※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

1925年、トイレットペーパーなど家庭用紙製品の小売業からスタートした株式会社ユアサは今年創業99年を迎える老舗企業だ。

「蛇口をひねれば水が出るように、紙製品を滑らかに人々に届けたい」と語る同社代表の湯浅賢治氏は、ECサイト「湯浅紙店」(※)を立ち上げ販路拡大へと乗り出した。そして2024年5月、代表取締役社長に就任した。

キャリア選択の指標となる考え方や社長就任後のビジョン、プロフェッショナルになるための秘訣などをうかがった。

(※)「湯浅紙店」公式サイト

生活必需品を滑らかに人々に届けたい

ーー社長就任に至るまでの思いをお聞かせください。

湯浅賢治:
36歳で結婚した時に「今後の人生を何のために働くか?」と考える時間を持ちました。私は、お客様や家族など身近な人からダイレクトに「ありがとう」と言ってもらいたいタイプの人間で、これが最も実現できる場所を考えたんです。

そのとき、家業である会社を継ぐことで、家族や両親、地元の皆様の役に立てると同時に、子どもたちに何かインパクトを与える仕事ができるのではと思いました。

ーー貴社の事業内容と強みは何でしょうか?

湯浅賢治:
トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ポリ袋などの卸売、小売、配送や加工など、日用消耗品に関するさまざまなサービスを提供しています。弊社で取り扱う商品は、生活になくてはならないものだからこそ、滑らかに多くのお客様にお届けしたいと思っています。そのため、オンライン注文や定期便、置き配などのサービスをご用意し、購入者の調達の手間を削減して商品をお届けすることに力を入れています。

また、商品の販売は「箱売り」に特化し、繰り返し使われる商品にアイテムを絞ることで、商品を安く提供できるようにしています。

「自分の好き」を突き詰め、NECへ入社。金融機関向けクラウドサービスを事業化。

ーー大学卒業後にNEC(日本電気株式会社)に入社した経緯をお聞かせください。

湯浅賢治:
大学時代は教師を目指して教員免許を取得しました。しかしながら、就職活動時期に友人がみんな企業への就職を志望していたので「企業で働くってどんなだろう?」と軽い気持ちで民間企業のインターンシップに参加しました。そこでの体験で「効率的な仕事を考えるって面白い!」と感じたのです。

また、同時に自分が教師を志した気持ちの根底には、「人に何かを教えることが好き」という思いがあることに気づきました。そこから「どんな仕事でも教育的な要素はある」と捉えなおして、企業に就職することに方向転換し、縁あってNECに入社しました。

ーーNECでの印象的なエピソードはありますか?

湯浅賢治:
NECでは金融機関向けに営業をしていましたが、異動をきっかけにあるクラウドサービス事業をつくる仕事のリーダーを任されました。当時はクラウドの概念自体がまだ一般的ではなく不安もありましたが、「レアな経験ができるかも」と発想転換して取り組みました。

周囲の方々の協力もあり、クラウドサービスは順調に拡大し、サービス開始から3年で黒字化、6年後には会社から表彰されるまでになりました。このとき、記念パーティーを開いたのですが、そこに40人くらいの人が集まって喜び合ったときに、事業をつくることのやりがいを感じました。

ECサイト立ち上げの経緯と社長就任後の取り組み

ーーユアサに入社後から、ECサイト立ち上げまでの経緯を教えてください。

湯浅賢治:
これまで弊社では企業様からの注文をFaxで受けていましたが、もっとお客様に商品を便利に届けるためにECサイトに切り替えたいと思いました。

弊社はこれまで多くの企業様に直接営業に出向き、商品提案を行ってきたため、お客様がどのような視点で商品を決めるかがわかります。ECサイトにはそのノウハウを取り入れ、お客様のニーズに合わせて商品を検索できるようにしました。

ーー社長就任後のビジョンを教えてください。

湯浅賢治:
配送エリアを拡大し、「より多くの人になめらかに商品を届けたい」と考えています。

現在は、置き配などを自社配送できる京阪神エリア限定でサービス提供していますが、今後は全国の運送会社との協業関係を強化し、対応エリアを拡大したいと思っています。

やりたいことを見つけて仕事に活かすことがプロフェッショナルへの近道

ーー貴社ではどのような人材を求めていますか?

湯浅賢治:
弊社では幅広い年代の方が活躍できるので、ガッツのある方なら学生や第二新卒も大歓迎です。弊社のビジョンに共感して「挑戦してみたい」という気持ちさえあれば、一緒にがんばりたいです。

ーー就職活動中の学生や転職希望者へメッセージをお願いします。

湯浅賢治:
自分がやりたいと思うことを正直にやってほしいです。「やりたいことがない」と思っている人も多いのですが、誰でも楽しいと思う瞬間が必ずあります。最初はわかりにくいのですが「これかな」と思って、その楽しさを仕事の中で実現できる方法を探してみましょう。はじめは小さく取り組んでみるのがコツです。

よく、やりたいことを見つけたといって、起業や転職をする人がいますが、いきなり今の会社を辞めてしまうのではなく、まずは今の会社で働きながら試せないか考えてみましょう。もし試せれば、またそこから自分のやりたいことの方向性が見えてくる。そうして思考と行動を繰り返していくうちに、自分なりのプロフェッショナルが見えてくると思います。

編集後記

「僕の子供以外の人でも、ふさわしいと思った人に会社を承継する」と語る湯浅社長。配送エリアのさらなる拡大で多くの顧客に商品を届けることはもちろん、後継者育成にも積極的に取り組みたいと力を込める。彼の挑戦は、始まったばかりだ。

湯浅賢治/1981年生まれ。NEC(日本電気株式会社)にて金融機関向けシステムの営業、クラウドサービスの立ち上げなどを担当。その後、株式会社マザーハウスにてジュエリー事業を立ち上げ、販売責任者に就任。2019年株式会社ユアサに入社。2024年5月代表取締役社長に就任。