※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

2013年の創業以来、株式会社 CA.FORM.JAPANは、日本市場においてイタリア食文化の魅力を伝えるという使命を担い続けている。チーズ、食肉加工品、フレッシュトリュフ、オリーブオイルなど、同社が手掛ける多彩な商品は、単なる食材としてだけでなく、イタリアの豊かな伝統と文化を体現するものとして、日本の食卓に新たな彩りを添えているのだ。

同社の創業者である代表取締役社長のRiccardo Basso(リカルド・バッソ)氏は、イタリア食品を日本人の生活に浸透させるために尽力してきた。イタリア食品の伝道師ともいえるリカルド社長に、起業の背景から未来への展望まで、お話をうかがった。

イタリア食文化を日本に根付かせる使命

ーー日本での起業に至るまで、どのような経緯がありましたか。

リカルド・バッソ:
私はイタリア北部のバッサーノ・デル・グラッパという小さな町で生まれました。母親が料理上手だったことから料理や地元の食文化に自然と興味を持ち、食材の選定や調理方法の重要性を学んだことが、現在の事業に大きな影響を与えています。

起業に関しては、ある日突然、「今の職をやめて自分で何かを始めたい」という思いが浮かび、「自分の力を試し、海外で挑戦したい」という強い気持ちがあったことをよく覚えています。

日本で生活を始めて最も驚いたのは、イタリアンレストランの数が沢山あって、イタリアの食品がそれなりに広がっている現状を目の当たりにした事実です。この事実を知ったことで、イタリアのすばらしい食文化を今まで以上に日本に広めたいという強い思いが芽生え、事業を立ち上げる大きなきっかけとなりました。

ーー事業を立ち上げた際、最初にどのような取り組みを行いましたか。

リカルド・バッソ:
当初はジェラート店の開業を考えましたが、アイデアがあったものの理想の物件に出会えず悩んでいました。そんな中で自分が好きだったものを考えるうちに、「白トリュフを日本に輸入する」というアイデアが浮かびました。

イタリアでシェフをやっていたときに取引があり個人的に親交もあったサプライヤーに話を持ちかけました。当時、経営の見通しが不透明であり、お金を払えないかもしれない私に対して、1キロもの白トリュフを送ってくれたのです。このサプライヤーである友人の情の深さは忘れることができません。彼との友情に心から感謝しています。

日本語が十分に話せず、文化や商習慣の違いにとまどう日々でしたが、初回輸入分はわずか1時間で完売しました。この成功が、イタリア食文化を日本に広めるという夢を具体的な事業へと育てる第一歩となったのです。当初は小さなガレージを倉庫として使用し、都内を中心にスクーターで商品配送を続けていました。限られた資金と時間の中、営業から配送、在庫管理まで、さまざまな業務を一人でこなす必要がありましたが、この時期の経験が、現在の事業基盤を築く礎となっています。

ガレージからの成長と築いた信頼

ーー事業の成長を支えた要因や取り組みについて教えてください。

リカルド・バッソ:
ガレージからスタートした事業は、お客様の支持を得て着実に成長しました。取り扱い商品は年々増加し、現在では多岐にわたります。特にチーズや食肉加工品、オリーブオイルなど、イタリアの代表的な食品を中心に、日本のお客様の需要に応えるラインアップをそろえています。事業拡大の原動力となったのは、「情熱と誠実さ」だと思います。お客様との信頼関係を何より大切にし、イタリアの生産者とも密接に連携を取っています。頻繁なコミュニケーションを通じて商品の品質や供給体制を改善し、安定した供給を実現してきました。

また、商品の背景にある文化やストーリーを伝えることを重視する中で、そうした取り組みが評価され、直営店舗の展開やオンラインショップの運営、さらには麻布台ヒルズへの出店依頼にもつながったと思っています。

ーー商品の選定基準や人気商品についてお聞かせください。

リカルド・バッソ:
商品選定で最も重視しているのは、「私自身が食べたいと思えるかどうか」という点です。また、「自分の子どもにも安心して食べさせられるか」という基準も大切にしており、このポリシーは創業以来、一貫して守り続けています。もちろん、生産者と細かなコミュニケーションを行い、丁寧な人間関係の構築は欠かせません。

イタリアの生産者とは直接信頼関係を築きながら商品を選定しているのですが、特に人気が高い水牛のモッツァレラチーズや私が生まれ育った土地のオリーブオイルは、現地で丁寧につくられていることから、その品質には絶対の自信があります。多くのお客様から「これがないと料理が物足りない」という声をいただくことは、私たちの大きな喜びです。

長野県の白馬から始まる新文化

ーー現在の事業構成について、具体的な内容や特徴をお聞かせください。

リカルド・バッソ:
現在の事業は、大きく3つの柱で構成されています。

1つは全売上の8割以上を占める卸売事業で、問屋やレストラン、飲食店へ商品を供給し、プロのシェフから「扱いやすく、高品質」と高い評価をいただいています。

2つめの小売事業では、直営店をオープンさせるとともに、オンラインショップでの販売も展開しています。特に最終消費者と直接つながるオンライン販売は、今後期待している分野です。

3つめは、新しい事業である国内加工事業として、本社の中にある加工施設で、生ハムやサラミを加工してパッケージングしています。パッケージングした製品は、取引先のレストランに卸しています。厨房にスライサーがないお店へも、切り立ての味が提供できます。

ーー新たに取り組んでいるプロジェクトがあるとお聞きしました。

リカルド・バッソ:
現在、長野県白馬村でチーズ工房の開設を準備しています。このプロジェクトは、イタリア北部の山小屋(マーゾ)の再現を目指すものです。マーゾ文化とは、高級ホテルのような建物をイチからつくるのではなく、歴史を重ねた建物をリフォームすることを意味します。その場所で、新鮮な牛乳を使ってイタリアで作られているようなチーズを製造する計画です。

ここでは、イタリア式のおもてなしでくつろいでいただける場所の提供といった、さまざまな可能性を検討しており、今年から試験製造を開始し、2027年の本格稼働を目指しています。

編集後記

リカルド社長の言葉の端々から、イタリア食文化への深い愛着と、それを日本に広めたいという強い思いが感じられた。「自分が食べたいものしか売らない」という揺るぎない信念は、単なる理念にとどまらず、日々の事業運営に深く根付いている。その真摯な姿勢が顧客からの厚い信頼を生み、着実な成長につながっているのだろう。次なる挑戦である白馬のチーズ工房プロジェクトは、イタリア食文化の精神を発信する場として期待される。リカルド社長の取り組みは、今後も日本の飲食業界に、新たな可能性を与えてくれるに違いない。

Riccardo Basso(リカルド・バッソ)/北イタリア バッサーノ・デル・グラッパ生まれ。地元のレストランでキャリアをスタートし、料理や食文化に深い関心を持つ。2012年に来日。2013年に株式会社 CA.FORM.JAPANを設立。高品質なイタリア食品を日本に広める活動に尽力している。