化学品や合成樹脂、金属など、多岐にわたる「素材」の総合商社として70年以上の歴史を持つ昭光通商株式会社。代表取締役社長の渡邉健太郎氏は、商社や外資系企業での豊富な経験を活かし、バリューチェーンを支える同社のポテンシャルを引き出そうと尽力している。渡邉社長のキャリアに主軸を置き、昭光通商の強みや今後のビジョンなどを聞いた。
総合商社で経営企画や海外駐在を経験し、海外企業の社長を経て現ポジションへ
ーー渡邉社長の経歴についてお聞かせください。
渡邉健太郎:
私のキャリアは、1985年、総合商社のニチメン株式会社からスタートしました。ニチメンでは合成樹脂を扱う部署で営業や経営企画に携わっていたほか、1991年から1995年にかけてニューヨーク駐在も経験しました。
その後、2003年にニチメンが日商岩井株式会社と合併して新会社の双日株式会社に変わると、私の中で転職を経験したいという気持ちが芽生えてきました。特段双日に不満はありませんでしたが、合併という区切りを体験したことで挑戦したい気持ちが強まったのです。
転職先に選んだのは、アメリカ系化学品メーカーのエコラボ株式会社でした。エコラボでは日本法人の事業部長を経て2010年から2021年3月まで日本法人の社長を務めました。
そして2021年に昭光通商に入社し、2022年からは社長を任されています。私のキャリアの原点である商社に戻った形で、長年培った経験を活かして会社の発展に尽力しています。
ーー商社でキャリアを積もうと考えたきっかけは何でしょうか。
渡邉健太郎:
大学生のころに、海外、特にアメリカに強い興味を持っていたことに起因しています。当時から海外駐在を経験したいとも思っており、その可能性が高い総合商社を選びました。
それだけに、最初の就職先であるニチメンで合成樹脂の部署に配属されたのはラッキーでした。その部署では輸出関係の仕事を取り扱っていたので、海外の顧客を相手にした仕事をする機会に恵まれたのです。また、リピーターが少ない分野だったため、海外の取引先を探す苦労をしたのも今では良い勉強になったと感じています。
エコラボに転職したのも、エコラボがアメリカの企業であることが一因です。また、転職当時の日本はバブル崩壊後から景気の低迷を引きずっていたので、経済活動が活発なアメリカのやり方を学びたい気持ちもありました。
バリューチェーンを支える「素材」でポジションを確立
ーー会社の事業内容を教えてください。
渡邉健太郎:
弊社は1947年から続く、化学品や合成樹脂、金属・セラミックスなどの素材を取り扱う総合商社です。拠点が国内に5カ所と海外に4カ所あり、国内外の幅広いお客様に660を超える豊富な商材を提供しています。
扱っている商材を詳しく説明すると、化学品部門では有機化学品と無機化学品の両方を取り扱っており、合成樹脂部門では汎用樹脂の他、再生樹脂やバイオマス樹脂、生分解性樹脂を、金属セラミックス部門では無機材料、カーボンコート箔やアルミニウム製品、建築資材などを取り扱っています。
ーー貴社独自の強みについてお聞かせください。
渡邉健太郎:
国内に幅広いネットワークを持っていることです。中小企業と大企業の両方に多くの顧客がいるほか、リピートもいただいているので商社ビジネスの基盤がしっかりしています。特に中小企業に対しては、バリューチェーンの川中部分を担うリスクと引き換えに、重要なポジションを確立しています。
また、汎用樹脂と呼ばれるプラスチック原料においては日本の商社の中でも特筆すべき量を取り扱っており、弊社の基盤を支える重要なピースとなっております。
そのほかに、顧客のニーズに柔軟に対応できることも大きなアドバンテージです。弊社が築いた世界中のサプライヤーとのネットワークにより、顧客のニーズに合った最適な商材を見つけ、迅速に提供することが可能です。
株式の再上場をきっかけに、組織の躍進を目指す
ーー会社の目標やこれからのビジョンについて教えてください。
渡邉健太郎:
直近の目標として株式の再上場を目指しています。再上場には、会社の資金力や信用力などを底上げしてくれる効果が期待できますので、組織の改革や成長を一気に進めるチャンスとなるでしょう。
現在は、そのための経営基盤の整備や人材育成、ガバナンスの強化など、組織を骨太にする取り組みを進めています。
そして、組織体制においては、社員全員が活躍できる環境を実現したいと思っています。ビジネスにおいて人材の区分に用いられがちな年齢や採用区分などに関する固定観念を取り払い、適材適所によってさまざまなキャリアプランが描ける仕組みや、複線的な給与体系を構築していきます。
ーー人材採用で重視する部分についてお聞かせください。
渡邉健太郎:
株式の再上場に向けてバックオフィスの強化が必要だと考えています。すでにIR(投資家向け広報)の部門は走り出していて、そのほかにガバナンスの強化にも注力していきます。
ただ、弊社が商社である以上、攻めを意識したフロントオフィスの強化も忘れてはいけません。この守りと攻めのバランスが、今後の課題となります。
特にほしい人材は、即戦力として活躍できるキャリアを持った30代の方です。今まで培ってきたキャリアをベースに、弊社で最適なキャリアプランを上乗せしていき、会社と人材の両方が成長できる関係を構築していければと思います。
編集後記
昭光通商は先へ進むための準備段階にあるが、同社の豊富な経験やネットワークを考えると、素材商社として存在感を放つ会社へ成長することは想像に難くない。これから同社でどのような人材の多様性が生まれ、成長していくのか。同社の躍進を今後も注目していきたい。
渡邉健太郎/1960年、東京都生まれ。1985年にニチメン株式会社(現:双日株式会社)に入社。米国駐在、業務部長を経て、2005年に米国系化学品メーカーの日本法人エコラボ株式会社(現:エコラボ合同会社)に入社。2010年より11年間同社の代表取締役社長を務める。2021年に昭光通商株式会社入社。2022年、代表取締役社長に就任。