※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

工場のプラント設備は、ものづくり大国日本を支える重要なインフラだ。和歌山に本社を置き、プラント設備の建設・メンテナンスを手がける株式会社スミエイ。創業80年以上で業界内では老舗と呼ばれる同社は、2020年に3代目である髙光伸氏が跡を継ぎ、社長に就任した。

「日本のものづくりと社会インフラを支える光る黒子になりたい」「次世代の人たちと建設業界を一緒に盛り上げていきたい」と語る髙社長。36歳という若さで老舗企業を引き継ぐまでの経緯や心境、そして会社の未来について詳しくうかがった。

父の背中をずっと見て、父と同じ人生を歩む

ーーまずは社長に就任されるまでの経緯についてお聞かせください。

髙光伸:
父から「会社を継ぎなさい」と言われたことはありませんでしたが、「いつかは私が会社を継ぐんだろうな」という考えは、おぼろげながらありました。それまでにできるだけ視野を広げるべくいろいろな体験がしたいと思い、大学院に進学し、家業を継ぐための修業も兼ねて大手重工業メーカーに入社しました。

同社での6年間で出会った上司も同期も後輩も、人間性が豊かで、「自分もこういう人になりたい」と思い、尊敬していました。そのような成長につながる経験ができたことで、「いろいろな価値観の人たちと一緒のチームになって、成果を出して喜びを分かち合いたい」という思いが自分の軸になり、誇りや自信、勇気を得られたと思っています。

ーーその後、同社からスミエイに入社されたときにギャップは感じましたか?

髙光伸:
前の職場は大企業なので、組織的に完成されていた印象です。一方、スミエイは自主性を重んじていて、みんながのびのびとしている雰囲気です。個人の裁量が大きく、おのおのが仕事をどんどん進めていくという点に違いを感じました。

家業を継いでからは、前職と異なる環境のなかで仕事の考え方や進め方について、自分の考えが伝わらず、苦労しました。みんなの気持ちを理解して、まずは私から動かなければならないということを実感しました。

ーー36歳で代替わりしたときの心境を教えてください。

髙光伸:
父に対しては尊敬しかないですね。私が子どものころも仕事ばかりで、ほとんど家にいませんでしたが、スミエイに入社して、改めて誰よりも会社のことを考え、行動しているんだなということがわかりました。

父は35歳のときに祖父から跡を継ぎました。私は36歳のときだったので、だいたい同じ動きをしています。父は会長になってからは、数字や会社の大まかな動きは見ていますが、基本的には前に出ないで、「社長のお前が決めるんだ」というスタンスをとってくれています。

社長である父が会長になり、所長である私が社長になって、「会社にどのような影響が出るのか?」という不安は正直ありました。

社長就任直後にコロナ禍発生!実感した私たちの仕事の重要性

ーー社長に就任された直後にコロナ禍に突入しましたが、影響はありましたか?

髙光伸:
売上は下がったものの、社内外関係者のおかげで何とか乗り越えることができました。リモートワークを強いられて通常営業ができなかったり、業績悪化に追い込まれたりした企業も多かったと思うのですが、私たちの仕事はリモートではできません。

コロナ禍でもお客さまから依頼があって現場に出向くので、私たちの仕事は世の中のインフラを支えるうえでなくならない仕事、止めてはいけない仕事だということを実感しました。それが今も自信につながっていると思います。

ーースミエイの強みはどこにあると思いますか?

髙光伸:
これまで積み上げてきたものがあり、過去の実績が豊富というのもありますが、やはり一番は人ですね。

組織として動く一方で、個性を尊重する社風もあります。みんなが前向きな気持ちを持って、「世の中に貢献する仕事をしている」という誇りを持っているからこそ、組織としてまとまっているのではないかと思います。

社員・協力会社一丸となって未来のものづくりを支える存在に

ーー髙社長としては今後スミエイをどのような会社にしたいとお考えですか?

髙光伸:
私たちの業界は縁の下の力持ち的な存在であり、人材不足に陥っているのも実情ですが、そのなかでも弊社のメンバーやお世話になっている協力会社の皆にスポットが当たって、光り輝く存在になってほしいと思います。

今の事業を突き詰めていくか、別の業種にもチャレンジするか、いろんな方向性があると思いますが、基本的には既存事業を大切にしつつ、経営理念である日本のものづくりと社会インフラを支える「光る黒子」でありたいという軸を持ち、チャレンジしていきたいと考えています。

社員でグループに分かれて、「新しい事業」などテーマを決めて話し合いをし、各自で発表する場を設けると、普段見られない一面や長所も見えてきます。

当社の経営理念や大切な価値観、規律をベースとしつつ、一人ひとりが挑戦できる、活力あふれる会社にしていきたいです。

ーー社内の組織づくりで取り組まれていることはありますか?

髙光伸:
終身雇用で社員を雇える会社でありたいと思っています。自分もメンバー全員もちゃんと成長して「ゴール」まで一緒に行きたいですね。みんなの努力が報われるように、年功序列と成果主義をミックスした人事制度の構築を目指しています。

ーー最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

髙光伸:
日本のものづくりや社会インフラに「スミエイが貢献している!」と社員が胸を張って言える会社を目指しています。そのためには私たちの大切な価値観、活力、技術力、信用力を大切にしていかなければならず、日々それらをブラッシュアップしています。とくに次世代の方には「建設業界を一緒に盛り上げていきましょう!」と伝えたいです。

編集後記

老舗としてこれまで積み上げてきたものを大切に守りつつ、よりみんなが誇りを持って働けるように改革に取り組んでいる髙社長の姿勢に感銘を受けた。世代交代のタイミングで住栄工業株式会社から株式会社スミエイに社名を変更し、ロゴも刷新した。今後どのような変化を遂げるのか注目したい。

髙光伸/1983年和歌山県生まれ。明治大学卒業。一橋大学大学院修了。大手重工業メーカーに入社し、6年間の修業期間を経て2015年株式会社スミエイに入社。2020年に代表取締役社長に就任。