※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

信頼と誠実を重んじる総合住宅設備機器の商社であり、奈良で創業100年を迎えた株式会社ナカガワ。老舗企業の舵をとるのは3代目社長の中川基成氏である。社長就任までの経緯や経営者としての考え方、そして奈良の地で長年にわたり続けてきた事業について、中川氏に詳しく話を聞いた。

ドイツ拠点の商社の駐在員から、家業の3代目社長へ

ーー社長に就任するまでの経緯をお聞かせいただけますか?

中川基成:
奈良県で生まれ育ち、親族会社の家系に生まれたため、いずれは事業継承すると考えていました。ところが、大学進学をきっかけに東京に出て、20歳の頃に一人でアメリカを旅したことで海外志向が強くなったのです。そこで商社を志望して丸紅に入社、9年目に念願の海外勤務が叶い、ドイツに駐在して富士フイルムの製品を東ヨーロッパ市場に輸出する業務に従事しました。

しかし、ドイツ駐在中に父が病気で倒れてしまったのです。当時は現地に新しい会社を立ち上げるための責任者という立場でしたが、その大きなプロジェクトを終えたタイミングだったので、帰国してナカガワに入社する決意をしました。当時、私は35歳で、商社での仕事も好きだったので、体が2つあれば両方やりたかったぐらいですね。

ナカガワ入社後は、新しく立ち上げた建材事業を担当しました。また、部署横断で社内の若手メンバーを集め、会社の将来についてアイデアを出し合う企画開発室の室長も務めましたね。住宅設備業界の経験がなかったため、ゼロから学び、副社長として経営に携わるようになり、2000年に社長に就任しました。

ーー丸紅時代の経験は今に活かされていますか?

中川基成:
現在の会社と商社ではビジネスの方法や取引先が異なりますが、商売の基本は共通して「信頼」が重要であることを学びました。また、組織力の大切さも実感しました。丸紅が多くの社員と部署がありながら一つの会社として機能しているのは、チームで仕事を進める力があるからです。

組織体制をいかに作り上げ、どのようにチーム力を高めるかが経営の要であると感じています。11年間の丸紅での経験は、現在の仕事に大いに役立っています。

チャレンジし、たえず学び続ける姿勢でで組織力を強化

ーー現在の貴社の事業内容を教えていただけますか?

中川基成:
弊社は住宅資材や機器を取り扱う総合住宅設備機器商社です。たとえば、キッチンやトイレの給排水用設備など、ほぼ全てのメーカーの商品を代理店として取り扱い、工事現場や工務店に直接お届けしています。

弊社の強みは、現場へのきめ細やかな対応力です。お客様のニーズに迅速に応えるためには商品知識が必要で、常に勉強が欠かせません。メーカーが新商品を製造するたびに最新情報を把握し、最適な提案を行うことが強みです。

現在は商品情報や工程管理ができる「ナカガワスパーアプリ」を独自開発し、これから力を入れて拡大していく予定です。

ーー社長就任から24年を振り返って、どのようなお気持ちですか?

中川基成:
24年間はあっという間でした。成功もあれば困難もありましたが、一貫してチャレンジを続けてきました。それができたのは、環境や家族の支援、健康などに恵まれていたからです。失敗もありましたが、チャレンジすることを選び続けたことは正しかったと感じています。

最近の挑戦は、創業100周年を記念して「ナカガワセンチュリ記念館」を開館したことです。社員だけでなく、お客様を含めてともに学び続ける機会を提供するために設立しました。スマートオフィス化やITソフト開発にも対応できる設備を整え、社員同士のコミュニケーションを促進する社員食堂も併設しています。

組織の最適化と女性の活躍推進で競争力を強化する

ーー経営において大切にしていることをお聞かせください。

中川基成:
日々の経営で最も大切にしているのは「最適な組織をつくること」です。そのためには「人」が重要であり、効率よく力を発揮できる最適な環境を整えることが経営者の責任だと考えています。そのために、責任者の選定や人材採用、最適な人事配置を常に考え、組織の最適化に努めています。

また、住宅業界や建設業界の中では、弊社は女性の比率が高い会社です。女性社員はきめ細やかな対応が得意で、見積書の作成や問い合わせ対応などで力を発揮してくれます。女性社員のサポートにより、営業の男性社員も業務に集中することができ、組織全体のバランスが良くなりました。これらの取り組みを通じて、全社員が最大限の能力を発揮できる環境を整えることを目指しています。

ーー今後の展望について教えてください。

中川基成:
「弊社と取引してよかった」と思っていただける会社になることが目標です。時代に合わせて変化しながらも、信用や信頼を大切にし、地域社会に必要とされる存在として続けていきたいです。次世代の人たちにバトンタッチできる道筋をつくれるよう尽力していきます。

編集後記

中川社長が100年以上続く会社を背負う中で示してきた経営者としての姿勢や考え方には、シンプルでありながら本質的な要素が多く詰まっていると感じた。信頼と組織力を基盤に、時代の変化にも柔軟に対応できる強さを持つ。ナカガワの次の100年がどのように進化していくのか非常に楽しみだ。社員や地域社会への貢献を重視する姿勢にも感銘を受けた。今後の展開にも注目していきたい。

中川基成/1955年、奈良県生まれ。1980年東京大学法学部卒業。同年、丸紅株式会社に入社。11年間勤務後、1991年株式会社ナカガワに入社。2000年に同社代表取締役に就任。