※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

2000年の設立後、東京本社をはじめ国内外に拠点を展開するコアスタッフ株式会社。半導体・電子部品の専門商社として、半導体・電子部品商社として、約70メーカー、6万点を超える在庫を保有している。商社としての強みや今後の展望について、代表取締役社長の戸澤正紀氏に話をうかがった。

通販にも対面販売にも強い「ハイブリッド型」の半導体商社

ーー事業内容について教えてください。

戸澤正紀:
半導体・電子部品の商社として自社の物流センターを持ち、幅広いメーカーの在庫を運用しています。最大の特徴は、部品を1個から販売する「ひとつから」というサービスです。

通常の半導体商社はMOQ(Minimum Order Quantity)という最低発注数量を設定しています。10個だけほしい部品も1000個買わざるをえず、在庫が倉庫に眠り続けて最終的に廃棄するしかないのです。日本には大量生産をしないBtoBの中小企業が多いものの、「必要数量だけ購入したい」というニーズに応える私たちのような会社はほとんどありませんでした。

弊社は全国に複数の拠点を持ち、2024年8月には長野県佐久市で新物流センターが稼働いたしました。(※1)多数の在庫を抱えたり、資本金の数十倍をかけて倉庫を増やしたり、自社でリスクを負ってでも「お客様のニーズに応える会社」という点は一つの強みです。

(※1)CoreStaff<コアスタッフ>新物流センター公式HP

ーー営業活動はどのようにしているのでしょうか。

戸澤正紀:
販売方法がデジタルかアナログに偏る会社が多い中で、両方の強みを活かした「ハイブリッド営業」という新しいコンセプトを構築しました。半導体業界でもEコマースが発展しましたが、デジタルがメインの会社はどうしても売り切りとなり、購入後のサポートが不十分な傾向があります。

弊社は「CoreStaff ONLINE(コアスタッフ オンライン)」という自社通販サイトを運営する一方で、「営業マンと直接会いたい」というご要望にも着目しました。対面できめ細やかなサポートができるアナログ営業を再評価したことで、他社と差別化できたと考えています。

細かいニーズを見逃さない戦略で起業――商社マン時代から海外進出まで

ーー社長のご経歴についてお聞かせください。

戸澤正紀:
商社の仕事に憧れていたので、大学卒業後は大手半導体商社に入社しました。3年半ほど勤めて多くのことを学んだ上で、お客様が抱える余剰在庫の問題を解決したいと考えました。「必要な数だけ販売する」「在庫販売のお手伝いをする」といった「普通の商社がやらないこと」に目をつけたのが起業のきっかけです。起業にはもともと興味があったので、26歳のタイミングで弊社を設立しました。

通常の代理店に頼ると納期に間に合わないケースが多いので、短い納期で部品をサポートする「緊急調達」というサービスにも取り組みました。私たちは大企業だけでなく、日本に数多くある中小企業にも目を向けています。ニッチな領域で会社の規模に応じたサービスを展開したことで、後発企業であっても生き残れているのだと思います。

ーー会社としてのターニングポイントはいつでしたか?

戸澤正紀:
日本ではそれなりに拠点を増やせたので、満を持して2013年に海外進出しました。縁のなかった海外に対する漠然とした不安があったのですが、ある時ふと「海外に出てはいけないと決めていたのは自分だ」と気付いたのです。自分の制約は自分にしか壊せず、そんな制約をかける必要もないと結論づけて、香港に子会社をつくりました。

香港は現在、配下に台湾と中国深センの駐在員事務所を持ち、元気に稼働しているので思い切って進出してよかったと思います。海外に子会社をつくる流れを加速させるべく、アメリカ・タイ・ドイツと国を広げていった結果、今ではグループ全体の売上に対して国外が10%前後という割合になりました。

「サポート力」を武器に「新たな価値」を生み出す企業として

ーー現在の企業ミッションを教えてください。

戸澤正紀:
弊社は「New Value Chasers」というミッションを掲げています。「Value(バリュー)=価値」を「Chase(チェイス)=追求する」というイメージです。誰か一人ではなく社員全員で追求していこう、という意味で複数形の「Chasers」としました。世界中のお客様のニーズを追求し、なおかつ先行していくためにも、「常に新たな価値をつくっていく人になろう」という思いも込めています。

ーー今後のビジョンをお聞かせください。

戸澤正紀:
デジタルとアナログを掛け合わせたハイブリッド企業という意味では、私たちは業界の先駆者と言えます。新たな価値を生み出し続け、お客様に認めていただくことで、ハイブリッドの領域がブルーオーシャンになる可能性もあるでしょう。

豊富な在庫を持ち、必要数量の部品を通販サイト「CoreStaff ONLINE」(※2)を通じてすぐに購入できる環境を強みに、大手企業とも戦っていきます。定期的に同じ商品を購入できる「量産」の仕組みを保つには、テクニカルサポートの維持や強化も必要です。ハイブリッド営業を含めて、これからもお客様に必要なサポートを追求していこうと思います。

(※2)CoreStaff ONLINE公式サイト

編集後記

ネット販売か対面販売に偏りがちな半導体商社。さらに、1つの商品をつくるために数千パーツの在庫を抱えるメーカーがあるという事実も聞かされて驚いた。顧客の苦悩を知ったからといって、商社が在庫の管理方法や販売ルールを変えることは容易ではない。「リスクを恐れず誰もやらないことをやる」というビジネスの基本が、確かに新たな価値を生んでいる好例だ。

戸澤正紀/1974年生まれ。1997年、立教大学社会学部を卒業。同年、丸文株式会社へ入社。2000年、有限会社コアスタッフを設立し、代表取締役に就任。2003年、コアスタッフ株式会社に変更。