユニフォーム専門企業として製造から販売まで手がける会社に転身しました。

ーー貴社の強みを教えてください。

鎌谷正弘:
弊社の強みは100年以上の積み重ねで培った技術やノウハウ、そして顧客からの信頼です。ユニフォームは長く使い続けるアイテムなので、自然と顧客との付き合いも長くなります。それだけに、顧客からの信頼を得られる体制が求められます。

顧客からの信頼を維持し続けるには、技術やノウハウ以上に「誠実さ」が重要です。顧客のニーズや悩みに真摯に向き合い、ユニフォームを通じて新たな価値を創出してこそ、真に信頼できる会社になれるのです。

また、顧客ファーストで、他社が取り組まないことにあえて取り組む姿勢も大切にしています。たとえばリースの分野では、商品を顧客間で使い回さず、顧客ごとに専用のリース品を用意しています。これは当たり前のようですが、従来のリネン業者では当然のように使いまわしが行われてきました。私たちのこういった取り組み方は顧客の安心感につながりますし、他社との差別化にもなります。

会社というチームを率い、社員というメンバーとともに進む

ーー代表の経歴についておうかがいします。

鎌谷正弘:
私が代表に就任したのは1990年のことです。カマタニで製造部や営業部を経験したのちに、先代である父から世代交代で代表を引き継ぎました。就任直後はバブル崩壊による業績悪化がありましたが、多くの社員に助けられながら、なんとか会社を切り盛りしました。

振り返ると、私は人に助けてもらうことが多かったように感じます。会社というチームは代表一人で成り立つものではありません。これからも社員というメンバーたちと協力しながら、会社を成長させていきたいですね。

顧客に寄り添う提案には「人間力」が必要

ーー仕事でとくに大切にしていることは何ですか?

鎌谷正弘:
特に大切にしているのは「人間力を高めること」です。仕事を通じて顧客との信頼関係を構築するには「相手に寄り添う提案」が不可欠です。そのためには、物事を相手の立場から考えたり、相手を思いやったりといった人間力が欠かせないのです。

このマインドを共有するために、新入社員には必ず「人間と生活の向上を目指す」という経営理念の共有をしています。社員たちにマインドが浸透すれば、自然と人間力が上がり、顧客に寄り添う提案ができるようになるものです。

弊社が官公庁や警察、防衛省といった信頼のある組織とお付き合いできているのも、長年にわたって信頼関係を積み重ねてきたからに他なりません。目先の利益ではなく、良好な関係の構築を第一に考えれば、自然と利益は増えていくものです。

リーマン・ショックによる業績悪化後はユニフォームの弱点克服に取り組む

ーー代表に就任してから大変だった出来事はありますか?

鎌谷正弘:
代表に就任した1990年以降に景気が悪化し、業績が悪化したことです。特に2008年のリーマン・ショック以降は大変でした。

その時に取り組んだのが、毎日の新規営業と、リース事業の開拓です。新規営業をコツコツ続けることで顧客数を増やすと同時に、リース事業でベースとなる売上を増やし、売上の安定化を目指しました。これらの活動はすぐに効果が出るものではありませんでしたが、継続して取り組むことで徐々に実を結びました。

また、リース事業への取り組みは、「季節性商品」であるユニフォームの弱点を補完する効果も発揮しました。リース商品なら毎月コンスタントに売上があるので、ユニフォームの売上にムラがあっても全体の売上が極端に減ることはありません。

今後は売上の安定化に取り組み、人材育成でさらなる成長を狙う

ーー今後、取り組みたいことを教えてください。

鎌谷正弘:
今後はさらなる売上安定のため、さらにリース事業に注力したいと考えています。ベースとなる売上を底上げできれば、経営の安全性が高まるのはもとより、さらに大胆な行動も可能になります。

弊社で取り組んでいる病院向けリースは比較的新しい分野なので、伸びしろが大きいと考えています。100年以上にわたり培ってきた技術と、お客様のイメージアップのお手伝いをしていくノウハウを活かし、リースの分野でも多くの顧客に最適な提案をしていきたいですね。

また、社員のポテンシャルを引き出すために、人材育成や待遇改善にも取り組みたいと思っています。顧客との信頼関係を構築するのは、ほかでもない社員一人ひとりです。それだけに社員の能力が重要であり、そのポテンシャルを引き出す施策が求められます。

この施策の第一歩として、育休中の社員をカバーした社員に追加の賃金を支払う「育休応援制度」を策定しました。社員のポテンシャルを引き出すにはまず働きやすい環境づくりから。社員に寄り添った施策で人材の「底上げ」を狙います。

顧客との接点を作り、誠実な関係を築ける人材を求める

ーー社員に求める条件はありますか?

鎌谷正弘:
人との接点を作る能力や、新規開拓などの積極性を持つ人材を求めています。弊社は顧客との信頼関係によって成長してきた会社なので、人付き合いを大切にする気持ちを持つ方と働きたいと思います。

編集後記

会社の「顔」であるユニフォームを取り扱うには顧客と良好な関係を築くことが大切だ。創業100年を超えるカマタニが今日まで存続しているのは、業務努力だけでなく、代表や社員の人間力による部分が大きいのではないだろうか。

カマタニはこれからもさまざまな会社の「顔」を作り、日本を彩り続けるだろう。

鎌谷正弘/1954年、兵庫県生まれ。桃山学院大学卒業。1977年鎌谷制服株式会社に入社、1986年株式会社カマタニに社名変更。1990年代表取締役に就任。