※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

ニフティ株式会社は、スマホはおろかWindowsさえ普及していなかった80年代からオンラインサービスをスタートさせ、常に業界をけん引してきたリーディングカンパニーだ。日本のインターネット業界の草分け的存在とも言える同社は今、人々の生活を豊かにする新たな挑戦へと乗り出している。

今回は、お客様視点でのサービスを提供し続け、「ニフティとなら、きっとかなう。With Us, You Can.」を経営理念とするニフティの前島社長に、思いをうかがった。

ニフティに出向、異例のオンラインサービス開拓に挑む

ーー創業時のことを教えてください。

前島一就:
私は1986年に富士通株式会社に入社し、日商岩井株式会社との合弁会社である株式会社エヌ・アイ・エフ(富士通クラウドテクノロジーズ株式会社を経て、現・富士通株式会社、以下NIF)のシステム開発に従事し、1990年にNIFに出向することになりました。NIFは、当時世界最大のパソコン通信サービスを展開していたアメリカのコンピュサーブ社と提携しており、日本でのパソコン通信サービスの提供開始を目指していました。

しかし当時は、Microsoft Windowsもない時代だったので、サービスをどうやって普及させるかが大きな課題でした。それでも、オンラインでのカード申し込みや入会キットの配布など、私たちとしては初めての試みを多く行いましたね。

また、その1年前、1985年は日本電信電話公社からNTT(日本電信電話株式会社)が誕生し、電気通信の民営化が始まった時期でした。パソコン通信の普及に向けて、電子メールの概念を説明するところから始め、電子会議室などのサービスを提供しました。全ての体験が新しいものだったことを今でも覚えています。

ーーニフティに入って苦労した点はありますか?

前島一就:
苦労した点は、サービス開始の1年前から、どのようにしたらサービスに申し込んでいただけるかについて検討し続けていましたが、半年が過ぎてもそもそものサービスの内容が決まらなったことです。このときは、アメリカから輸入したコンピューターシステムが使えなかったため、私を含めた社員全員で設計することになり、UNIXを使用して分散型システムを構築しました。

その後、サービス開始の1カ月前に記者会見を行いましたが、その時点ではまだシステムが完成しておらず、サービスが始まった後はトラブル続きでした。今ではよく聞く「炎上」という言葉が生まれたのはこの時期でした。苦情やクレームに対応しながらサービスを運営しましたが、意外と応援の声が多かったことも覚えてます。

快適なネットライフの実現。ニフティが提供するサービス

ーー事業内容について教えてください。

前島一就:
ニフティの事業内容は、大きく2つあります。

1つ目は、ネットワークサービス事業です。光回線やMVNO(仮想移動体通信事業者)を通じて、お客様にインターネット接続環境を提供しています。弊社では、この事業が収益の大半を占めており、日本のネットワーク産業の草分けであると自負しています。

2つ目がWebサービス事業です。ニュース配信、ブログサービス、ポイントサービスなど、お客様が日々インターネットを楽しむためのサービスを提供しています。グループ会社を通じて不動産情報や求人情報の提供、カタログ通販などのサービスも展開しています。

ーー貴社の強みは何でしょうか?

前島一就:
一番の強みは、サービスの開発並びに運用の内製化ができている点ですね。これにより、お客様や市場のニーズに迅速かつ柔軟に対応することが可能です。

そして、カスタマーセンターも自社で運営しているため、お客様の声を直接聞き、サービスに反映させられる点も弊社の強みだと思っています。これらの接点を通じてお客様との関係を深め、差別化を図っていくことを重視しています。

ーーその強みが確立できた理由を教えてください。

前島一就:
一番の理由は、2017年に富士通の傘下から外れてノジマの傘下になったことです。1987年からパソコン通信サービスの提供を始め、1999年にインターネットサービスプロバイダー(ISP)へと事業の軸を切り替えましたが、その後、価格競争に巻き込まれ、経営効率化に追われる時期がありました。

しかし、ノジマグループに入り、ニフティの方針が大きく変わりました。「お客様視点を第一に考え、お客様の立場に立ったサービスを提供する」というノジマのポリシーに基づいて、以前はアウトソーシングしていた業務をすべて自社で行うようになりました。

そのため、よりお客様との接点を大切にするように変化しています。この変化によって、社内の結束を高められ、お客様視点での運営の強化につながりましたね。

ニフティの描く未来、新時代のインターネットサービス

ーー会社としての展望はありますか?

前島一就:
今後の展望として、新規取引先の開拓、新技術・新商品の開発、人材採用と育成に注力していきたいと考えています。

企業と一般のお客様の両方に焦点を当て、コロナ禍からの在宅勤務の増加によって、インターネットの需要が急増したことから、インターネットサービスをより快適で安全に提供することの重要性を強く感じています。また、若年層や学生などといった、これからのお客様にもアプローチが必要と考えており、SNSの利用や動画配信などの現代のツールを活用したアピールとリアルイベントの融合を考えています。

企業向けには、大企業よりも中小企業や個人事業主などに焦点を絞り、セキュリティ面でも強化を図っていく方針です。現在の家庭用ネットワークの最速スピードは10ギガですが、それを超える速度のサービスの開発ならびに提供を目指しつつ、簡単に接続できること、安心して使えることを重視していきます。

新技術・新商品の開発については、現在の家庭用ネットワークの最速スピードである10ギガを超える速度を目指しつつ、簡単に接続できること、安心安全に使えることを重視しています。

ニフティとしては、AIを活用した効率化や開発なども含め、インターネットサービス業界の変化に対応したうえで、お客様のニーズに応えるためにさまざまな取り組みを進めることを心がけていきたいと思います。

ーー最後に若い読者に向けてメッセージをお願いします。

前島一就:
ニフティの特徴として私が強く感じているのは「社員自身がニフティの最大のユーザーである」ということと「そこそこ失敗してきた」ということです。ニフティでは、サービスを外部に委託せず自社で開発・運用しています。

また、すでに成功している事業に対しては更なる試行錯誤を続けていくことはもちろんですが、多くのチャレンジからの失敗と成功を繰り返しながら成長してきた会社なので、個人も同様に「価値ある失敗」をしながら成長したい方にはニフティにぜひ来てもらいたいですね。

編集後記

前島社長は「炎上」という言葉を使うほどの苦労を体験している。これまでの出来事を活かしながら、現在のインターネットサービスの問題点や課題を分析し、今後も新しいサービスの創出を顧客視点から続けていく。これからも挑戦を続けるニフティ株式会社を応援したい。

前島一就/1967年生まれ、北海道出身。1986年富士通株式会社に入社。1990年ニフティ株式会社に出向し、システム開発部門に配属され、システム開発・運用に従事。取締役専務執行役員を経て、2023年に代表取締役社長に就任。現在、一般社団法人ICT-ISACステアリングコミッティ運営委員、株式会社JPIX取締役、株式会社セシール取締役(非常勤)としても従事。