※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

トラックドライバーの労働時間規制によって、輸送能力低下が懸念される日本の物流業界。荷主や消費者への影響もささやかれる中で、物流現場を救う一筋の光になりうる存在が和研ハーディ株式会社だ。コア事業はラックの製造・設置で、製品の保管・管理・効率的な運用といった包括的な提案によって、幅広い業界・企業の物流基盤構築を支えてきた。

創業者である父親からバトンを受け継いだ代表取締役の三宅崇之氏に、会社を継承するまでの経緯や就任後の苦悩、今後の事業拡大のカギなどをうかがった。

営業成績は全国トップ!大手自動車メーカーの営業から2代目就任までの道のり

ーー学生時代から創業者であるお父さまの後を継ぐことを意識していたのでしょうか。

三宅崇之:
父から「会社を継いでほしい」といわれたことはありません。私は大学卒業後に国内最大手の自動車メーカーに就職し、産業車両の営業をしていました。新規開拓担当として毎月400件の飛び込み営業を4年間続けたのですが、2年目には営業店トップ、3年目には全国4位にまで上り詰めました。

「最年少で所長に」という声もかけられましたが、やはり長年憧れてきた父親と同じフィールドで働きたいという思いから、1999年に弊社に入社しました。入社後は、前職の営業経験を活かして無我夢中で新規開拓する日々でした。現在、弊社を支えているクライアントの中には、当時の営業先も多いですね。

ーー社長就任後、最も大変だったことを教えてください。

三宅崇之:
代表取締役に就任したのは、入社から8年後の2007年でした。当時、リーマン・ショックの真っ只中だったこともあり、試行錯誤しても商材が売れませんでした。設置作業が発生しないため工事スタッフも待機することが続き、社内の雰囲気が暗かったですね。だからといって俯いてばかりではいられないので、社長である私が動いて打開策を模索し続けました。

転機となったのは、営業エリアを拡大したタイミングです。当時の営業エリアの広島・山口・四国に加え、新たに関東や関西にも営業エリアを広げました。その結果、スチールラックの生産量ナンバー1の金属会社や大手コンビニ、回転寿司チェーン、自動車メーカーなど、多くの企業さまとのお取引が実現したのです。

「かゆいところに手が届く」を意識した対応で販路と事業を拡大

ーー現在の事業内容と貴社の強みを教えてください。

三宅崇之:
弊社では、「空間システムの創造」を大枠とし、物流保管設備や書類・ファイル保管設備、建築・構造物設備、倉庫・工場内設備、搬送機械設備などをBtoB向けに提供しています。提案から製造(カスタマイズ)、施工、保守メンテナンスまでワンストップで対応できる体制を整えているため、責任の所在も明確で、常に一定の品質を担保できるのです。

こうした一貫体制だけでなく、「かゆいところに手が届く」ことも弊社の強みのひとつです。お問い合わせ内容に沿って設備を導入するだけではなく、ご要望を踏まえたうえで53年の経験と実績を活かした最善の提案をしています。

ヒアリングを重ねる中で、クライアントも気づいていない潜在的な問題やニーズが明らかになることもありますね。弊社はただ単に「自社の商材を売ること」ではなく、いかにお客さまの効率的な管理・保管を追求できるのかに重きを置いています。

また、弊社はスピード感を重視しつつ、的確な保管計画などをご提案できるよう、現地調査してから原則3営業日以内に見積書をお送りするよう徹底しています。先日も直接契約を結んでいる海外の自動車メーカーさまから「レスポンスが速く、信頼できる」とお褒めの言葉をいただきました。

ーー三宅社長が営業する際に大切にしていることを教えてください。

三宅崇之:
弊社の営業担当にも伝えていますが、何よりも重要なのは、いかに相手の話に耳を傾け、深く理解するかということです。私自身、「モノを売らずに、油を売れ(顧客の話を聞け)」をモットーに長年営業をしてきました。いきなり商品やサービスの提案をするのではなく、雑談を交えながら相手のことを十分に理解し、相談や困りごとを打ち明けていただいたタイミングで相手が求めている情報を提供するようにしています。

あまりに油を売ってばかりだと、クライアントの方から「商売の話はしなくていいの?」と聞かれることもありますが、いつ好機が訪れても100%の提案ができるよう、コミュニケーションを密に取りながらクライアントにふさわしい道筋をつくっています。

物流現場の未来を照らす。労働環境改善につながる、「保管設備」の無限の可能性

ーー「物流2024年問題」が懸念されていますが、貴社では今後どのように事業を継続・拡大されるのでしょうか。

三宅崇之:
国内におけるBtoCのEC市場規模は成長を続け、2023年度には24.8兆円規模まで拡大しています。今後はこれまで以上にニーズの高まりが予想される一方で、物流業界における人材不足は想像以上に深刻です。「物流2024年問題」は、トラックドライバーにスポットがあたりがちですが、実は保管・管理などを担う物流倉庫で働く人材も足りていません。

こうした背景を踏まえ、弊社ではミッションとして「保管設備を通して社会全体の労働環境の改善を目指す」ことを掲げています。たとえば、空調が整っていない倉庫の環境改善として大型シーリングファンを発売するなど、現場の声からヒントを得ながら新たに収益貢献できる事業を始めました。ニッチな分野であるからこそ、「+α」の価値を生み出して次なるサービスにつなげていきたいです。

ーー100周年に向けた意気込みを聞かせてください。

三宅崇之:
大きな柱として、まずは既存取引先への深掘りと営業力を強化したいです。クライアントニーズに沿った最適解を提案するためには、丁寧にヒアリングをして相手の深部まで理解する必要があります。そのために営業部門の体制を整えて、営業の質をもっと高めていきたいです。

もうひとつ、会社としての最重要課題は、採用の強化です。少子高齢化が進む中、必要な人材を確保できなかった中小企業の多くには廃業やM&Aという選択肢しか残らないでしょう。

商いだけでなく、組織自体が安定していないと企業は存続しません。既存社員の生産性維持・向上はもちろん、人材紹介サイトの活用やDXなども進めながら、全社的に人材確保に注力していきます。

編集後記

インタビュー中、何度も耳にした「まずは現場だ」という言葉。三宅社長が社員にもよく伝えているというこの言葉からは、保管設備を通して現場で働く全ての人、企業、そして社会に貢献したいという信念が感じ取られた。DXにも積極的な姿勢で、今後の事業拡大にも期待が高まる。

空間システムを創造し、その可能性を広げ、チャンスに切り替えている同社は、今後もトップランナーとして日本の物流分野を牽引してくれるだろう。

三宅崇之/1973年、岡山県生まれ。九州共立大学卒業。1999年に和研ハーディに入社し、新規開拓営業を8年間担当。2007年に同社代表取締役に就任。保管設備を通じて社会全体の労働環境改善を目指す。近年は環境整備にも注力している。