※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

兵庫県たつの市にあるlearningBOX株式会社は、専門知識がなくてもeラーニングシステムがつくれるプラットフォーム「learningBOX(ラーニングボックス)」を提供している。このシステムは、「現場の教育担当者がノーコードで手軽に教材を作成・運用できる仕組みを届けたい」という思いから生まれた。

同社の創業者である代表取締役の西村洋一郎氏は、「learningBOX」に「学びをもっと身近に、もっと自由に」という思いを込めている。今回は、西村氏に「learningBOX」が目指すプロダクトの形と、今後に対する構想を聞いた。

問い合わせから始まった挑戦。クイズ作成ツールがeラーニングプラットフォームに進化するまで

ーー起業した経緯と「learningBOX」が生まれたきっかけをお聞かせください。

西村洋一郎:
私は大学院で専攻したソフトウェア工学を活かして東京のIT企業で働いていましたが、東日本大震災を機に地元の兵庫に戻りました。

地元で個人事業主として活動をしていくなかで、前職のつながりから仕事を受注できることもあり、大きな案件を任されるようになったタイミングで信用面を考慮して法人化。私が起業したのは自然な流れでした。

そこから現在の事業へ転換したのは、当時私が開発を手がけた、誰でも簡単にWeb上でクイズ・問題の作成・公開ができるクイズ作成ツール「QuizGenerator(クイズジェネレーター)」への問い合わせが毎週のように届くようになったことがきっかけです。「定期的に問い合わせがあるなら事業になる」と感じ、そのツールをeラーニングへ活用する構想を考え始めました。

こうして2016年に生まれたのが、教育とクイズを掛け合わせたeラーニングプラットフォーム「learningBOX(ラーニングボックス)」です。それ以来、このシステムをメイン事業に据えて、教育とITの掛け合わせにより、より良い学びの環境をつくることを目指しています。

ーー会社を運営するにあたって、どのような価値観や姿勢を大切にしていますか?

西村洋一郎:
私が会社を運営するうえで大切にしているのは、「スピードと品質の両立」です。開発のスピードを維持しながらも、安定したプロダクトを継続的に提供するには、チェック体制とコストのバランスを常に見直す姿勢が欠かせません。

また、エンジニアには「目の前の仕事に取り組むだけでなく、3年後・5年後・10年後にどうなりたいかを考えて行動してほしい」と伝えています。日々の業務が立て込みがちな中で、長期的な視点を持つことは簡単ではありませんが、将来のキャリアやライフプランに向き合うことは大切だと考えています。

現在のlearningBOX社には「短距離走とマラソンを同時に走れるチーム」を目指す姿勢が根づいています。経験の有無を問わず、学び続ける文化の中で一人ひとりが成長を実感できる組織こそが、私が目指す組織だと考えています。

「教材のつくりやすさ」と「低価格」を武器に、誰でも使えるeラーニングを実現

ーー貴社の事業概要と、他社と差別化できる強みを教えてください。

西村洋一郎:
弊社の中核事業は、eラーニングプラットフォーム「learningBOX」の開発と運営です。このツールは動画やクイズ、テキストなど多様な教材を自由に組み合わせてノーコードで手軽に配信できる設計が特徴で、教材のつくりやすさと価格の安さに大きな強みがあります。

具体的には、10名までは無料、100名でも年額3万3,000円から利用可能という料金体系を採用しており、誰でも手軽に導入しやすい仕組みが整っています。手頃な価格と直感的な操作性により、おかげさまで導入企業は年々増加し、2025年3月には1,500社を突破しました。

また、「learningBOX」は、教材の内製化に取り組む企業や教育機関、出版社といった幅広い層のニーズに応えられる柔軟性も備えており、専門的なITスキルがなくてもすぐに使えるため、業種や企業規模を問わず、社内研修や外部向けの教育ビジネスにも活用されています。

人・組織・プロダクト、それぞれの進化を目指して先の5年を見据える

ーーこれから注力したいテーマと、今後目指しているビジョンについてお聞かせください。

西村洋一郎:
まず取り組んでいるのは、社員一人ひとりの努力や成果がきちんと評価される仕組みづくりです。360度評価や学習スコアといった指標を活用し、上司との対話も重ねながら、多面的にパフォーマンスを把握できる体制を整えています。こうした取り組みを通じて、社員の成長がきちんと評価に反映される納得感のある制度を構築したいと考えています。

その上で描いているのが、さらなる成長のビジョンです。2年以内に売上を倍増させること、さらに5年後には売上の2〜3割を海外市場から生み出すことを目標としています。「learningBOX」はクラウドベースのプロダクトであるため、言語やリージョンを整えればすぐに海外展開が可能です。現在はフィリピン、タイ、台湾などの東南アジア市場から展開を進めており、誰でもスマートフォンひとつで学べる環境を広げていく計画です。

こうした成長を実現するためには、国内における販路拡大も不可欠です。営業体制の強化に加え、企業規模に応じたサポートの最適化にも力を入れています。地方の小さな開発チームからスタートした私たちが、今では国内外へとチャレンジできるようになったのは、導入企業から寄せられる高い満足度と、そこから生まれるリピート・紹介の多さに支えられているからです。

ーー貴社では採用を進めるにあたって、どのような方を求めていますか?

西村洋一郎:
私たちがこれから仲間として迎え入れたいのは、導入設計から運用支援、効果検証、改善提案までを一貫して担える「伴走型の営業スタイル」を体現できる方です。単なるモノ売りではなく、学習環境の構築に深く入り込み、お客様と一緒に課題解決へ向き合っていく“教育のコンサルタント”的な役割を期待しています。

大手企業での人材育成やIT導入に関わった経験がある方であれば、そのスキルを即戦力として活かせるフィールドがあります。また、現場の声をプロダクトに反映する仕組みも整っており、「自分の提案がそのまま新機能になる」といった面白さを味わえる環境です。

そして、何より重視しているのは、学びの価値を信じているかどうかです。私たちは「learningBOX」というプロダクトを通じて、世界に通用する学習のインフラをつくっていこうとしています。その挑戦に、前向きな気持ちで加わってくれる方との出会いを、心から楽しみにしています。

編集後記

「learningBOX」の強みは、「低コストかつ使いやすいeラーニングシステム」という市場優位性にある。誰でも簡単に教材を作成・配信できる設計は中小企業や教育現場にとって大きな魅力だろう。加えて、スピード感と品質を両立させる開発体制は、事業の成長を持続可能なものにしている。教育のデジタル化が進む今、「learningBOX」は次世代のスタンダードとして躍進していく可能性が十分にある。

西村洋一郎/1982年兵庫県たつの市出身。慶應義塾大学理工学部にて大学院までソフトウェア工学を専攻。卒業後は株式会社キバンに入社し、eラーニングシステム開発に携わる。2012年7月、株式会社龍野情報システム(現:learningBOX株式会社)を設立。2016年1月、eラーニングシステム「learningBOX」を制作・リリース。現在も現役エンジニア社長として開発に携わる。